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借金完済目指し、黄金島【3】

「くっ! このタイミングでアシュアだと……抜かったわっ!」


 婚姻届を奪い取ったアシュアを見た瞬間、バアルが猛烈に驚き……そして、ふためいてみせる。


 顔を見る限り、追い詰められた大魔王みたいな態度を取っているけど、やっている事はアシュアに自分のサインが入っている婚姻届を取られただけだからな?

 世界を賭けた壮絶な戦いとかしてないからな?


「ふふ……ふははははっ! 遂に、遂に私の元に、念願の婚姻届が!」


 他方のアシュアもアシュアで、あたかも超越したパワーを手にいれた魔王の様な高笑いなんぞしていた。


 お前が手に入れたのは超越したパワーではなく、単なる婚姻届からな?

 そんなの手に入れただけで、世界を闇のどん底に落とし入れようとする魔王みたいな態度を取らないで欲しいんだけど。


 ……もはや、この茶番劇は一体どんな方向へと突き進もうと言うのか?

 近くにいるだけの私には、皆目見当も付かない。


「なにぃっ!? ま、まさか……貴様っ!」


「ふふふ……そうです、バアル様! この婚姻届にバアル様の名前が書かれていると言う事は、ここに我が名を記せば……二人は晴れて永遠の愛を誓い合った仲へと昇華するのです!」


 いや、ある意味で間違ってはないけど……。


 なんで、お前らは無駄にシリアスで真剣で、世界を舞台に戦っている魔王染みた態度をナチュラルに取っているんだ?


「ぬっく! それはお前には必要のない物……すぐに自分へと戻すのだ!」


「ええ……もちろん返しますわ? ただし、私のサイン入りでねっ!」


「ぐはぁっ! やりおるわぁっっ!」


 叫んで間もなく、速筆も良いレベルで素早く婚姻届にサインをしたアシュアを見て、バアルはまるで口から血反吐でも吐き出しているかの様な叫び声を放ちながら悶絶していた。


「あはははっ! 良い気分……実に晴れ晴れとした気分だ! この婚姻届を持つ今の私であれば、どんな力も思いのまま……そう、世界は私の手にあるのだ!」


 その婚姻届は、どんな伝説のアイテムなのですか?

 

「ぐ……くぅ……仕方あるまい……ならば、実力で頂くっ!」


 刹那、バアルが豹変した。

 厳密に言うと外見はそこまで変わらない。

 少しだけ目が血走っている程度の異なりこそあるが、それ以外はそこまで変わらない。


 しかし、内面に存在した物……バアルの中に存在しているだろうエナジーの力は爆発的に上昇してた。


 今、ここに……人智を越えた悪魔王達の壮絶な戦いが始まる。


 ……って、馬鹿なのっ!?

 なに、ただの婚姻届で、そこまでマジになってんの?

 そんなの取り消せよっ! 


 せめて学園の中じゃなくて、外でやってくれよっっっ!?


「ふははははっ! 婚姻届を手にした今の私はまさに無敵! 如何にバアル様と言えど、今の私には敵うまいっ!」


 いや、だから……それは、どんな伝説のアイテムなのですか?

 私には、単なる紙切れにしか見えないんだが?


「ほう……大悪魔にして豊穣の神たる、このバアル・ゼブル様に楯突くと言うのか、面白い!」


 他方のバアルは、やる気満々だった。

 どうでも良いが、名前をバアル・ゼブルに戻しているのなら、別に大悪魔と言うフレーズは無くしても良いんじゃないかと思う。

 まぁ、私としてはどっちでも良いんだけどさ。


「さぁ……来い……その右手に握っている婚姻届共々……全てを灰にしてくれるわぁっ!」


 バアルは超絶殺気立った声を徐に叫んでいた。

 その叫び口調と言い……剣呑な態度と言い……もはや魔王としか他に表現出来ない。


 お前、もう……ベルゼブブで良いんじゃないのか?


 心の中で、私がツッコミにも近い台詞をうそぶいていた頃、


「愚かな……バアル様は、未だ理解しえないと言うのですね……そこに真実の愛と胸などないと言う事を……分かりました! この私が真の愛と胸を教えて差し上げましょう!」


 いつの間にか正義役の立ち位置に変わっていたアシュアが、あたかも聖母様にでもなったかの様な慈愛に満ちた表情を作りながらも返答してみせる。


 真実の愛がないのは分かる。

 私も借金の肩代わりに求婚されてる訳だしな?


 だけど、胸がないってのは何だ?

 それは私の胸を言っているのか?

 もしかして、お前もこの茶番劇もろとも爆破されたいの? 私にぃっ!?


 然り気無く胸を強調すると言う、ひたすら私のヘイトが貯まりそうな態度を取るアシュアと、未だ魔王様してたバアルは、学園長室の中央で対峙する。


 互いに両者譲らずと言った気迫を持って対峙するバアルとアシュア。


 ……そして。


「では! 参ります! 役所にっ!」


 叫んだアシュアは煙の様に消えた。


 きっと、宣言通りの事をしに行くんだろう。


 つまりが、


「ぐはぁぁっ! 逃げた! 逃げるか、ここでっ! おのれアシュア! 待つのだぁっ!」


 戦うと見せ掛けて、実は最初から空間転移魔法テレポートで逃げるつもりだったアシュアに、まんまと騙されてしまった。


 そりゃ……ねぇ。

 婚姻届では、伝説のアイテムみたいな力は手に入らないし。

 バアルに勝てるか怪しいし。

 隙見て逃げる程度の事はするよな。

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