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借金完済目指し、黄金島【2】

 もう、腰が抜けそうな気持ちで一杯になってしまう。


 六億……って、何だ?

 いや、だって六億あれば、会社が出来るぞ?

 小さいビル位なら、普通に買えるんじゃないのか……?


 もはや個人で払えるだけの金額とは到底思えない……それこそ、宝くじ級の金額を耳にした瞬間、私は目の前が真っ暗になった。


 は、ははは……マジで笑えない。


「ははは…………」


 心の中で泣き笑い状態にあった私は……実際に顔でも同じ感じの表情を作っていた。


 もういっそ、アリンと一緒に心中でもしてやろうか……?


 こんな事を考えていた矢先、バアルが優しい笑みを私に向けた。


 ……?


 何だろう?

 物凄く嫌な笑みだった。


 思わず警戒したくなる様な笑みを不気味に浮かべるバアルを見て、私は身構える様な態度を取ってしまう。


「大丈夫ですよ、リダ様? これでも私は色々と大成している身でしてね? 六億程度の金なら、私のポケットマネーでどうにか出来てしまえるのです……ふふ、この意味はお分かりですかねぇ?」


「……えぇと?」


 含み笑いで言って来るバアルに、私は少しだけ惚ける感じの声を返してみせた。

 しかし、内心では大きく怯えている。


 同時に思った。

 コイツは悪魔だった!……と。


「私がリダ様を永久就職先として斡旋したいのですよ? ええ……そうですね? ニュアンス的にはその様な形でよろしいかと?」


 ……うぁ……。


 私は思いきり苦々しい顔になってしまった。


 簡素に言うのなら、私を召し使いとして雇いたいらしい。

 その代償として、六億マールの借金を肩代わりしてやろう……と、こんな感じだな。


 言ってる事は分からないでもないが、


「そうすると、私は今日限りでこの学園ともおさらばしないと行けないのか……」


 私は苦笑混じりになってバアルへと答えた。

 

「……は? どうしてです? リダ様はリダ様でしょう? 別に今の地位は保証しますし、学生としてこの学園にとどまりたいのであれば、それはそれで結構な事ではありませんか? 私は理解のある旦那ですよ?」


 しかし、意外な事にもバアルは笑みのまま、現状維持を許諾する感じの台詞を口にして来た。


 ……でも、何かおかしい。

 そもそも、旦那って何だ?

 あれか? ご主人様って事か?


 うげ……コイツの召し使いになったら、ご主人様と呼ばないと行けないのか!

 

 ぐぅ……物凄く嫌なんだが……?

 屈辱的と言うのは言い過ぎだとしても、あんまりいい気分ではないな……だけど、六億を肩代わりしてくれる当てなんか、他にある筈もないし……うーむぅ……。


「さぁ……決めてしまいましょう? 六億と言う大金を私が払う代わりに、リダ様は今から自分のお嫁さんになるのです!」


「その『永久就職』かよっっ!?」


 結婚相手を金で買うんじゃないよっっ!


 しれっと最低な事を言うバアルに、私はこれでもかと言うばかりのツッコミを入れた。


 使用人ではなく妻として迎え入れたい……とか、アホだろ!


「馬鹿馬鹿しい……聞いてられるか、そんな物!」


「そうですか? ふふふ……じゃあ、仕方ありませんねぇ……この損害額の全額を今すぐ払って頂きましょうか? これから損害額が増える可能性もありますからねぇ? ビタ一文まけませんよ?」


「…………」


 き、汚いんですけどっ!?


 今の私に、六億なんて大金を今すぐどうこう出来る訳がない事など、最初から全部知ってて言うバアルに、私は思わず無言になってしまう。

 知っているからこそ、ここまで横柄な態度を取る事が出来るのだろう。

 流石は悪魔だけある。


 結局の所、私は頷く事しか出来ないのだろう。


 くそ……仮にこれで婚姻届を出す羽目になっても、即日中にはバツ1になってやるからな!

 それはそれでかなり不本意極まる気持ちになるが……逆に言うと、結婚をするだけして、すぐ離婚するだけで六億の借金がチャラになるのなら安い物かも知れない。


 ……よし、その話、乗ってやろうじゃないか。


「仕方ない……結婚してやる。婚姻届を役場から持って来て、サインすれば良いのか?」


 妥協混じりに言う私。


 直後、バアルの瞳が凛々に輝いた。

 

「そうですか! 遂に決心して下さったのですね! これぞ愛の勝利!」


 金に物を言わせて置いて愛を語るんじゃないよ!

 

「婚姻届については、ちゃんと用意したのがありますので! ささっ! 後はここにサインを書くだけで大丈夫です!」


 そして、事前に準備してるんじゃないよ!


 もはや、完全に私へとサインを書かせるつもりで、この学園長室に呼んでたのだろうバアルは、ニコニコ笑顔で婚姻届を私の前に差し出す。


 そこは、既にバアルの名前が書き込まれていた。

 後は、私の名前を書き足すだけになっていた。


 ……はぁ。


 やれやれ……こんな形で、結婚する羽目になるとは思わなかったぞ。


 なんともやるせない気持ちで一杯だった私が、右手にペンを握った……その時だった。


「リダ様! そこにサインを書いては行けません! それは悪魔との誓約書です! そして、そこには私の名前が載る予定なんですっ!」


 どこからともなくやって来たアシュアが、物凄いスピードで私が書こうとしていた婚姻届を奪い取ってみせた。


 ……てか、お前はどこから沸いて来たんだよ?

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