百貨店、爆発する【9】
「そうでしょう? そうでしょうっ! 未来の大魔導にして、希代の上位魔導師たるこのフラウ・フウリ様ともなれば、お茶菓子に10万マールのお金をかける事だって当然あるんだから! そりゃ、もう? これっぽっちも悩む事なくぽぽぽぉ~んと買っちゃうんだから!」
結構悩んでいたと思うのは、私だけだろうか?
「凄いお! 良く分からないけど、凄いお! フラウちゃんは歴史に載るお! か~たまも言ってたお!『ヤツは魔導の天下を取る! フラウ・フウリ・ペッタン子として名を歴史に残す!』って!」
「ぬぅわぁぁぁぁに教えてるの! リダはぁぁぁぁっっ!?」
最高潮にご機嫌な状態だったフラウに、アリンも調子に乗って更なるごますりの畳み掛けをして来た……来たんだけど、褒め方が少しまずかった。
結果的にフラウの機嫌メーターが急転直下に落ちて行き、代わりに怒りメーターが赤丸急上昇して行く。
そして、怒りの矛先は私に向いていた。
言ったのはアリンなんだが?
「いい? アリンちゃん? カステラは買って上げるけど、リダには一切れ……ううん、一欠片だって上げたらダメだよ? 上げたら二度と買って上げないからね? 高級なお菓子とかはもちろん、普通のお菓子も!」
「えぇぇぇっっ!? わ、わかったお! アリンがすぐに食べるんだお!」
「あ、まって! わ、私も少しだけ食べたいから、ちゃんと残して置いて? リダにだけ食べさせない様にだけしてね? って、話!」
フラウは底意地の悪い台詞を真剣な眼差しでアリンへと言っていた。
なにそれ、酷くない?
わ、私だって……そんな高級なカステラ、食べた事ないし……少しぐらい食べたいんだけどっ!?
「よぉ~し、それじゃあ買うよ? 買っちゃうよ~!」
「わーい! フラウちゃん大好きー! か~たま、けちけち魔神!」
意気揚々とカステラ屋の前で叫ぶフラウに、アリンもフラウに合わせる形で叫んでいた。
そして、またも私の悪口をしれっと言ってみせる。
然り気無くグレードがあがっている様な気がするんですがっ!?
てか、か~たま泣きたいんですがっっ!
そんな時、ルミが笑みを作りながらも肩をポンと叩いて来る。
「……あはは、大変だね?」
私に声を掛けて来たルミは、いつになく優しい笑みを見せていた。
いや、違う……これは優しくもあり哀れみも含まれる笑みだった。
待って? いや、本当に待とう? なんで私はここまで哀れみを受けないと行けないの?
確かにカステラ一つで愛娘に裏切られている感は否めないけど!
そして、か~たまの価値はカステラに負けちゃうのか?……とか、少し思ったりもして、結構へこんではいるけどっっ!?
「リダさん、ここはフラウさんに対抗です! ちょうど、そこにホッカイ産の高級ズワイガニが売られてます。あれはアリンちゃんにとって最強クラスの食材に違いありません!」
そして、近くにいたルゥが滅茶苦茶な対抗策を持ち掛けて来た!
カニは高いだろっ!? ここらじゃ全然獲れないヤツだぞ、それ!
しかもホッカイ産の高級ズワイガニとか、なんでそんなのまでこの店はあるんだよっ!
つか、もう、この店に来れば世界中の食材が揃うんじゃないのかっ!? 金さえあれば、大抵の物が買えてしまうんじゃないのかっ!?
そう考えると、一体どんな物流システムを構築したと言うのだろうか? むしろ、少し興味を持ってしまったぞ!
どちらにせよ、その対抗策は却下だ!
そんな物を買った日には、明日から私の所持金は息をしていない可能性すらある!
「ちなみに、価格は一杯4万マールからだそうです。カステラよりは安いですね? 二~三杯は購入して、みんなでカニパーティーでもしましょうか?」
しないから! そんな事をする余裕、ウチの家計にはどこにもないからっっ!
「無理言うな……わ、私の所持金を知ってるか? 一万マール紙幣が一枚だけ義理で入っている程度の寂しい中身なんだぞ? そんなのが買えるだけの余裕なんか無いんだ!」
本当は、十枚は入っていたけど、そこはナイショだ。
この世界にはキャッシュレスなんぞと言う便利な代物はないからな?
辛うじて銀行の預金通帳はあるけど、それだってATMみたいなのがある訳ではない。
よって、今回の様な特別な買い物をしそうな時は、現金を多目に持っていないと行けない訳だ。
そして、この十万マールは私にとって全財産の過半数を意味している。
こないだのオーク討伐にて得た報酬の大多数を、そのまま財布の中に入れている感じだった。
アリンと一緒に行ったクエストなので、アリンにも多少の取り分は発生するかも知れないが……しかし、だからってカニはないだろ? もっと別なのでも良いだろ? つか、二杯買ったらアリンの方が取り分多くなるからな! せめて等分にするのが筋だろ!




