百貨店、爆発する【6】
色々と裏切られた感がある私が、思いきり窮地に追いやられている中、
「地下にあるお店はなんだお~?」
アリンが軽く興味を持った状態でパンフを見ようとする。
……って、それアウトですからっ!
「た、大した物はないぞ! なんてか、アリンの興味とか全然惹かない感じの店だ! きっと、見るだけ無駄だから、か~たまが代わりに見てあげようか!」
パンフレットのエリア案内に目を向けようとしたアリンがいた直後、私は咄嗟にパンフレットを頭上に上げて叫ぶ。
偶然だが、私がエリア案内のパンフを持っていて良かった。
この三歳児は字こそ下手くそだが、しっかりと文字を読んで来るからな!
多少、難しい単語ならしっかりと知っているし……自分の興味がある物なら、あたかも水を吸い取るスポンジの様に学習するから侮れない!
「そんなの、アリンが見てから決める事だお~? か~たまが決める事じゃないお~?」
「いや、何を言ってるんだアリン? か~たまは常にアリンの事を見ているんだぞ? 当然、アリンの好みなんて良く分かっているのさ!」
だからこそ、隠さなければならないのだよっ!
口を尖らせて言うアリンに、私は額から嫌な汗を流しながらも笑って返答する。
尤も、その笑いは大いに引き釣っていたのだが。
その直後。
「地下は食料品売り場の様だね? そこの案内板にも書いてあったよ」
ルミがスペシャル致命的な台詞をみんなに言ってしまう。
なんでそれを素直に言ってしまうんだよルミさんよぉぉぉっ!
てか、どうしてこのタイミングで都合良く案内板なんて見付かるんだ? 案内板なんて、誰も見ない様な端っこ辺りにちょこんと設置しとけよっ! お客が見ちゃうだろっ!?
果たして、端っこの誰もみない所に案内板なんぞ置いても無意味では? と言う疑念が思考を掠めていたが、今はそんな些末な事で頭を使っている余裕などなかった。
「食料品だお? 美味しいのあるお?」
アリンの瞳がキラキラ輝いた。
「そ、そうだなぁ……きっと、そこまでは無いんじゃないかなぁ~?」
程なくして、私が思いきり惚けた口調でアリンへと言うと、
「か~たまがそう言う顔をしている時は、絶対に嘘を言ってる時なんだお! さては、アリンに内緒でか~たまだけ美味しいのを食べようとしてんだおっ! 許せないおぉぉぉぉぉっっ!?」
アリンは即座に私の嘘を看破して来た!
なん……だ…と?
どうやら、アリンもしっかりと成長している模様だ。
か~たまの嘘をしっかりと見抜けるだけの鑑定眼を身に付けてしまった模様だ。
……って、感心している場合かっ!
まずい! これは極めてまずい!
この状況は、どう考えてもデパ地下からスタートするノリだっ!
それだけは……
「じゃあ、決まりだね? 地下から見ていきましょ?」
勘弁して……
「賛成! 実は私も地下に大きなショッピングエリアがあるなんて初めてだし! やっぱり、最初はそこから回りたいよね!」
貰いたいんですけど?……あの、ちょっと?
「だおね? だおね! フラウちゃんもルミちゃんも、美味しいの食べたいおね~っ!」
そんな事を思っているのはお前だけだからね? アリンちゃんっ!
どうにか止める手段を考えていた時、フラウが勝手に決定してみせ、ルミが相づちを打つと、アリンがお日さま笑顔で力強く頷いて来た。
一人、同調する事なく傍観していたルゥが居たけど……雰囲気からしてルミの意思に従います的なオーラを無言で放っていた。
…………。
地下に行きたくないの、私だけ説。
なんでお前ら、揃いも揃ってそこまでデパ地下なんかに行きたいんだよっ!?
内心半ベソになる私がいる中……最終的には多数決で可決され、私達はデパ地下から見て回る事になって行くのだった。
どうしてこうなったぁぁぁっっ!
●◎○◎●
そんなこんなで、地下一階。
デパートにみんなで入って、最初に向かう先がデパ地下とか言う……あなたは何処のOLですか? それとも主婦の集まりですか? とかって、皮肉混じりに嘯きたい私がいた。
私らは、これでも華の女子高生なんだぞ?
厳密に言うと少し違うかも知れないけど、年齢的にもハイティーンの学生が、揃いも揃って、いきなりデパ地下になんか行かないだろ、普通!
せめて、化粧品コーナーに行けよっ!
高くて買えないかもだけど、大体は『いつかはこう言うのを使ってやるんだ!』的な野望を燃やして、一喜一憂しとけよ!
まぁ……ルミ姫様やルゥ姫様は、この店のよりも高級なのを持ってそうな気がするけど。
…………。
う、羨ましくなんかないぞっ! ないからなっ!
なんにせよ、かなり不本意ながらも私はみんなと一緒に地下へと降りて行き、
「ひ、広い! し、しかも、びっくりする位、色々な物が売ってる!」
フラウが度肝を抜く感じで仰天していた。
初めての体験だったから、こんな顔しているのかも知れないが……だから、お前は何処の主婦だよ? と。




