会長、勇者の導きにより合コンに参加する【9】
謎と言えば、トモヨさんとユニクスの関係位か?
何故に、近衛兵長してる人とユニクスが知り合いだったのかは、ちょっと分からなかった。
けれど、これで大体の流れは理解出来たかな。
つまり、私達はこのトモヨさんに上手く利用されたと言う訳だ。
「......はぁ」
私は無意識に重い溜め息を吐いた。
やれやれ。
なんか、どっと疲れたよ。
てか、最初から事情を説明さえしてくれれば、私だってここまで疲れなくても済んだと言うに。
その後、トモヨさんは近くに駐在していた衛兵を十人程度呼び、今回起きた諸々の騒動を終わらせて行くのだった。
●○◎○●
正直、二度とゴメンだと言いたくなる様な合コン(?)が終わり、私達は帰路に着いた。
「結構、楽しかったね。合コン!」
ルミ姫様は、中々に上機嫌だった。
きっと、二人のイケメンに囲まれた、楽しい一時を送った......程度の感覚なんだろう。
なんて図太い神経の持ち主なんだろうか。
「私は、もう暫くは良いかな」
他方のフラウはげんなりした顔になっていた。
まぁ......な。
あれは軽い罰ゲームだった。
今夜のフラウは、あのオタクが夢に出て来てうなされそうな気がする。
「助かりました、リダ様! やっぱり、リダ様がいると一味違いますねぇ」
ユニクスは淑やかな微笑みを悠然と作りながら私に言う。
私の眉間に皺が寄る。
思えば......だ?
「最初にお前がちゃんと私達に説明してれば、ここまで疲れなくても済んだんだぞ?」
ここがポイントだ。
私は、何回イケメンに騙されないと行けないのか?
毎回、こーゆーオチばっかだと、もう美男子が私に色目を使って来た時点でこのオチを予測しないと行けないじゃないか。
どんだけ悲しい女なんだよ、あたしゃ......。
「ふふ......すいません、リダ様。可能な限り自然な状態で対応したいとトモヨさんから言われていた物ですから」
ユニクスは悪びれた風もなく私に答えていた。
「そう言えば、ユニクスがトウキの近衛兵長と知り合いだったのは意外だったな」
「ああ、確かにそうなるかも知れませんね。実は去年の剣聖杯で私が優勝してるのですが、その時に近衛兵にならないかとスカウトされたのが切っ掛けだったんですよ」
ああ、そんな事があったのな。
余談だが、剣聖杯は冒アカの年中行事であると同時に、出場選手の進路を有利にさせたいと言う狙いもある。
この大陸は勿論、全世界のコロシアムを使って間接的に中継されてる大きなイベントでもあり、この大会を通じて様々な職業のスカウトマンが冒アカの選手をスカウトしにやって来る。
ちなみに、今大会三位のフラウは結構な数のスカウトを受けたらしい。
私は受けなかったがな。
てか、冒険者協会が色々とスカウトマンをシャットアウトしたのかも知れない。
どの道来られても困るから、それはそれで良いのだが。
今大会ベスト4のルミ姫様の所にもスカウトは来なかったらしい。
......そりゃ、ニイガ国の王女な訳だから、スカウトマンだって跨いで通るだろうよ。
まぁ、そこはさておき。
ここらの関係で、ユニクスはトモヨさんからトウキの近衛兵にならないかと誘われていた訳だな。
「正直、近衛兵になる気は余りないと言いますか......今は冒険者協会に入って、リダ様の忠実な僕として、馬車馬の様に働きたい気持ちしか持ち合わせておりません」
割りと本気で言ってそうなユニクスがいた。
どうでも良いが、別に忠実な僕とかにならなくても良いんだぞ?
「もしかしたら、私が掛けた呪いが原因で、そう言ってるのかも知れないが、そこまで気にしなくても大丈夫だぞ?」
「とんでもないです!」
ユニクスはくわっ! と気合いを入れて否定して来た。
......。
そこは普通に肯定してほしかったな。
否定するにしても、そこまで本気度の高い否定の仕方とかはやめて欲しかった。
いや、だって。
「私は私の意思で、リダ様の忠実な下僕になりたいと、心から思っているのですよ?」
ちょっとだけ頬を赤らめて......って、待てぇぇぇいっ!
この瞬間、私はあるフラグを自分の胸中で立てていた事を思い出した。
......そう。
もしかしたらあるかも知れない、二段オチだ!
あの時は考えない様にした。
つか、変に意識する事で、妙なフラグを自分で立ててしまう危険性を全力で回避したかった!
「そ、そうか~......はは、取り敢えず、分かった。うん、そうだね。精神科の予約は入れて置くから、お大事にね」
私は勤めて爽やかに、満面の笑みを作りながらユニクスから離れた。




