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こうして私は無双する・リダVer  作者: まるたん
第五編・編末オマケ短編
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リダ会長、冒険者見習いになる【26】

 だからと言うのも変な話ではあるが、ここでは単なる見習い冒険者として私を見て貰いたいと言う気持ちもある。

 それで罪滅ぼしが出来るとは思っていないが、せめてもの償いとしてベテラン冒険者と研修生と言う現在の関係を、このまま最後まで完走させたかった。


 後は、バレたのがシャムジ先生だけである部分も大きいかな?

 結局の所、私が学園でも特殊な存在である事は、校内の色々な生徒も知ってこそいる物の……私の正体を完全に知っている者は、密かにかなり少ない。


 私が知る限りだとフラウ位ではないだろうか?

 あ、後はルミとルゥの二人は知っているかな?

 特に私が直接告知した事はなかったけど、ルゥは未来の人間だけあって、自己紹介をするまでもなく私が冒険者協会の会長である事を知っていたしな?


 それ以外だと、学園内ならユニクスぐらいだろうか? ともかく私が会長である事を知る人間は極端に少ないのだ。


 よって、この研修で組合に私が会長である事がバレてしまうと……学園に実は会長が学生として在学していた事が、公然の事実になってしまう訳だ。


 現状を考えると、私はやっぱりただの一生徒として学園ライフを送りたいと思っているし、バレたらバレたで仕方ないとは思うが、なるべくなら現状維持が望ましいと考えていた。


 これら諸々と考えるのであれば、


「実は私にも私なりの事情があってさ? ここでは単なる生徒でないと行けない事情があるんだ。だから、演技でも構わない。せめて組合の建物に入ったら学園からやってきた単なる研修生としての態度を取ってほしいんだよ」


 答えてから、私はシャムジ先生へと懇願する形で両手を合わせてみせた。


「そ、そんな……卑屈な態度を取らないで下さい……その、事情がおありなら、自分も会長の指示に合わせて行動しますので」


「そ、そうか。ありがとう! 恩に切る!」


 快い返事を貰った私は、にっこりと笑みを作ってから頭を下げてみせた。


「恩に切うっ!」


 直後、アリンが私の真似をする形で、キリッ! っとした顔で頭を下げていた。

 どうやら、自分が気に入った物と言うかシチュエーションは自分でも真似をしたくなるらしい。

 ここらは三歳児クオリティと言う所だろうか? 私としては可愛いから許す!


「はは……本当に、冒険者協会の会長様ってのは懐の深い方なんですね? 自分の様な末端のしがない冒険者にまで丁寧な態度を取るなんて」


 恐縮する形で苦笑するシャムジ先生。

 それは固定観念ってヤツだぞ?

 むしろ、人の上に立つ存在ほど、誠実でなければ成り立たない。

 

 稲穂と同じだ。

 人の上に立ち、社会的に実った存在ほど、実った稲穂と同じ様にこうべを垂れる。

 実った稲穂の中味が大きければ大きいほど、稲穂も大きく頭を垂れる様に、上に立つ人間も社会的に実っていればいるだけ、頭を下げる数が多くなると言う物だ。


 中には、人の上にのざばる輩もいるかも知れないが……そう言うヤツは、いつか何処かでのさばった事へのツケを支払う事になるだろう。

 そう言った人間を、私は何人も見て来ているからな?


 そして、良い反面教師だったとも思う。

 だからこそ、今の地位にふんぞり返る様な真似だけは絶対にやらないと、常々自分に言い聞かせる事が出来るのだから。


 少し話が脱線してしまったな。


 とにもかくにも、私は研修生のリダさんとして組合へと戻り、クエストクリアの報告をして行く。


「研修生のリダ・ドーンテンです。今、オーク討伐のクエストを完了して戻って来ました」


 受付のお姉さんへと穏和に語る私。


「え? あ、はいはい。お疲れ様。研修生にしては頑張りましたねー? まぁ、だけどこんなのはまだまだ新人レベルのクエストだから? 進路希望で冒険者を目指している様であれば、この程度のクエストをこなした位で天狗になっている様ではダメよ? 精々、頑張りなさい?」

 

 私の報告を耳にし、お姉さんは適当に相づちを打ってから、やや高飛車な台詞を口にしていた。


 ……まぁ、相手は研修生だし。

 場合によっては来年には新人冒険者としてここにいる可能性だってある。

 そうなれば、役割こそ違う物の、私は彼女の後輩となるのだから、結果的に態度も横柄な物になってしまうのも自然な流れだった。


 しかし、これを見たシャムジ先生が大激怒。


「ちょっ……ミサガっ! お前! どの口がそんな事を言ってんだっ!? この方は天下のリダかい……むぐっ!」


 そこまで言った所で、私がシャムジ先生の口を手で塞ぐ。

 だから、秘密にしてくれと言ってるじゃないか……ったく、変なトコが几帳面な人だな。


 口を塞いだ私は顔で『そこから先は言わないで』と言う感じの表情を作ってみせる。

 直後、シャムジ先生も静かになった。

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