リダ会長、冒険者見習いになる【25】
もはや、本当に核心的な驚きアイテムが、真剣に開発されていますよと言われても、絶対になんらかのオチがあるだろう? とかって疑いの目から入ってしまうだろう私がいた頃、リッチーのユウミ部長が比較的真剣な顔付きになって私へと答えて来た。
「そう言えば、リダ会長はオーク討伐が目的で、この研究所へと御足労頂いたんですよね?」
まぁ、研究所と言うより洞穴に来ていたんだけどな?
「そのオークに付いてなのですが、どうやら私達の戦闘部隊が先に排除していた模様です。話によりますと、近くにある洞穴へと逃げ込む感じで潜伏しているとか? 私達としては権利書もなしにここを占拠していた豚共など、その場でチャーシューにして食べても良かったレベルではあったのですが、素直に退去したのでそれ以上の事は考えなかったんですよね?……ってか、細やかな事過ぎて普通に忘れてましたし? ああ、そうだ? 今一つ事情は分かりませんが、面倒な害獣であるのなら、こちらで食べ……もとい、処分しましょうか?」
ユウミ部長は、コロコロと笑いながらも私へと言って来た。
まるで近所のお店へと買い物でも頼まれたかの様な勢いだ。
まぁ、リッチーからすれば、オークなんぞだたの豚なんだろう。
正直、オークを豚と呼ぶのはどうかと思うが……まぁ、一応あれは豚の妖精と呼ばれている神話とか資料とかもあるし、面倒だから豚って事にして置こうか。
「いや、これでも私の目的はオーク討伐だったからさ? 場所さえ教えてくれればそれで構わないよ」
ついでに、この研究所も爆破して帰りたい所ではあるが……まぁ、ユウミ部長もミィコ課長も、多少難アリな性質こそ持っている見たいだけど、そこまで悪いヤツではなさそうだから、今回は多目にみてやる。
但し、私の迷惑になる様なトンデモ商品とか作った時は、問答無用でここを襲撃しに来るからな? そこだけは肝に命じて置けよ?
結局の所、株式会社・ベルゼブブで商品化するかも知れないだろう、傍迷惑な商品の数々を紹介されただけで終わってしまった私達は、この近くにあるだろうオークの巣へと向かい、巣ごと超炎熱爆破魔法で爆破してクエストを達成させて行くだった。
○◎●◎○
数時間後、シャムジ先生を含めた私達三人は無事にクエストを達成し、冒険者組合の方へと戻って来ていた。
「か~たま! 超炎熱爆破魔法はメッ! だおうっ! アリンが食べりゅ筈だったお肉が全部吹き飛んでしまったんだおーっっ!?」
アリンは真剣な顔をして、私に向かってプンスカ怒ってみせた。
どうやら、本気でオークの事は単なる食材としか見ていなかったらしい。
毎度思うが……この子の無駄な食欲はどうにかならない物か……。
少し悩んでしまう私がいる中、近くにいたシャムジ先生がいつになく仰々しい態度でお辞儀をして来た。
「クエスト達成おめでとうございます!……と言いますか、リダ会長の実力を間近で見せて頂ける経験をさせて頂き、誠に恐悦至極にございます」
深々とお辞儀をして来たシャムジ先生は、以後も畏敬の念を顔に見せる形で口を開いて来る。
……いや、私としてはそう言う事されても困るんだが……?
「シャムジ先生。今回のあなたは私とアリンの先生として同行したベテラン冒険者だ。単なる見習い冒険者を相手に、そこまでペコペコとへりくだった態度を取っていたのなら、組合の関係者達も違和感を抱いてしまうだろう? それに、私としても本意じゃない。ここは今まで通りの態度をしてくれないか?」
「いや……しかし、名実ともに冒険者のトップと言えるリダ・ドーンテン会長に対し、冗談でもこれまでの自分が見せた様な態度を取るなど、とてもとても……」
シャムジ先生は、かなり困った顔になって言う。
気持ちは分からなくもないがな……?
冒険者の世界は、比較的縦社会だったりもする。
完全無欠の縦社会ではない物の……ランクと言う明確な格付けが存在している為、縦社会を構築しやすい環境にあったからだ。
私からすれば、ランクなんぞただのお飾りに過ぎない代物だと思えて仕方ない部分があるのだが、世間一般ではやはりランクが相手の実力を知る為の目安として活用されている事も事実だった。
そこらの関係もある為、ランク的にも最上位であるレジェンドランクだった私は、Bマイナスのシャムジ先生からすれば、まさに神にも匹敵する最強の冒険者でもあった。
そんな人間が研修生として冒険者見習いをしに来ているのだから……ある意味で、シャムジ先生もたまった物ではなかったろう。
ここは本当に悪い事をしたなぁ……と、少しは思っているんだよ、私もさ?




