リダ会長、冒険者見習いになる【24】
「どんな物があるんだ?」
「そうですね? まずは……」
言うなり、ミィコ会長は袋の様な物を、何やらゴソゴソやって見せる。
程なくして、袋の中から1錠の薬を取り出してみせた。
そこから、得意気に語る。
「速効性の毛生え薬です! この薬を飲めば、例え毛根が死滅している様な人であったとしても、たちまち毛根が復活します!」
……ほうほう。
聞く限りでは、かなりまともな商品に聞こえるな?
「なるほど、世の中にいる頭が寂しい男達には朗報とも言える薬だな?」
「そうでしょうそうでしょう! ただし、副作用として性別が女になってしまう時があるので注意が必要です!」
「ダメじゃないかっ! 全然関係のない副作用が発生するんじゃないかよっ!?」
ダメだ……やっぱりコイツらの作る薬は危険過ぎるっ!
てか、毛根が復活する薬と言うのも凄い話ではあるのだが、飲むと性別が変わる薬と言うのも、それはそれで凄まじい気がするのだが?
どの道、危険な薬である事には変わりないけどな!
「次は、この枕です。低反発の枕で、誰の頭にもフィットする万能の枕です。肩凝りの方にも優しい快眠枕ですね?」
ほうほう。
これまた、ここだけを聞くと普通の枕と言うか……購買意欲を高めてくれそうな枕に聞こえるな?
「ただ、枕の中にある睡眠魔法の成分が強すぎて、そのまま永眠してしまう人がいるかも知れないので、注意が必要になります」
「いや、だから、それダメだろっ!? 快眠どころか永眠させてどうするんだよっっっ!?」
もはやだたの自殺グッズと化した、死の枕になってるし!
「商品名は、地獄の枕! どうです? これで安眠バッチリです!」
「いやいや! 買った枕で地獄に逝ってどうするんだよっ! せめて天国に連れてけよ!」
……って、こんなツッコミを入れる私も結構大概な気がする。
どちらにせよ……こんな物を売ろうとしている時点でどうかしているなぁ……バアルのヤツにはしっかりと変な商品を作るなと釘をさしてやらねば。
「おやおや? どうやら、まだわが社の開発商品が革命級である事に気付いておられない様子ですね? しかたない! まだまだ開発途中ではありましたが、ご紹介致しましょう! 大ヒットしたあの『魔王にナールDX』を更にグレードアップした……」
「今すぐ開発やめろぉぉぉっっっ!」
揚々と声高に叫んで見せるミィコ課長へと、私は即行で叫んで見せた。
あの薬のせいで、私がどんだけ苦労したと思ってんの? バカなの? 爆破されたいのっ!?
もう、完全に脱力感の塊みたいな心情になってしまう私がいた。
いっそ、この商品研究所ごと爆破して帰ってやろうか?
こんな事を考えていた時、
ガチャッ!
「すいません、おくれましたぁぁぁっ! 株式会社・ベルゼブブ、開発部長のユウミです! よろしくお願いしますぅぅぅっ!」
室内のドアが豪快に開き、やたらグラマーなおねーさんが転がり込む勢いで入って来た。
うーむ……。
この人、リッチーだよな?
そうなると、アンデッドの類いである筈だけど……普通に人間してる気がするなぁ……?
普通、アンデッドなら顔色とかも死人の様に真っ青で……と言うか、普通に死んでるから肌とかもボロボロで、色々とゾンビチックな状態になっているのが普通だったりするんだが。
けれど、室内へと転がり込んで来たグラマラスなお姉さんこと、ユウミ部長は肌艶はおろか、血色の良い健康美のお手本みたいな女性だった。
この人、本当にリッチーなんだろうか?
「その、失礼なんだが……ユウミ部長はリッチーなんですよね? どうして、そんな肌がツヤツヤしてるんです? 何か秘訣とかあるんですか?」
「おお! 流石ですね! 気付きましたか!」
いや、誰だって気付くと思うんだが……?
「実は、当社で扱う予定の美容品を使用しておりましてね? 肌の艶はもちろん、張りも抜群の安定性を誇る奇跡的な新薬を開発しているんですよ!」
ほうほう。
それは、実に興味が……。
「題して! 死者から始まる肌美容! 生きている間に使うと、色々とアレな感じになってしまうけど、死んでるから全てOK! 副作用で少しだけ頭がパーになってしまう時がありますが、本当に稀なので安心して使えます!」
……全くわかないからなっ!?
バカなのっ! ねぇ? アホなの? ゾンビにしか使えない美容品とか、需要あってたまるかよっっ!
もうだめだ……ここ、爆破して良いんじゃないか?
核心的な肌美容と勘違いして使ってしまった人が、実はゾンビ用の美容品で、生きている人が使うと色々とふざけた状態になってしまう美容品が販売されて、新聞の三面記事を大いに賑わす未来しか見えない。
本当……どうして、バアルのアホはこんなのを研究者として雇ってるんだ? マジで勘弁してほしいんだけどっ!




