リダ会長、冒険者見習いになる【22】
以後は、話が簡単に纏まって行った。
グールのお姉さんにとっても青天の霹靂と表現出来るだろう、まさかの会長登場により、事態はかなり慌ただしい状況へと変わって行く。
「い、今すぐ、我々の研究機関にご案内致します! そ、その、粗茶ではありますが、しっかりとお飲物も御用意致しますので!」
「いや、そこまで気を遣わなくても構わないよ。私は飽くまでも研修生として、この洞穴に住むオークを退治する目的で、ここまで来ていただけだからな」
厳密に言うと、オークが集団で潜んでいるだろう、オークの巣を討伐する為の調査をする事が目的だったりもするんだが……細かい事を言うのは面倒だし、普通にオークを討伐しに来た事にして置いた。
シャムジ先生が何を言うかは知らないが、私は最初から調査なんてチマチマした事はせず、今日中にもオークの巣を壊滅して組合に引き返すつもりだったからな?
まさか、オークの巣がいつの間にか子会社の研究所になっているとは夢にも思わなかったけどなっ!
……まぁ、そこは思わぬハプニングと言う程度にして置こうか。
こうして、私はオークを狩りに行く筈が……謎のアンデッド達に襲われた挙げ句、実は傘下の会社が作った研究所だったと言う予想だにしないオチを知る羽目になって行くのだった。
◎○●○◎
グールのお姉さんの名前はミィコと言うらしい。
株式会社・ベルゼブブの商品研究部の研究課・課長をしているらしい。
彼女の言葉にもあった、直属の上司に当たるリッチーのユウミ部長は、この研究所の所長も兼任しているんだとか?
それにしても……リッチーが部長として社会の富裕層に君臨しているのか。
まぁ、リッチーはアンデッドの王とまで言われる有名かつ凶悪なアンデッドだ。
最上位のアンデッドと述べても過言ではない、言わば最強クラスのアンデッドだな?
その上司に当たるエウリノートなのだが……こっちは、地獄で一国の王をしている、言わば悪魔王と表現出来る大悪魔だ。
地獄の世界にも、この世界と同じ様に多数の国や地域が存在している。
広さ的に言うのであれば、地獄の方がこの世界よりも広いんじゃないだろうか?
どちらにせよ地獄にも広い土地は存在し、多くの悪魔を従えるその国の王だって存在している訳だな?
アシュアも言うなれば、自国の領土を保持しており、当然ながら悪魔王としての地位を持っていたりする。
私の感覚からするのなら、バアルの自室へと無断で侵入しては、私っぽいけど胸だけ私とは掛け離れた人形……リダ・レンジャー達と不毛な争いを日々繰り広げる残念な悪魔でしかないが……実際には、地獄にある複数の国を領地に持つ、地獄の皇帝みたいな存在であったりもする。
そして、エウリノートとアスタロス……いや、紛らわしいからアシュアと呼ぶか。
ともかく、この二大悪魔を従えているのが、天下の大悪魔・ベルゼブブこと、バアルだ。
現在のバアルは、私っぽい人形を無駄に溺愛する残念極まる悪魔へと成り下がってしまった傾向にあるのだが、実際には魔王サタンよりも高い実力があるとさえ言われる地獄のナンバーツー。
国とか地域とかそう言う概念をも超越した、世界で二番目に権威を持つ地獄の大将軍。
敢えて大将軍と表現したのは他でもない。
エウリノートとアスタロトを筆頭に、数万とも数十万とも言われるハエ軍団の長であったバアルは、まさに大将軍と表現するのが的確なのではないか? そう私は思ったのだ。
ルシファーの元について、神へと戦いを挑む様な真似さえしなければ、今でもバアルは現在の名前でもある、バアル・ゼブルとして豊穣の神をしていられたのかも知れない。
ここに付いては……まぁ、なんとも言えない部分もあるんだがな?
しかし、ルシファーとは違い、人を愛し……慈しむと言う感情を、かつてのバアルは持っていた事だけは確かだ。
いや……ルシファーだって、元を正せば最強の大天使ではあった訳だし……なんらかの形で和解する事が出来たのなら、今ごろは違ったルシファーを見る事が出来たのかも知れないな?
ここに関しては、単なる私の予測に過ぎない話ではあるんだけどさ?
そろそろ話を戻そうか。
グールのミィコ課長や、上司でリッチーのユウミ部長の頂点に当たる魔王・エウリノートと言うのは、別名死の君主と呼ばれる、冥界の有力な支配者だ。
この辺は少し宗教が違うと言うか、別の神話になってしまう為、優劣を付ける事がどうしても出来ない部分があるのだが、ハデスとかと同じ様なレベルの悪魔王でもある。
良くRPGとかに出て来る魔王は、魔界の王とかだったりするし……人間界を支配しようとする魔王の大体が、魔界からやって来ていたりもするし、実はこの世界で魔王を名乗っているのも、この世界の端っこ辺りに魔界を構築させて、そこで王をしているから魔王を名乗っていたりもするんだけど……地獄の世界で一般的に『魔王』と呼ばれているのは、地獄にある国で国王をしている存在を指していたりもする。
まぁ、だから魔王ゴブリン……なんてのも居たりするんだけどさ?
話が少し脱線してしまったな? 取り敢えず、魔王ゴブリンは置いておこう。




