リダ会長、冒険者見習いになる【13】
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途中、少しばかりケアレスミス的な形で、受付のお姉さんに怪しまれると言う珍事が発生したが、それ以外は特に問題が発生する事なく、受理されたクエストも始まって行く。
……さて。
今回のクエストは『オーク一頭の討伐』だ。
ポイントとしては、発見したオークを一頭でも倒せばクエストは達成。
オークを倒すと、冒険者が所持しているカードが達成した事を確認し……クエストクリアした事を持ち主の冒険者へと教えて来る。
以後、カードを組合に渡せば達成の有無が判明する為、帰還する事が出来る訳だ。
未達成の場合は、再び同じエリアに戻ってクエストの続きを行うか、受注をキャンセルして戻るかのどちらかになる。
キャンセルの場合は失敗と見なされ、報酬は基本的に減額される。
減額される報酬額は、その時によって違うので……まぁ、ピンキリと述べて置こうか。
例えば、クエストの内容が『オーク十頭の討伐』だった場合、九頭までは倒したけど一頭だけ倒す事が出来なかったとしよう?
この場合、報酬の九割が支給される。
その他、難易度の高いクエストの場合だと、その途中で強いモンスターと遭遇し、倒していたりもする為、一定条件が揃った場合は討伐が認められ、その分の報酬が支払われる場合もある。
苦しいクエストの場合、途中離脱する事も選択肢として考えて欲しい為、失敗イコール報酬ゼロと言う世知辛い内容にはしなかった訳だな?
お陰で、他のでケチらにゃならなくなって……色々と面倒だったりもするんだよなぁ……ほら、さっきのカタログとかあるじゃん? ああ言う感じで、他ので経費を抑えて冒険者達に報酬を回してる訳だよ……なのに、『カタログだと見にくい!』とか言われるんだよ! だったら、オメーらの給料減らしてやろうかっ!?
……はぁはぁ。
…………。
うむ、少し大人げない事を口走ってしまったな。
ともかく、会長としてはなるべく頑張っている冒険者達の報酬を多くしてやろうと言う努力をしているんだぞ?……って事だけは言って置こうか。
そろそろ、話を戻すぞ?
「お~。なんか空気の美味しい所に来たんだお~? トウキから馬車で一時間ぐらいしか経ってない所なのに、もう木しかないんだお。案外、トウキの街って小さいお~」
あれだけの大都会は、世界でも珍しいんだぞ、アリンちゃんよっ!
しれっと地元をディスるアリンは、馬車から降りて間もなくキョロキョロと見回していた。
程なくして、
「よし、目的地に到着したな? それでは、今回のクエストを本格的に始めるぞ? よろしくな!」
軽やかな声を飛ばす青年が、笑みを作りながらも私とアリンの二人へと答えていた。
今回のパーティーは、私とアリン……そして、一緒にここまでやって来た青年の三人だ。
見た感じ、結構な好青年って感じだな?
顔も悪くない……と言うか、割りと美形だった。
まぁ、私好みかと言うのならちょっと違うのだが。
やっぱり、こうぅ……少年と大人の境目辺りを絶妙に兼ね備えていると言うか、さ?
あどけないけど格好良くて、身体もスラッとしてて……童顔なのに、私より背が高いとかさ?
一見すると頼りなさそうな感じで、普段はやっぱり私が構わないと行けない一面とかあるけど、実はここ一番の時は頼れる感じだったりしたら最高だなっ!
……ふ、ふふふ……いいねぇ……そう言う男、どっかに転がってはいまいか……?
…………。
は、話が反れたな?
そろそろ本文に戻そう。
今回、私達二人と一緒に同行する事となった冒険者は、研修生でもある私達へと冒険者の心得を教える為にやって来た現役の冒険者だ。
目的地まで移動する関係上、一緒の馬車に乗っていたのだが、その時にあれこれと自己紹介もしている。
聞く所によると、冒険者家業を初めて五年目の中堅層らしい。
ランクはBマイナス。
うむ、普通に中堅冒険者って感じだな。
なんと言うか……特段強い訳ではないかも知れないが、弱いと言う訳でもない。
私的な感覚で言うと、一人前の冒険者に成り立て……って感じだろうか?
名前をシャムジと言う。
最初は杓文字と勘違いしていたんだけど、今回は教官だし……まぁ、シャムジとちゃんと名前を覚えて置こうと思う。
……まぁ、努力はするよ……努力は!
さて、その杓文字……もとい……シャムジだが、結構きさくな好青年って感じだった。
ちょっとお調子者チックな空気を漂わせてこそいるが、そこまで悪いヤツではなさそうだ。
顔的にも美形だったし、フラウのヤツがいたら絶対に名前と住所をセットで聞き出そうとしていたんじゃないかと思う。
そこを考えると、やっぱりフラウがこのクエストに参加しなくて良かった!




