リダ会長、冒険者見習いになる【12】
思えば、私も駆け出しの時は地味に受注システムを覚えるのに苦労したしなぁ……。
え? なんでわざわざ係員に宣言しに行かないとダメなの? 普通にはっ倒してくれば良いだけだろ?……とかって、割りと本気で思ってたな。
うん……あの時の私は混じりっけなしのバカだった。
…………。
そこは置いといて……次は受注だ。
さっきも述べた通り、受注したいクエストが決まったら、次はフロントへと向かって受注手続きに入る。
今回は研修生が一気に受注する感じになっているから、普段の受付とは別に仮説の受付がいくつか設置されていた。
お陰で、そこまで並ぶ事なく受付の所まで向かい、受注手続きに入る事が出来た……と、思ったのだが?
「許諾出来ません」
フロントのお姉さんは、ニッコリ笑顔で言って来た。
……ホワイ?
私は思わず、似非外人みたいな事を、頭の中で浮かべてしまった。
「どうしてですか?」
「リダさんとアリンさんの受注手続きに入った時、リダさんの死亡率が80%を越えたからです。組合のルールでは、死亡率が50%を越えるクエストは何らかの理由または例外が適用されない限りは認められません。悪く思わないでね?」
…………ああ。
お姉さんの言葉を聞いて、私は納得してしまった。
実を言うと、この受注手続きは同時に引き受ける冒険者がちゃんとクリアする事が可能かどうかのチェックする場所でもある。
冒険者の能力を元に簡単なシミュレーションを行った上で、対象となるクエストをしっかりと遂行する事が可能かどうかをあらかじめ百分率で数値化している。
その上で、達成率・死亡率・失敗率の三つを割り出し、達成率は50%を割り込むと、死亡率と失敗率は50%を上回るとクエストの受注が出来ない仕組みとなっている。
こっちも商売でやっているからな……無作為に人員を損失してしまう事が分かっている状態なら、簡単には許可は出さない仕組みになっている訳だ。
その上で行くと……どうやら、私の能力がさっきの測定値で計算されてしまった為、NGが出てしまった訳となる。
くそ……ちょっと手を抜きすぎたかも知れない。
し……仕方ないな……。
「えぇと……すいません……実は、ですね? そのカードは色々と事情があって作った物で、ちゃんと正式なカードがもう一枚あったりするんですよ?」
私は苦笑混じりになって自分のカードを受付のお姉さんに渡す。
こっちは、正式なカードと言うか……会長リダ・ドーンテンとしての冒険者カードだ。
まぁ、ステータス関連や私の素性については厳重なプロテクトが掛かっているから、組合側に見せても私が会長である事はバレないと思うし……つか、会長がこんな所で学園の生徒と一緒に研修生してるなんて、絶対に考えないだろうし。
……でも、バレたらどうしよ。
顔では平静に……しかし、内心ではかなりドキドキしながらも会長としての冒険者カードを受付のお姉さんに渡した。
「……あ、はい。こっちのカードでは大丈夫でした……と言うか、オールクリアし過ぎて気持ち悪い位なのですが……?」
……えぇと……そ、そうな?
怪訝な顔してしまう受付のお姉さんの気持ちも分かる。
きっと、再びシュミレートしたら、達成率が100%になって失敗率と死亡率が0%になったんだと思う。
「それと、こっちに出て来たデータでは『超炎熱爆破魔法による二次災害あり』と言うデータが来たのですが、これはなんでしょう?」
……って、バカなのっ!?
誰だよ! そんなおかしなデータ書いたヤツ!
カードには備考欄の様な物がある。
そこに、補足としてその冒険者が、これこれこの様な行動をするので、一定の注意が必要だと言う警告文が書かれる場合がある。
まさか、私のカードにも書かれていたとは!
この備考部分は、大体はどこそこのギルドマスターが書いたとか、協会本部の誰彼に書かれたとか……まぁ、つまり私の場合っは協会上層部の人間が書いた代物だと予測する事が出来るんだが……失礼極まる事をちゃっかり書いてくれた事は万死に値する!
後でしっかり調べて爆破してやるからな!
こんな事を考えているから、超炎熱爆破魔法に注意なんて書かれてしまうのかも知れないけど、そこは考えないで置こう! うん、それが良い!
「これで大丈夫ですか?」
「……あ、はい。だ、大丈夫……だと、思います」
ともかく……ちゃんと受理されたと分かった私は、軽く確認の声を受付のお姉さんに言うと、お姉さんは曖昧な声を吐き出しながらも頷きを返した。
きっと、今の私が恐ろしく不審な人物に見えたんだろうなぁ……。
そもそも、そんなカードがあるのなら、最初から出しておけって思うだろうし。
超炎熱爆破魔法なんて超魔法を、なんで研修生が使えるんだよ?……って思ったろうし。
他、お姉さんが怪しむ部分が一杯ありそうだったので、私はアリンを連れてそそくさとその場を後にした。




