リダ会長、冒険者見習いになる【11】
……って、言うかアリンはフラウ達のカードを見せて貰ってたんだな。
「そう言えば、フラウ達は何処に行ったんだ? さっきから姿が見えないって言うか……いない見たいだけど?」
「フラウちゃん達は、能力値が凄く優秀だったから、特別コースみたいなのを用意されてる……とか言ってたお? ルミちゃんは『どーせリダの能力なら、間違いなく特別コースに行くから、かえって都合が良いや』とかって言ってたお~。か~たまも特別コースなの?」
ああ、なるほど。
つまり、英才コースと言うか、組合として『歓迎したい人材』って事で、別格の扱いを受けている訳か。
こんな所に変な格差を付けて来るんだな……まぁ、助かったけど。
「いや、か~たまは違うぞ~? その数字だからな? 間違っても特別扱いはされそうにない」
最初に意図していた物とは別の理由ではあったが、結果として良い厄介払いが出来て結構な話だ。
これで、フラウ達クラスメートによる邪魔なお遊戯に巻き込まれる事がなくなった訳だからな?
反面で少し気になる部分がある。
もし、先程の測定で優秀な数値を残した者が、特別コースとやらに行くのであれば、数値的に飛び抜けて高いだろうアリンは、どうして特別枠に入る事が出来なかったのだろうか?
私としては、アリンと一緒のクエストをなるべくなら受注したいと言うか、同行する事が出来る可能性が濃厚になった為、色々と都合が良かったと言えば相違ないんだが……少しだけ気にはなるな?
まぁ、ここいらは後で近くのスタッフ辺りにでも聞いてみる事にしようか。
アリン本人が分かっている内容とは思えないしな?
ともかく、フラウ達から首尾よく逃れる事が出来たと言う事実だけ良かったと喜んで置く事にしようか。
そんな事を考え、私は一階のフロントへと向かった。
ここから先は、一般的な冒険者と同じ様な要領になるらしい。
一応、ここに来る前に組合のスタッフ……と言うか、一応今回の実習をするに当たって総監督に当たる代表の様な人がいて、その人がサラッとこれからの流れを説明していた。
ただ、現役の冒険者でもある私からすれば、かなり今更と言える様な流れではあったかな?
なんて言うか? 既に何百時間とやり込んだゲームを最初からやり始めた時に、チュートリアルを見せられた様な? そんな気分だ。
ゲームの場合ならキャンセルも可能だが、現実の場合はキャンセルなんか出来ないから、地味にかったるい。
しかし、建前では見習い冒険者としてここに来ている訳だし……そこは仕方ない部分もあるな。
……と、余談もここまでにして置こうか。
冒険者が、組合から仕事を引き受ける場合、フロントのスタッフに『このクエストを受注しますよ』と言う申請手続きを行う。
まぁ、ここは良くある話だな?
コルクボードに依頼書が貼ってあって、その依頼書をフロントに持って行く……なんて、良くあるファンタジー世界のヒトコマだと思うが、やっている事はこれと同じだ。
ただ、大体の組合はコルクボードに依頼書を貼る……と言う事はせず、依頼書のカタログみたいな物を用意し、受注者はカタログに表示されたナンバーをフロントのスタッフに言って、そのクエスト受注への手続きに入る。
依頼書をコルクボードに貼る……でも良いんだが、これだと無駄に紙のコストが掛かるからなぁ……小さな組織レベルならそれで問題ないし、昔ながらの組合とかでは今でもそれをやっている所があるらしいが、受注者の数だけ依頼書を作らないと行けないと言う手間も考えると、カタログにナンバー振って、それで受注しますと言う意思を示して貰った方が色々と経費が抑えられて助かる訳だ。
「取り敢えず、まずはクエスト選択だな? アリンはどんなのが良い?」
私は、研修者用に作られた薄い小冊子の用な物を手に取り、近くにいたアリンに尋ねてみた。
「おいしいのがたべれりゅのが良い~!」
聞いた私がバカだった。
「おいしいのは無理かなぁ……あ、でも、オークの討伐ってのがあるな? これなら美味しいお肉が食べるかもだ?」
「おおおおっっ! アリン、それやりゅ~! お肉食べたいおー!」
やっぱり食欲だけで動くのな……。
少し呆れが混じる私がいた……このままオツムの年齢が変わる事なく十代を迎えてしまった日には、どれだけ残念な娘に成長してしまう事やら……我が娘ながら母は少し心配になっちゃうぞ?
「よし、それじゃあ、次は受注だ。クエストのナンバーは覚えたな?」
「お? ナンバーだお?……ああ、この3ってのだね? うん、大丈夫だお!」
アリンは、クエストナンバーの数値を読んでからニパッ! っと笑みで答えていた。
まぁ……これが初めての受注だし、最初はこんな物だろう。
その内、ここらは勝手に覚えると思うし……多分。




