リダ会長、冒険者見習いになる【10】
「要は、アリンの言葉にしかアリンのカードは言う事を聞いてくれない……って事だおね~? もう、それならそうと言って欲しいお~? か~たまは理屈っぽいんだお~!」
しかも、口を尖らせてダメ出しまでして来る!
ああ、これは……あれか? 第一次反抗期ってヤツか?
大体、四歳から五歳程度になると起きる、最初の反抗期が早くもアリンにやって来たと言うのだろうか?
くぅ……これが、噂の反抗期かっ!
一期目の反抗期で、こんなにも心が折れそうになってしまうと言う事は、二期目はどうなってしまうんだ?
むしろ二期目の方が本番だろう?
人気のアニメだって、本当の意味で人気を出せるかどうかの明暗を分けるのは二期目だし!
いや、そうじゃない。
アニメの人気はさておいて、私はアリンのステータスを見せてもらう。
アリンに自分のステータスを開示させる形を取って貰い、アリンのステータスを覗くと……ああ、こう来たか。
アリンのカードに表示されていたステータスの部分には、全て『測定値超過により、測定不能』と書かれていた。
思えば、私の持つ会長の方のカードもこんな感じだったと、今更ながら思い知らされた。
てか、これで良いのなら測定なんて最初からしなくても良かったんじゃないのか?
「カードをくれたおねーさんがね~?『後は戦闘をするとカードが測定してくれるから、数値は常に変動するよ? 頑張って数値をあげてね?』って言ってたお~。これ、上がるお? 数字じゃなくて、文字が書いてるように見えるんだお?」
アリンは不思議そうに小首を傾げて私に尋ねていた。
係りのお姉さんが言っている事は間違っていない……いないが、アリンの様なおかしな能力の持ち主の場合だと、例外中の例外として扱う必要があるだろう。
このカードにも、やっぱり簡単な測定器と言うか、精密な数値を割り出すまでには至らない物の、あらましの能力を測定する機能が存在する。
これは、その冒険者が実践において、実用的に能力を発揮しているかどうかで数値が上下する代物で、ある意味当人の能力をより正確に表した数値でもある。
測定器で測定される数値が如何に高くとも、それがちゃんと実践で同じ数値の威力を出す事が出来るのかと言えば、やっぱり違う。
そこで、数値的には据え置き型の測定器よりも多少精度が劣る物の、実践で戦った時に敵へと与えているダメージを一定の計算式を元に算出し、この算出された物をステータスとして数値化した物を持ち主に見せる機能がある。
この数値は、持ち主が実際に戦闘を行う毎に更新されて行くので、数値はその時々で上下する……と、こうなる訳だな?
だけど、アリンがこの数値を上下する事にはならないと思う。
きっと、このカードが測定出来る数値を必ず超過してしまう様な結果しか出て来ないと思うからな……。
「か~たまのカードはどんなのだお? みたいかもだお~?」
「ん? か~たまのか? 良いぞ? ほら?」
「お~! アリンのカードと一緒だ~! お揃いだ~!」
アリンは嬉しそうに、はしゃぎながら答えた。
そりゃ、同じ冒険者のカードなんだから、基本デザインは共通だと思うぞ?
抽象的に言うのなら、免許証が同じデザインだと言っている様な物だし。
だけど、三歳児にとっては嬉しい出来事だったのだろう。
それに、自分とお揃いの物を持った事で喜ぶ娘の姿は、なんとも可愛らしく……ほっこりしてしまう。
こう言う所は、やっぱり娘を育てている上で嬉しく感じてしまう部分かも知れないな。
「お~? これ、おかしいお~? ちゃんと数字があるお? しかも、10とか15とか……なんか、小さい数字が書いてあるお? 魔力なんか5だお? 間違ってるんだおー!」
アリンは顔でもおかしいを露骨に見せて言う。
ここに関して言うのなら……まぁ、一応……ここには見習い冒険者と言う形で来ているからな?
大体、標準的なDマイナス程度のステータスになる程度に測定した訳だな。
逆に面倒だったぞ……特に魔力なんか、ちょぉぉぉぉっっと魔力を引き出すだけにして測定してたんだけど……これが、少しコツが入る感じだ。
うっかり、強めに魔力を出すと、あっという間に五桁以上になってしまう。
……ま、力のコントロールをする訓練だと思えば良いかな?……って感覚で、他の測定もやっていたよ、私は。
「フラウちゃんとか、一万越えてたお! ルミちゃんやルゥちゃんも5000とかあったお! か~たまなら、五千垓爆発! とか書いてあるに決まってるんだおー!」
ちょっとアリンちゃん? 助数詞がおかしいでしょっ!
てか、数字もおかしい!
ちなみに、知ってる人も多いだろうが、垓は京の1つ上の単位。
数値的に言うと十の二十乗だな。
つまり、1の後に0が二十個付く数値だ。
……尚、冒険者協会では基本的に六桁を越えると測定超過扱いになる為、それ以上は数字で表記される事はないぞ?




