リダ会長、冒険者見習いになる【7】
……でも、凄く心配だっ!
私は、誠心誠意……己の中にある全神経を神に向けて祈りを捧げた。
ただ、娘の事を信じない親は居ないぞ?
一見すると、アリンの事を全く信じてないみたいな感じに見えるかも知れないけど、ちゃんと信じてはいるんだぞ? 神様に祈りは捧げるけど。
「では、次の方?……おや? こりゃまた、随分と可愛らしい……はぁはぁ」
果たして、アリンの順番がやって来た。
学園での特待生達がやっていた物と同じ、棒の様な測定器の前の立っていた係りのムキムキ男は、アリンをの姿を見て息を荒くしていた。
……って、ちょっと待て?
いや、何で息が荒いの? あのムキムキ男? うちの娘に何を求めてんの? やめて欲しいんですけどっ!?
私の胸中に、違う意味での不安が芽生え始める中、アリンはニパッッ! っと、お日様笑顔を作ってから係りのムキムキ男に声を出した。
「はい! ありがとうごじゃいます! 可愛いって、か~たまに良く言われるお~!」
ハキハキした元気一杯な声でお礼を言うアリンがいた。
ちょっと気恥ずかしい事を言っているが……まぁ、子供の言ってる事だ。
何より、娘の事を可愛いと言う親がいて何が悪いと言うんだ。
「そうかい? はぁはぁ……実は、ぼ、僕も君の事が……あふぅ……か、可愛いんだなぁ……はぁはぁ」
ヤバイ、このムキムキ……絶対にアリンの天敵だ。
ぐぅ……これは、もう……測定どころの話じゃない!
そうと判断し、列から外れてアリンの所までツカツカと早足で向かおうと考える私がいたのだが……やめた。
私が動くのはまだ早いだろう……あのムキムキと言うか、ロリロリでムキムキだからロリムキとでも呼ぼうか? いや、でも語呂が悪いな? ムキロリにしようか?
…………。
いや、語呂なんかどっちでも良かった。
ともかく、ムキロリだって冒険者組合の係員としてここにいる訳だ。
流石に己の欲望に忠実な事を、これだけの人間がいる中で公然とやってしまう程に間抜けではない!
「えと、息の荒いおじさん? アリンはこの棒を叩くと良いお~? か~たまが、この棒は脆いから優しく叩けって言ってたお~? コツンで良いお?」
そして、アリンちゃんは余計な事をスタッフに言わないっっ!
あああ……不味い、これは不味い。
今度こそ、本気で止めに入ろうか?……私の預金通帳の為にも、早々に手を打つべき瞬間だ!
「脆い? ふ……ふははっ! 君の名前は、アリンちゃんって言うのかな? うん、可愛い名前だ。食べちゃいたいぐらいに可愛い……可愛いよ、アリンちゃんっっ!」
「お? 可愛いは一回で良いお? それ以上言われなくても意味は通じるお? あと、アリンは食べ物じゃないから、食べれないお~?」
「そうだね? 食べるの意味がまだ正確に分かる年齢ではなかったね?……ぐふふ……あふぁ……良いね? 本当に良いね……はぁはぁ」
ダメだ、あのムキロリ。
後で爆破して、その目を覚ましてやらないと行けない。
奇妙に身悶えたり、息が荒かったりで、その悉くが恐ろしいまでに気持ち悪いムキロリではあったが、やっぱりスタッフとしての職務だけは忘れていなかった。
つか、ここで完全に職務放棄していたら、このビルごと貴様を吹っ飛ばしてたがな!
「この棒はね? アリンちゃんの様なチビッ子なら、全力で叩いてもぜーんぜん大丈夫な棒なのさ?」
だけど、余計な事言うのだけはまぢ勘弁して欲しいのだがっ!?
いや、待て! これは、あのムキロリが勝手にほざいてるだけだ!
そうだ……そうだよ? 思えば、さっきの大爆発をアリンが仕出かしている所を、あのムキロリは見ていてもおかしくない位置にいたんだ!
それなのに、今のアリンを見て、単なる自分好みでお持ち帰りして色々とイタズラしたいチビッ子としか見ていないのだ!
その考え方は、私に爆破されても文句を言えない思考の持ち主ではあったが……逆に言うと、究極の変態であった故の愚行でもあった。
ズバリ言いたい。
あの測定器が壊れても、悪いのはあのロリムキだ!
私は1マールも弁償しないからなっっ!
そうとなれば話は別だ。
思いきりぶちかましてやれ!
「お~? 全力で良いお? 本当に全力で良いんだお~?」
……あ、待って? やっぱり少し加減しよう?
かなり真剣な顔してムキロリに尋ねるアリンに、私は一気に顔を蒼白にした。
ここでアリンが言う本気とは、
超攻撃力上昇魔法レベル99!
超防御力上昇魔法レベル99!
超身体速度上昇魔法レベル99!
超龍の呼吸法レベル3!
全ての補助魔法と補助スキルを発動させると言う事だ!




