助け合える明日へ【25】
……そして、出て来た。
見た感じだと、歪んだ空間に吸い込まれて間もなく、同じ場所からぺっ! って吐き出された勢いで出て来た。
……うむ。
これは成功なのか?
「お~! ちゃんと成功したお! これで大丈夫だおね~?」
「いや、待てアリン? 私には、ユニクスのヤツが得体の知れない謎空間の中に入ったかと思ったら、すぐに出て来た様にしか見えなかったんだが?」
「それで良いんだお~? スタート地点とゴール地点を同じ場所にセットしたから、同じ場所で空間転移して、やっぱり同じ場所に出て来たんだお! だから成功なのだお~!」
アリンはどや顔で私に言って来る。
うぅむぅ……。
言ってる事は間違っていないし、実際に謎空間へと向かったユニクスは、次の瞬間には戻って来ているのだから、ちゃんと『空間転移している』のかも知れない。
それに、見る感じではユニクスも特になんらかの身体的な問題がある様には見えないし。
「い、今のは何だったのですか、リダ様っ!? 変な空間に吸い込まれたかと思ったら、いきなり呼吸が出来なくなるし、謎のブラックホールみたいなのに吸い込まれそうになったかと思えば、元の位置に戻って来ますし……本気で何がなにやら……?」
「よぉぉぉし! 帰るぞバアル! さっさと起きろ!……と言うか、起きて下さいっ!? バアルさん? ねぇ、バアル先生ぃぃぃぃぃぃっっっ!?」
かなりマジな顔して呟くユニクスの言葉を耳にして、私は必死でバアルをたたき起こす事になったのは言うまでもない。
途中、そこはかとなく想定外なアクシデントがあった物の、最終的にはバアルを揺り起こして空間転移する形で、冒険者アカデミーの前まで戻って来た私達。
それにしても……なんて言うか、空間転移で帰宅すると……本気で旅している感覚がないな。
ほんの一瞬前までは空気の美味しそうな山の中にいたと言うにの、次の瞬間にはいつもの学園の建物が眼前に広がっているのだから。
「空間転移魔法……って、本当に凄いよね。なんだか旅行している感覚って言うか、近所を旅している錯覚すらあるもの」
戻って来て間もなく、こんな事をルミが答えていたのだが……まぁ、私も同意見かも知れない。
「そうですね! これは素晴らしい魔導インフラになるかも知れません。アリンさんが使えると言う事は、改良を加えれば今後の社会に浸透する可能性もありますね!」
ルミの言葉を耳にし、隣に立っていたルゥが右手拳をギュッ! っと握りしめながら答えていた。
未来は魔導大国の女王となる者にとって、魔導技術の向上とそれに伴う交通インフラの発展は、興味を惹かれる代物であるのかも知れない。
「今はまだ無理だとしても、十年後や二十年後には魔導インフラの一つとして、ニイガで作られている事を願うばかりです!」
今後の未来を築く者として、気合いを入れる形で叫ぶルゥがいた所で、ルミが頭の上にハテナを浮かび上がらせてから声を返して来た。
「……え? 十年や二十年後とかなら、ルゥのいた時代がそうなんじゃないの?」
「…………」
そして、ルゥは沈黙する。
……うむ。
まだ出来てないな? これは。
私的には、技術的な物は十年、二十年後の未来には、ある程度までは完成されているとは思うし、商業化も可能ではあると思っている。
だけど、政治的な物と言うか……経済的な物を考慮すると……十年やそこらでは無理だろうなぁ……と言うのが、私なりの考えだ。
前にも似た様な事を言った記憶があるので、ここでは簡略化した内容を軽く言うにとどめるのだが……要は、いきなり瞬間移動が可能になったら、経済が麻痺してしまうと言う事だ。
運輸業界が軒並み倒産するだろうし、元々の交通インフラ業界も低迷どころか、破綻してしまうだろう。
そこらの折り合いや調整を考えた上でやらないと、世界経済はどん底まで落ちてしまい、見事な世界恐慌へと発展してしまう危険すらあるのだ。
ここらを加味するのであれば、いきなり一足飛びに生まれた、便利過ぎる革命品と言う物は世界にとって必ずしも良い物であるとは限らない。
もちろん、便利な代物である事には変わらないし、ちゃんと折り合いが取れる様になって行けば、これ程素晴らしい物もないんだがな?
……まぁ、ここらに付いては未来の女王様にでも考えて貰う事にしようか?
「空間転移魔法の実用化は、私が女王になった暁には必ず達成させて見せます! 運輸や輸送、移動手段のみならず、軍事手段としても抜群の効果を発揮する魔法なのです! もちろん、私が率先して製品化を推して行きたいと思います!」
ルゥは、いつになく興奮した状態でルミに答えていた。
どうでも良いけど、軍事転用もする気なのな?
いや……それはそれで、国防には必要なんだけど……大丈夫なのか? 未来の女王さんよ……?




