会長、勇者の導きにより合コンに参加する【4】
「そ、そんな......私には、心に決めた人が......」
ルミは、急にモジモジとなって目を泳がせていた。
......うん。
これは、完全に今知ったって顔だな。
まぁ、ドタキャンになるかも知れないけど、ここで引き返すと言う選択肢もある。
合コンの意味が分かって、恥ずかしくなってモチベーションが低下している今なら、上手に言えば引き返そうとするかも知れない。
そうなったら、私もそんなトコに顔を出す義理もないから、そのまま帰る事が出来るしな。
それにしても......心に決めた人ってイリの事だよな?
あんな軽薄そうな男のどこが良いんだろうねぇ......?
しかも、半分は女だし。
けれど、蓼食う虫も好き好きと言うし。
人の好みをあれこれ詮索するのも野暮ってヤツかな。
どっちにしても、ここで引き返してくれれば良い話だな。
そんな事を考えていた所でユニクスがヒョコッと顔を出して来た。
「大丈夫ですよ、ルミ様。合コンと考えず、一つの社会勉強だと割り切れば良いのです。男は最高のドル箱だと言う学習さえ出来れば、今日は充実した社会勉強になったと言う事になりますね」
ユニクスは爽快感さえ感じる様な笑みで、とんでもない事を姫様に吹き込んでいた。
てか、馬鹿なの? 姫様だぞ!
「ドル箱ですか?」
「そうです、姫様。あいつらは金さえ積めば色々と自分の分身を作れると勘違いしてる悲しい生物なのです。この悲しい性を利用すれば、男を手玉に取る事が......」
「いやいやいやっ!」
私は速攻で声高にユニクスの言葉を遮断した。
確かにそう言う馬鹿もいるかも知れないけど、全員じゃないだろ!
つか、なんて事を教えてるんだよ、この勇者はっ!
「男を手玉に......」
ルミは唖然とした顔になって呟いた。
うぁ、話のベクトルがおかしな状況になりつつある!
少なくとも、今のルミは近くで妄想してるフラウと同じ様な顔になっていた。
つまり、自分に超絶都合の良い事を考え初めている!
ダメだルミ姫!
そこの勇者の口車に乗っては行けない!
「良いですか、ルミ様? 異性との触れあいはそのまま自分の経験値として蓄積されるのです。つまり女としてのレベルアップにはとても大切なのです。意中の相手が別にしたとしても、女子力のレベルは場数が物を言う時があるのですよ」
「な、なるほど! 大人です! ユニクスさん!」
いやいやいやっ! もうアンタ完全に騙されてるからっ!
「合コンで女子力アップとかないから!」
「へぇ......それは本気で仰るのです? リダ様?」
ユニクスはニィ......と、妖艶に笑う。
やけに自信のある笑みだった。
くそ......なんだか知らないけど、屈辱だ!
「思うに、リダ様? 失礼ではありますが、異性とリアルに触れあう場にいる経験が浅い様に見えます」
「本当に失礼なヤツだな!」
私は、お前らより全然色々と......。
......。
ヤバい......ないぞ!
「その顔は図星っぽいですねぇ......ふふふ」
いやぁ、すんごくムカつく!
いっそ殴ってやろうかなとも思ったんだが、それでは論破された雑魚キャラみたいだったから、敢えてやらないでおいた。
「良いですか? ルミ様、リダ様? 女は男に見られる事で磨かれる......これは基本ですよ」
......。
なんだろう、凄く説得力を感じてしまった。
確かに女子校の女子と、共学の女子とを比べると、明らかに共学の方が女子力高いし......。
......って、違う!
い、いかん! 私まで勇者の口車に乗ってしまう所だった。
そ、そうは行かないんだからなっ!
私は鋼の意思でユニクスに対抗しようとしたのだった。
●○◎○●
......と、言う事で。
三十分後の私は、近くにあったお洒落なバーで、近所の有名貴族学校の男子と楽しくワイワイしていた。
おかしい?
どうしてこうなった!
鋼の意思でユニクスに対抗していた辺りまでは、自分でもちゃんと理性を保っていた筈なんだが......。
途中から、イケメンが結構来ると言う魔法の言葉と、実は私を好きになりそうな、ショタ顔の子がいると言う超魔法の言葉を喰らった辺りから記憶がない。
......くぅ。
この私とした事が、自分好みな美少年がいるかも知れないと言う誘惑魔法に屈してしまうとはっ!
自分でも情けなく思う。
......思うんだけど。
ヤバいぞ、本気でショタで可愛くて格好良い美少年が来たぞ!
え? いいの? こんな展開!




