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こうして私は無双する・リダVer  作者: まるたん
第五編・最終章
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助け合える明日へ【11】

 しかし、そうなると……だ?


『ミズホさんの記憶が曖昧になったと言うか、目眩を起こす切っ掛けになったのは、送られて来た書状にある……って、事か』


『そうなんですよねぇ……送り主はソドム……ああ、さっき追放した化け物みたいなのが居たじゃないですか? アレから送られて来てはいたのですが、犯人は誰だったんでしょうねぇ?』


 いや、それは本気で言ってるのか?

 もしかしたら、精霊王なりのジョークを含めて、わざとうそぶいた台詞を口にしていると願いたい。


 つか、もう……この時点で答えが出てるじゃないか。


 つまり、ヤツはヤツなりに『こうなる事』を、最初から知ってたんだ。

 どう言う経緯を経て来たのか知らないし、どうして108諸侯とか言う、精霊の中間管理職みたいな立場に居座る事が出来たのか知らないが、確実に分かっている事はヤツが未来からやって来たと言う事だ。


 この時代では、プロトタイプの人工邪神が破壊されたばかりの状態であり、正規の人工邪神なんて開発段階ではあっても製作すらされていないんじゃないのか?……と、予測する事が出来る。


 そして、この疑問に対して答えた台詞が『未来からやって来た』とか言う代物。

 人工とは言っても邪神だけあって、人間の予測を越えた答えを当たり前の様に口から出して来る物だ。


 未来からやって来たと言う事は、この時代は過去にあたり……つまり、未来の存在からすれば既に起こっている出来事でもある。


 ここから考えれば、ヤツの未来ではここでカワ子が精霊魔王を名乗り、精霊王が単騎で乗り込んで来る所を返り討ちにすると言うシナリオが現実の過去として存在していたのだろう。

 そして、その発端でもある書状を送りつけたとしても『バレないで終わる過去』があった事から、書状に魔法を掛ける……とか言う、かなり簡単に足の付く大胆な行動に踏み切った物と予測出来る。


 実際、ヤツの予測は正解だ。

 これだけ『私が犯人です』アピールをしている様な書状を送り付けて来たと言うのに、それでもミズホさんは気付いていない。


 ……いや、まぁ。

 ともすればとぼけているだけかも知れないけど……って言うか、これ以上の荒波を立たせない為に、敢えてピエロを演じているだけかも知れないけど。


『結局、カワ子は確かに何らかの危害を私に行ったとは思うのですが、黒幕と言う訳ではないんですよ? でも、そうなると……この黒幕って……誰だったんでしょうねぇ?』


 やめて、ミズホさん!

 そんな疑問を私に振らないでっ!?

 私までアホの子になっちゃうから!?


『そ、そそそ……そうだなぁ……ま、まぁ……ほら、さっきの人工邪神が送った手紙だしさ? さっきも世界征服してやるぞみたいな勢いだったし? あいつが真の黒幕って事で良いんじゃないのか?』


 私も私でとぼける感じの台詞を口から吐き出してみせる。

 でも、地味に声が裏返っていた。

 分かり切っている事実を、敢えて私の口から絞り出す感じの台詞には……もう、どうしよう……って気持ちになっていたのだが、


『うん、そうですよね? そうしましょう! はい、じゃあ、この話はこれでお仕舞い!』


 私の台詞を耳にして、ミズホさんは納得する感じの台詞を私に口にした後、満面の笑みを作り出していた。


 …………?


 妙に引っ掛かった。


 何だろう?……この、おかしな話の纏まり方は?


 同時に思えた。

 やっぱり、ミズホさんは私に『犯人は人工邪神』だと『言わせたい』感じがした。


 ……うむぅ。


『……やれやれ』


 私は苦笑いをしてから、嘆息する。

 そして答えた。


『やっぱりミズホさんは、精霊王様をやってるだけあって、色々と賢いんだな』


『ふふ……どうでしょうね?』


 私なりの誉め言葉染みた悪態に、ミズホさんは肩を竦めた。


 ここらに関しては、私も良く知らない。


 ……いや、知らないからこそ、ミズホさんは馬鹿を演じている。

 その上で、犯人を人工邪神に仕立てている。


 正確に言うのなら、今回の黒幕と呼べる存在は、間違いなく人工邪神で当たっているのだろう。


 けれど、違う。

 ミズホさんが視野に置いているのは『そんな小物』ではないのだ。


 すると、相手は誰なのだろう?

 色々と候補はある。


 人工ではない、本物の邪神……正確には宇宙意思の存在か?

 あるいは、人工邪神を作り出した研究所か?

 はたまた、自分達の知らない、全く新しい脅威か?


 その真意は、ミズホさんだけが知っている。


 果たして、ミズホさんは言った。


『時が来れば話します……リダ会長とは協力態勢を取るとは申しました……ですが、協力態勢を取ったばかりの現状では、まだタイミングとしては早いのです』


 答えたミズホさんは、ニッコリと……でも、威厳のある気品さを込めて私へと声を吐き出していた。

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