助け合える明日へ【7】
瞬間、クリーチャー……改めゾンビっぽいキメラの口から放たれたレーザーが私へと真直角に飛んで来るが、
カンッッッッ!
私の眼前辺りで、見えない何かに当たり……そのまま斜め上に折り曲がる。
……うむ。
予想はしていたが、やっぱり超龍の呼吸法は、私の防御壁の能力を上昇させていたみたいだ。
私の防御壁は、基本的に二重構造になっている。
一つは自動スキルによって自然発生する『透明な膜』がこれに当たる。
この透明な膜の様な壁は、私の話では色々な所で出ているとは思うのだが……まぁ、おさらいを予て、簡単な説明をして置こう。
私が戦闘を開始すると言う意思を持つ事で自動的に展開される、言わばオートスキルの一種だ。
戦闘をするぞと言う意思を持つだけで自動的に展開する為、色々と使い勝手の良い防御壁ではあるのだが……その防御力は余り高くはない。
主に、格下を相手にする時に使用する防御壁で、強い相手と戦う場合は自分の意思でもう一つの防御壁を展開させる。
それが二番目の魔導壁だ。
こっちは、自分の意思で魔導式を頭の中で紡ぎ、魔法を発動させる事で発生する防御壁だ。
防御力的に言うのなら、最初の透明な膜と比べて圧倒的に高く、一手間を掛けるだけの価値がある。
……と、この様に。
私の防御壁は二重構造となっており、相手の実力によりけりで二枚目の壁を作る時がある。
そして、今回についてなのだが……この二枚目を張る必要がなかった。
簡素に言うのなら、現状の私にとってゾンビキメラと化した状態であったとしても尚、完全なる格下相手の防御方法で十分に対処する事が可能であったのだ。
よって、私は全く防御態勢を取る事もなく……むしろ、逆に攻撃魔法をお見舞いしてやった事となる。
その魔法すら、相手の攻撃を相殺する事が目的ではなく……純粋に相手を吹き飛ばすだけで発動した魔法だった。
……そして。
ドォォォォォォォンッッッッ!
ゾンビキメラは、跡形もなく吹き飛んで行った。
この光景を見ていると、某・有名な戦闘民族王子の台詞を口にしたくなる。
「ふん……きたねぇ花火だ」
思わず私の口が自然と動いてしまった瞬間でもある。
しかし、シニカルな顔付きで口を動かしていた直後、私は即座に身体を動かしていた。
相手がアリンの前世と同じ、人工邪神の類いであるのなら……必ずヤツにもある筈なんだ。
水晶玉の様な形をした……ヤツの核が。
そして、核を破壊しない限りは延々と自己修復を繰り返す。
とどのつまり……核を壊さない限り、コイツの身体が完全に滅ぶ事はない!
「……そこかっ!」
爆発の勢いで肉片が粉の様な物へと変化して行く中……一切の変化が起きてない部分を探していた時、私の目に水晶玉が映る。
やっぱり核があるのかよ。
こう言うのは、前知識が大変役に立つ話だなぁ……。
粉微塵と化した肉片達が再生を始めるより先に、私は極音速に近い勢いで水晶玉へと飛んで行き、
ガシッッッ!
右手で勢い良くキャッチした。
『……な、なにぃっっ!?』
直後、水晶玉から声がする。
……てか、完成版はこの状態でも声を出す事が出来るんだな。
アリンの時はプロトタイプだったからなのか? 水晶玉の時は声を出す事がなかった。
……まぁ、水晶玉の状態で声を出されても、こっちが困るだけだったかも知れないがな?
何はともあれ。
『年貢の納め時だ、腐れ邪神擬き野郎。貴様を生かして置けば、間違いなく世界の秩序は乱れる』
『ま、待ってくれ!? 俺はお前に何か悪い事をしたか? むしろ加護を与えてやっただろうっ!?』
水晶玉の状態だったので表情は分からないが、かなり慌てた声音で必死の言い訳を並べて来たのは分かった。
この言葉に私は呆れた。
『お前……自分のやった悪い事が「何か」気付いてないのかよ?』
『だから、俺様が何をしたって言うんだ!』
『仕方ない、教えてやる……お前は、私にとって世界と同等に愛しく、世界よりも優先したいまでに可愛い……私の娘をぶん殴り、あまつさえ殺そうとした。親なら子供の仇を討つのは当然だろう?』
『……な? 何? そ、そんな細やかな理由……』
なのか?
恐らく、ゾンビキメラはそう答えようとしたのだろう。
だが、この言葉を言う事は出来なかった。
……何故か?
グシャッッッッッ!
ヤツの言葉を待たずして、私が水晶玉を握りつぶしたからだ。
よって、さっきの台詞がヤツにとって、いまわの台詞にもなった。




