助け合える明日へ【4】
極論からすれば……今のユニクスは演技でも何でもなく、本気で瀕死の状態と言う事だ!
このままだと、確実にユニクスが死んでしまう!……と考えた私は、素早くクリーチャーの前へと向かおうとするのだが、
『何するんだおぉぉぉぉぉぉっっっ!』
ドンッッッッッ!
直後、アリンが叫んだ!
純然たる怒気だけで構成されたであろう怒鳴り声と同時に、アリンの周囲に爆発的なエナジーが噴出された。
『……な、なに?』
怒りと同時に、途方もないエナジーを撒き散らしたアリンを見て、クリーチャーはかなり意外そうな顔になっていた。
その理由は分からない。
……分からないけど……ヤツの視点からすれば、アリンは単なるプロトタイプの存在。
完全体とも言える自分の劣化版……とても思ったのかも知れない。
本当の所は知らないが……そんな事を考えたんじゃないだろうか?
そして、ヤツは気付くのだ。
その様な、悠長な事を考えていられるだけの余裕なんてないと言う事に。
ドゴォォォッッッ!
怒りの形相そのままに、アリンはクリーチャーへと突っ込んでいた。
……もの凄いスピードだった。
もはや、弾道ミサイルより早いんじゃないだろうか?
一瞬にしてクリーチャーへと突っ込んで行ったアリンは、そのまま体当たり状態でクリーチャーの胴体に頭突きをかました。
『はぐぁ……っ!?』
クリーチャーの顔が歪む。
その顔は言っている『バカな……?』と。
まるで、一昔前の悪役みたいな態度を取っていたクリーチャーがいる中、一瞬遅れてやって来たカワ子が素早くユニクスを担ぎ込み、そのまま魔導師組合のスタッフが乗っているだろう魔法の絨毯へと飛んで行った。
……うむ。
ナイス判断!
心の中でグッジョブする私がいる中……アリンの猛攻が続いた。
『ユニクスは……ユニクスは、意地悪でヘソ曲がりで……アリンにはイタズラばっかりしてたけど……でも、大事な友達なんだおぉぉぉっっ!』
叫び、アリンは次々とクリーチャーへと攻撃を展開して行く。
……うむぅ。
やはり私の娘だからかな?
なんと言うか……攻撃の仕方が私ソックリと言うか、なんと言うか……。
『はははははっ! 所詮はプロトタイプかっ!? お前の様な力一辺倒でごり押しする様な存在に、この俺様がやられるとでも思ったのかっ!?』
ドンッッッッッ!
『はぶぅっ!』
……っ!?
「アリンッッッ!」
私は叫び……同時に、身体が動いていた。
最初は、一方的にアリンがクリーチャーへと攻撃を展開し……一見すると、アリンが断然優勢な状況に見えたのだが……実際は違った。
猪突猛進の勢いで繰り出すアリンの攻撃をクリーチャーはアッサリ受け流し……そして、強烈なカウンターをアリンの顔面へと叩きつけていた。
「はがぁ……っ!」
しかも、かなり致命的だった!
陥没こそしなかったが……骨折はしただろう鼻から大量の血が吹き出し、ボロボロのまま口元をおさえるアリンがいた。
アリンではなく、他のヤツがこの一撃を喰らっていたら確実に顔が吹き飛んでいたな!
ある意味、アリンで助かったのかも知れないが……しかし、だっ!?
『ははははっ! いい加減、座興を楽しむのにも飽きて来た所だ!……それに、貴様はプロトタイプ。曲がりなりにも俺様の同胞……せめて、苦しまない様に一発で殺してやるよっ!』
両手で顔をおさえていたアリンへと、無慈悲な一撃を追加で喰らわせ様としたクリーチャーがいた時、私の右手が動いていた。
超炎熱爆破魔法!
ドォォォォォォォォンッッッ!
『ふぐぉわぁっっ!?』
恐らく、クリーチャーからすれば予期せぬ一撃だったのかも知れない。
だけど、普通に考えればわかるだろう?
私は、お前の見える位置で、ずっとこの状況を見ていたんだぞっ!?
私が放った超炎熱爆破魔法の一撃により、やつは軽くノックバックしてから放たれた方角……つまり、私の方を見ようとした。
『見ようとした』なんぞと曖昧な表現をしたのは、他でもない。
ヤツがその方向を見ている時には、既に私はアリンを抱えていたからだ。
つまり、もうそこは単なる虚空であったのだ。
「か、か~たま?」
「大丈夫だぞぉ~? アリン? 後はか~たまが全部引き受けるから。アリンはゆくっりお休み?」
ビックリした顔のまま抱き抱えられるアリンを前に、私は柔和な笑みを優しく作りながら口を開いた。
そして、アリンの顔に自分の右手を向けて、
上位復元魔法レベル30!
アリンの傷を癒す。
折れ曲がっていた、実に痛々しい顔は瞬く間に治り……元の愛らしい顔に戻って行く。
「す、凄いお……こんな魔法もあるんだお! か~たま天才! その右手から出るのは、爆発だけじゃなかったんだおぉぉぉぉぉっ!」
ちょっとアリンちゃん? 人聞きの悪い事を真顔で言わないでっ!
か~たま、泣いちゃうでしょっ!?




