精霊魔王・カワ子VS会長・リダ【20】
すると、カワ子は厳めしい顔のまま、次々と私に話して来た。
その内容は……なるほど、お前も苦労したんだなぁ……と同情したくなる話のオンパレードだった。
一例を述べて見よう。
下位精霊でもあるカワ子達は、序列的に言うのなら上位に位置する水の精霊……つまり、精霊王の背景と化している連中の一人が、単なる興味で我が儘を言い放ち、不眠不休で働かされた事があるんだと言う。
中には身体を酷使し過ぎて、過労によって寝込んでしまった仲間もいたんだとか。
しかし、水の精霊にとってそれは当然の行為である為、身体を壊した精霊に労りの言葉を掛けるどころか、ありがとうの一言すらなかったそうだ。
これだけでも私の眉が自然と捩れてしまう内容だったのだが、もっと酷い内容まである。
実際に仲間が死亡してしまうまでに厳しい事を命令させられて……本当に本当に酷い思いを強制させられ……でも、無力なカワ子達は、上位精霊達の言葉に逆らう術を持たす……同胞達が死んでも、悔し涙を流す以外の選択肢がなかったそうだ。
これが本当なら、水の精霊達にカワ子が復讐されても文句は言えない。
力が強い上位精霊であったが故に、カワ子達を好き勝手にこき使っていたのだから、立場が逆転すればカワ子に傍若無人な命令を与えられても、素直に従うしかないだろう。
……そう言った、暗黙のルールが存在していたのだから。
しかし、ここでは問題となる事が一つある。
『そんな話はでっち上げだ!』
ミズホさんの背後にわんさか居た水の精霊の一人が、カワ子の声を耳にしてから、避難めいた声音を上げた。
これが、問題のポイントだ。
仮に、カワ子の言っている事に何の嘘偽りがなかったと仮定しよう?
じゃあ、それを証明する物があるのか?
……答えは簡単。
そんな物など存在していない。
よって、こうなる。
『そもそも、そんな証拠が何処にあると言うのか? 貴様ら無力な川の下位精霊は平然と嘘まで吐いて、相手を騙す事になんの罪悪感も抱かない、小賢しい愚鈍な精霊じゃないかっ!? そんな嘘つきを相手に、被害者面された与太話をされた所で、誰がそんな話を信じると言うんだっ!?』
水の精霊は、ここぞとばかりに語気を荒げて叫んで来た。
実際問題、この主張は道理だ。
証拠も無く、一方的に被害を受けました……では、本当かどうか分からない。
つまるに、なんの被害を受けていなくたって『言う事が出来る』のだ。
しかし、それでもカワ子は全く怖じ気づく気配を見せない。
むしろ、大きく反発した。
『この状態で、どうして私が嘘を言うんだっ!? そもそも、この話が嘘だと? 自分達が今までやって来た事だろ? そして、これからも下位精霊にやろうとする、当然の権利だと思ってるだろっ!? ふざけんなよっ!?』
カワ子は今にも怒りが爆発しそうな勢いだ。
今のカワ子なら、水の精霊達を一瞬で消滅させない所を加味すると……そろそろ仲裁に入った方が良いのかも知れない。
そう思い……私が口を動かそうとした時だった。
『なるほど、双方の言い分は分かった……なら、今後は己の序列や精霊としての地位を濫用する輩が現れた時は、即刻処罰の対象としよう。また、確たる証拠が存在した場合、過去の案件であっても処罰を適合し……隠蔽を画策する者がいれば極刑もやむ無しとする』
ミズホさんが屹然とした表情を作って、カワ子を含めた周囲にいる者へと公言してみせた。
これに、周囲の精霊達は唖然となる。
『な……何をおっしゃいますか、精霊王! 我々は他の精霊と対等の実力を見せる為、序列下位の存在にまで下げる頭など持ち合わせておりません! その様な弱腰の態度を他の精霊が見れば……水の精霊達は、実力のない無能な下位精霊にすらペコペコする、腰抜け供の集まりだと馬鹿にされてしまいます!』
直後、必死になってミズホさんへと反論する水の精霊がいた。
……ほうほう。
なるほど、なるほど?
まぁ、言いたい事は分かるよ?
……巨大な勢力を持つ組織で、一定の権威や威光を保持すると言うのは、かなり重要な事でもある。
シンプルに言えば、強国ってのは一定の脅威と権威を持っているからこそ、他国に馬鹿にされないし……舐められない。
一定の武力を持ち、国力が高く……他国に舐められないだけの権威があるからこそ、その国は強国と周囲に『呼んで貰って』いる。
よって、面目を重視するのであれば、身分の低い存在を相手に低姿勢でいる様な行動は、単なる気弱で腰抜けの弱者が取る愚行に過ぎない。
……と、こう言いたい。
如何にも己の権力を手放したくない、貪欲な貴族みたいなヤツの言い分だな?




