精霊魔王・カワ子VS会長・リダ【18】
総体的に言うのなら、アリンは危険でも何でもなく……むしろ、私が行くより先にカワ子を倒したりして……私を送り出そうと一斉に拍手をする空気を一瞬で破壊してしまう、ムードクラッシャーにすら成り得たのだ。
果たして、私は思う。
やべぇ……真面目にやべぇ……嫌な汗がさっきから止まらないんですけどっ!?
正直、振り返るのがこの時ほど、怖かった事はないっ!
これ、どう言う風に言うのが正解なのかな?
『すいません。なんか終わった見たいですよ?』
……とか言うのが正解なのかなっ!?
だけど、こんな事をテヘペロ状態で言ったら『いきなり他人事かよっ!?』とか『実は大した事なかったんじゃないのかっ!?』とか、まぁ……色々と野次られそうで滅茶苦茶怖いっっ!
他方、見えてはいないんだけど……拍手も鳴り止み、無音状態になっていた背後に変化が訪れる。
『こ、コイツが……今回の主犯なのか?』
暫くして、少し疑念染みた声が聞こえた。
『あんまり強そうには見えないんだけど?』
いやいや! 見た目はか弱そうに見えるんだけど、実際には魔王レベルなんですって!
『胸のない会長と大差ない小娘に見えるな?』
だから! 小娘に見えても実は凄い実力で、胸のない会長も……ん? 誰だ? 今の発言はっ!?
私は怒りに任せて後ろを振り向いて見せる。
すると、渦巻き状態で気絶しているカワ子を中心に、沢山の精霊達がしげしげと見据えていた。
……直後、
『馬鹿者っ! 見かけに騙されるなっ!? 外見だけを見れば、確かに微力な川の精霊にしか見えないし、リダ会長程度のお粗末な胸元しかないかも知れないが、その中味は凄まじいのだ!』
ドォォォォォォォォンッッッ!
ミズホさんが爆発した。
一応、自分の部下達にカワ子の恐ろしさを分からせようとしていたのは分かるんだけど『会長の~』辺りの下りで出て来た説明が不適切だったので爆破した。
『はうわぁぁぁっっ!』
爆発したミズホさんは、爆風に煽られる形でひゅるるるるるっっ! っと、飛んで行った。
『…………』
水の精霊達、唖然。
……ふ。
しまったぁぁぁぁっっ!
これでは、友好どころの話ではないじゃないかぁっっっ!?
『いや、今のは、挨拶なのですよ! ええっ! つか、互いに平等な友好を結びましょうって事で、私は胸を侮辱されたのだから、相応の反論をしたい訳なのですよっ!』
完全にドン引き状態にあった水の精霊達に向かって、私はかなり必死になって『私は悪くない』アピールをしまくって見せた。
『……か~たま? 反論と言うより反撃だったかも知れないお? 何でも爆発する癖は、そろそろ直した方が良いかもだお~?』
ちょっ……アリンちゃんっ!?
そこで愛娘まで呆れた顔になって私へと言って来る。
いや、だって……だな?
しれっと平気で言ってたんだぞ?
この、見事なボディーラインを誇る、この私を当然の様に貶して来たんだぞっ!?
ここは爆破させるのが、礼儀って物なんじゃないかなぁっ!?
……と、心の中で騒ぎ立てる自分の気持ちをググッッ! っと堪え、軽く深呼吸してから穏和にアリンへと答えた。
『そ、そうだね……今のはか~たまが悪かったよ……ちゃんと、ミズホさんにはごめんなさいと謝るよ』
私なりにかなり妥協する勢いで答えた。
そして、この言葉を敢えて精霊語で言う私。
理由は簡素な物だ。
ちゃんと友好的になりたいんです!……って言う事を理解して欲しいからだ。
なので、そこかしこに不自然かな?……と思いつつも、
『私は、水の精霊さん達とも仲良くありたいと思って居ますので、よろしくお願いしますねぇ~?』
精一杯の笑顔を顔中にこさえた状態で近付いて見せたのだが、
『ひぃぃぇぇぇぇぇっ!』
『人間……怖すぎるっ!』
『胸は地雷だったかっ! すいません! 嘘です! 胸はあります! 猿よりはボインボインです!』
近付いて来た私を見て、水の精霊達は一斉に逃げ出した。
つか、最後の奴……絶対に同一人物だろっ!? お前だけは確実に爆破してやるからなっっ!?
その後、逃げ惑う水の精霊達を強引に捕まえては謝ると言う……何ともおかしな謝罪の仕方をして、一応の収集が付いたりもするのだが……余談程度にして置こう。
○●◎●○
小一時間後。
逃げ惑う水の精霊を説き伏せる……もとい、誤解を解く事を兼ねて、誠意ある謝罪をした事で一応の収集が付いた所で、目を渦巻きにしているカワ子へと、
ばしゃぁぁぁぁんっ!
バケツ一杯程度の水を掛けて、叩き起こして見た。




