精霊魔王・カワ子VS会長・リダ【14】
もはや、死刑台の上に立たされた様な気分で一杯になっていた頃、
「待ってくれ! 私ごとあの中に入れる気か? ふざけるなっ! 入れるのなら、リダ様だけにして置けぇぇぇぇっ!」
私の近くで泣き叫ぶユニクスの姿が……って、コラァァァァッ!
「ふざけてるのはお前だユニクスッ! お前も私と一緒に地獄へ道連れにしてやるっ!」
私は眉を思いきり捩って、未だお姫様ダッコ状態にあるユニクスの胸元でがなり声を立てていた。
反面、私は思う。
仮にユニクスも道連れにする事が出来たのであれば……少しはユニクスの方にも加護のエネルギーが向かう分、私の身体に掛かる負担が減るのではないのか?……と。
「安心しろレズ勇者! 水の精霊達の意思は『リダ様にしか向かってない!』お前にくれてやるエナジーは最初からないのだ! 一緒に入ったとしても特段、何もないからそのまま入って置け!」
なに、その超展開っ!?
ちょっと、ご都合主義過ぎる理屈だろ!
泣き叫ぶユニクスへと、即座に叫び返して来たバアルの声に、私はしこたま反論を浴びせてやりたい衝動に駆られていた。
「そうか……なら、ヨシ!」
良くないわぁぁぁぁっっっ!
バアルの説明を受けたユニクスがホッと胸を撫で下ろす姿が腹立たしい!
「リダ様……仕方ありません。ここまで来たのです。不肖……あなた様の腹心にして忠臣でもあるユニクスめが、ご一緒させて頂きます!」
「お前……自分が安全だと分かった瞬間、一気に態度を変えてないか?」
「何をおっしゃいますかリダ様。私は常にあなた様と共におります。さぁ……向かいましょう、冥土の扉を開けに!」
「アホなのっ!? なぁ? 馬鹿なのっ!? 冥土の扉って、開けたら死ぬヤツだろっ!? 開けたら最後だろっ!? マジで大概にしとけよ、こん畜生ぉぉぉっっっ!」
颯爽と爽やかな笑みを無駄に雄々しく見せるユニクスに対し、私は瞳から虹が出るんじゃないかって勢いで涙を噴射させていた。
その直後、巨大な手がパッ……と、手を離す。
同時に、私とユニクスの二人は、重力に導かれるまま下へと落下する。
その先にあったのは……当然、ふざけた量のある膨大なエナジーの塊。
目寸法で数十メートルはあるだろう光の球体に向かって、まっ逆さまに落ちて行く!
ああ……。
もし、これが私の最期だったのなら……私の墓には、どんな文字が記されてしまうのだろう?
そして、時が経ち……立派に成長したアリンが、墓参りの時にどんな気持ちで私の墓を見据える事になるのだろう……?
せめて、墓の文字ぐらい、自分で刻みたかったなぁ……。
例えば、そう……『誇り高きリダ・ドーンテン。加護を受けるつもりが、逆に失敗してここに眠る』とか。
…………うぁ。
自分なりに、せめて少しは格好良く仕上げたつもりだったけど、それでも格好悪いぃぃぃっっ!
あああ! やっぱり死にたくないぃっ!
くそ、私が何したって言うんだっ!?
これで死んだら、貴様ら絶対に恨んでやるからなぁぁぁっ!?
ドッポォォォォォォォォォォォンッッッ!
心の中で、周囲の存在……主にユニクスとバアルの二人に対しての恨み節を胸中で絶叫しまくった時、私とユニクスの二人は光の球体に飛び込んだ。
まるで、勢い良く水の中へとダイブしたかの様な水飛沫と、水音が、周囲に撒き散らされた。
普通に水なんじゃないか?……って勢いだ。
中も又、やっぱり水中にいるかの様な感覚だった。
ただ、不思議な事にも呼吸は出来る。
水中でも呼吸する事が可能な魔法とかあるのだが……感覚で言うと、その魔法を発動していた時と同じ様な感じだ。
要は、外にいる状態と全く同じ感覚なのだ。
まぁ……この感覚は、これまでも何回か経験もしていたりもする。
冒険者として、色々なダンジョンを潜ったりもしたからな?
だから、取り立てそこまで新鮮な感覚と言う訳ではなかったのだが……。
「何だ……これは……?」
今の私は、明らかに新体験と表現しても良い感覚との遭遇を果たしていた。
現状に近い体験を述べると……超龍の呼吸法を使用していた時の感覚。
これを『真逆にした物』だった。
正直、この感想が当たっているのかどうかは分からないが……何となく、とても似ている様な気がした。
ただ、さっきも言った様に、全くの逆なのだ。
超龍の呼吸法を発動している時は、物凄い勢いで私の中から気力が吸い取られて行くのを感じているのだが……現状は、物凄い勢いで私の中に、何かが流し込まれている。
これが水の加護だと教えて貰っている関係もあり、得体の知れない何かという表現は適切ではない……ないが、思わずそう言ってしまいたくなる。
何故か?
「こ、これ……本気で大丈夫なのか?……はぁはぁ……す、凄く苦しいんだが?」
私は、かなり真面目な顔になって独りごちていた。




