精霊魔王・カワ子VS会長・リダ【13】
それに……だ?
仮に、バアルのヤツが裏切ったとしても、その時は私が全力でバアルを叩きのめせば良いだけの話だ。
逆にバアルから返り討ちを受けてしまった時は……その時。
私の能力がその程度だったと言うだけの話だろう。
どちらにしても、今の顔を……悪魔であるバアルの表情を信じる事のリスクと覚悟は、自分なりに出来ている……つもりだ。
その程度の覚悟なくして、悪魔と人間の融和なんざ出来ないと思っているからな!
閑話休題。
他方、現状における私は、バアルの心情をどうこうと言い争っていられる猶予などなかった。
未だアリンの姿が見られない所から考えても……アリンは己の怒りを爆発させる勢いでカワ子との激闘を繰り広げているのだろう。
隙を見て即行で逃げ出してくれるのなら結構な事だが……現状を見る限りだと、アリンが逃げる選択をして来るとは予想し難い。
きっと、逃げる気力すら無くなっても尚、カワ子に抗おうとするのではないか?……と、予測してしまう。
こうなったのなら大変だ!
……ああ、くそっ! 仕方ないなっ!
「つまり、あれだろ? 私には無限成長スキルが存在するから、大量の加護を受けても無限に成長するから、加護を受ける数が多ければ多いだけ、純粋にパワーアップする!……と、お前は言いたいんだな?」
私は自分に言い聞かせるつもりで、バアルに納得する様な台詞を言い放った。
バアルは大きく激しく、何回もコクコクと頷きを返して来る。
「その通りですリダ様! 流石リダ様は聡明ですねっ! 話が早くて助かります!」
そして、私を精一杯、誉めちぎって来た。
どう考えても太鼓持ちをやっている様にしか見えない。
私を完全に煽てて、否が負うにも精霊達の加護を受けさせようとしている魂胆が見え見えだった。
「……分かった。精霊の加護は私が受けよう……受けるんだが」
そこで、私はかなり真剣な顔になってバアルへと尋ねた。
「お前がひた隠しにしている部分を少しでも良いから教えろ? そうじゃないのなら、私は絶対に加護を受けない!」
「……え? いや、何を仰いますかリダ様? 自分は一切の隠し事など……って、ユニクス! 貴様っ! 補助スキルまで発動して逃げようとするんじゃないっ!?……分かった! 分かりました! 一応、私の計算上は完全にリダ様なら100% 安全と言いますか、パワーアップするだけで終わるのですが、何分ですね? 過去の前例では百体の精霊から一斉に加護を受けた人間など一人も居ないのですよ? 一応、近い資料だと五体の精霊から加護を一気に受け……身体が耐え切れずにぐちゃぐちゃのミンチになったと言う例なら見掛け……ああああっ! だからリダ様! あなたなら大丈夫ですって!……と言うか、ユニクス! 貴様も補助魔法まで発動させて、マジで逃げるんじゃないよぉぉぉぉっっっ!?」
その後……私は、バアルが召喚した巨大な手によって、かなり強引に水の精霊達による加護を受ける事になって行くのだった。
○◎●◎○
水色の光が、無数に存在していた。
遠い距離から見れば……それは、巨大な光の球体に見えたかも知れない。
しかし、近付いてみると……それは、小さな光の球体が何重にも重なって出来ている事が分かる。
百体にも及ぶ……水の精霊達が一斉に加護を……そのエナジーを集めた顛末によって生まれた莫大なエネルギーだった。
果たして、私は思った。
もう、これ……そのまんまカワ子にぶち当てたら良いんじゃね?
水の精霊達によるほぼ大多数のエナジーを前に思った私なりの感想はこれだった。
しかし、それだと某・元気な玉になってしまう。
きっと、私が許しても他の色々な人が文句……もとい、そのまんま過ぎてパクリ臭が凄い……でもなく。
ともかく、その手法は色々とダメなのだろう。
……世の中の妙な不条理を感じてしまう事然りだ。
いや、まぁ……でも、パクリはダメだよな? せめてオマージュしないと!
…………。
どっちもどっちだな……と思った所で、話を戻そう。
今の私は、
「いや、ちょっ……待て! これ、やっぱりエナジーの数がデカイ! デカ過ぎるって! こんな所に落とされたら、私の身体がパンッ! って、なるって!」
バアルの召喚した巨大な手によって、光輝く球体の真上辺りにいた。
そして、今になって大きく激しく後悔する!
いや……本当、凄いエナジーなんだよ!?
私がレベル3を発動可能になってた時のエナジーと対比しても、軽く5~6倍はあるっ!
どう考えてもパンクするから! 破裂するからっ!




