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精霊魔王・カワ子VS会長・リダ【10】

 ねじ曲げられた空間からバアルがやって来て間もなく、水の精霊王であったミズホさんがやって来る。


 ここまでは良い。

 私としても予想の範疇内と見て良かった。


 だが、ここから先が大きく異なった。


 なんと、水の精霊と思われる存在が、次々と……もうワラワラと歪んだ空間から飛び出て来たのだ。


 何だこれは……?


「壮観ですねぇ……リダ様。一応、ミズホ様から聞いてはいたのですが、実際にこの目で見ると、やはり感慨深くもあり……驚きでもあります」


 ニッコリと笑みで答えたユニクス。

 一応、ユニクスは多少なりとも話を聞いてはいた模様だが……私に関しては全く分かっていない。


 そもそも、これは何をするつもりなんだ……!?


 空間の歪みから次々と出て来る水の精霊達を見据え、ただただ唖然と佇む事しか出来なかった私の元へ、


「おお、リダ様! ご無事で何よりでございます!」


 歓喜の声を飛ばして来るバアルと、


『途中で戦線離脱する事になった無力さをお詫びさせて下さいね……リダ会長?』


 申し訳ないと顔で言うミズホさんの二人がやって来ては、私に声を掛けて来た。

 私は苦笑してしまった。


『謝るのは私の方だ……折角、ミズホさんが私にくれた水の精霊王の加護を無意味な物にしちゃったからな?……はは、すまない!』


 私は即座にミズホさんに深々と頭を下げた。


『とんでもないです。奴の能力は私の加護ごときで易々と倒せるレベルではないと、私自身も存じておりました……だから、謝るのは私の方なのです』 


 すると、殊更申し訳ない顔になったミズホさんは、そう言ってから頭を下げて来る。

 実は、ミズホさんの加護が絶大で、カワ子の能力を上回っていたりしたのが事実だったけど……まぁ、そこは言わないで置こう。

 下手に癇癪かんしゃくを持たれるのも嫌だし。


『ごめんなさい! 実は、リダさんには時間稼ぎをして貰う為に、一人で戦って頂いたのです!』


「……へ?」


 頭を下げて答えたミズホさんの言葉に、私は小首を傾げてしまう。

  

「それは、どう言う事ですか?」


 下げていた頭を戻り……私はミズホさんに尋ねてみる。

 時間稼ぎとは……一体?


 仮に時間稼ぎが必要だったとして……時間を稼げばどうにかなる手段があったと言うのだろうか?


 この、解けない謎を前にし、


「リダ様は、ご自分の凄さと言う物を、自分でも理解なされていない……これは由々しき問題です。リダ様……あなた様が持つ人徳は、水の精霊王の心さえも簡単に揺り動かしてしまう……そんな、とてつもない友愛能力を誇っているのです」


 バアルが、さも誇らしげに私へと語っていた。

 

 友愛能力……ねぇ。


 思えば、この能力……この世界に転生する前に、みかんのオリジナルでもある宇宙意思から貰った特殊能力でもあった。


 第二編の後半辺りに出て来る話なので、詳しい事は割愛するが……互いに協力する事で無限の力が生まれる事を考えた私が、自分なりにチョイスしたスキルでもある。

 

 当時の私は、そこまで深く考えて選んだ訳ではなかったのだが……結果として、この友愛スキルが絶大なる効果を引き起こしたと言う事になる。


 ……うむ。


 何処でどんなスキルが役に立つのか?……なんて、実際にその場で経験しないと分からない物だな。


『私はリダ会長と接し、バアル学園長に説かれ……学びました。人間も精霊も手を取り合う事で、より良い明日を生み出す事が出来る!……と!』


 そうと答えたミズホさんは……まるで聖母様の様だった。


 そして、この言葉に痛く同感した。


『リダ会長……今後は、私達水の精霊達も、人間との共和策を色々と模索し……考えて行こうかと思います。なので、出来る限りで構いません、リダ会長の御力もお貸し頂けないでしょうか?』


『当然協力するよ、水の精霊王! むしろ、こっちからお願いしたい程だ! ここらに付いては、色々な協定を作成する様に私も冒険者協会に呼び掛ける様にする! 最初の内は、色々と戸惑う事もあるだろうし……協定が作られても、それを完全に守る事がない場合もある可能性だってある……だけど』


 そこまで答えた私は、ニッ! っと、快活な笑みを満面に作り……ミズホさんの手を取った。

 そして、再び口を動かしてみせる。


『まずは、互いに仲良くしよう!……と言う気持ちと、その後の努力で溝は埋まって行くと思う! これからは一緒に……争う事をせず、共和の道を歩んで行こう!』

 

『そう言ってくれると信じておりました』


 満面の笑みだった私に向けて、ミズホさんもまた満面の笑みで返してくれた。


 ……かくして。


 ここに、人間と精霊との間に生まれた、共和の道への第一歩が印されて行くのであった。

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