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精霊魔王・カワ子VS会長・リダ【9】

「アリンは……尊い犠牲になったのです」


 ユニクスは、爽やかな微笑みを作りながら私へと答えた……って、うぉいっっっ!?


「馬鹿なのっ!? ねぇ、アホなのっ!? 三歳児に何やらせてんだよ、お前はっっ!?」


「そうは言いますが、リダ様……あの精霊のエナジーは、私の予想を遥かに凌駕した、圧倒的なパワーを持っております。もはやあれは単なる精霊などではありません……魔王精霊なのです!」


 まぁ、実際に魔王にナール……とか言うおかしな魔導器マジックアイテムを使っている訳だから、魔王染みた能力と言うより、魔王その物になっている感はある。

 かく言う、カワ子本人も『精霊魔王』なんぞを名乗っている訳だし? ユニクスの言わんとする意味も分からなくはない。


 そして……ユニクス単体の能力では、到底食い止める事の出来ない相手でもある……と言う事も、だ。


 その上で行くのなら、確かにアリンは適任であったのかも知れない。

 

 恐らく、危機ピンチに陥った私を助ける為、アリンが盾となりユニクスが私を救出すると言う作戦だったのだろう。


 そして、その作戦が幸を奏し……こうして私は五体満足に退避する事が出来た訳だ。


 私の油断と慢心が招いた結果だったが故に、この作戦を実行するに至った事に関しては少し申し訳なく思う。


 だが、ここに関しては、取り敢えずおいて置こう。


 反面で気になる点が二つある。


 一つは、今後の対抗手段だ。


 水の精霊王でもあるミズホさんの加護を受けた事で、一時的にパワーアップしたからこそ発動可能だったスーパードラゴン呼吸法ブレイズレベル3。


 さっきの戦いで、レベル2では全く歯が立たない事を痛感させられた。

 そうなると、再びレベル3を発動させなければならないと言う事になるのだが……果たしてそれを早急にクリアする事が可能なのだろうか?


 正直、再びミズホさんから水の精霊王の加護を頂きたい所ではあるのだが……もちろん、すぐにとは行かないだろう。

 序でに言うのなら、精神も限界まで吸われてしまい、文字通り精根尽きている私が全快するのにも時間を必要とする。


 現状の私では……レベル3は当然として、レベル2……いや、レベル1ですら数分も維持する事が出来ない状態だろう。


 これでは、カワ子と対等に戦う事なんか無理だ。


 そして、後者となる二番目の疑問が……現状のアリンだ。


 もし、目的が私を救出する事であったとするのなら、もう既にアリンはこちらへと戻って来ている筈なのだ。


 しかし、アリンの姿は一行にやって来る気配がない。


 これはどう言う事だろう?

   

 ここから考えられる事は……一つしかない。


「アリンは……最愛でもある母親が殺され掛けた怒りによって、完全に理性と言う物を失い掛けております……この調子ならば、例え相手が魔王であっても全力で戦おうとする筈です……惜しい子でしたよ、ええ……」


 ……と、言う感じの状況になっている訳だ!


 ……って、だからっ!


「勝手に私の娘を殺すんじゃないよっ!? 可愛い可愛い我が子なんだよ! 私にとってはっ!」


 言うなり、私は滑空魔法を発動させてカワ子がいるだろう方向へと飛び立とうとする。


 ガッッ!


 だが、至極当然の様にユニクスが私を止めた。

 元来の私なら、力任せに振りほどく事も可能であったのだが……現状では、ユニクスの手を1ミリだって動かす事が出来なかった。


 ……くそ……。


 こんな弱い自分でいる現状に、途方もない無力さを感じた。


 私は……必死で戦う娘を守る事すら出来ないのか……。

 私は……殺されるかも知れない娘を、むざむざと見据える事しか出来ないのか……。


 不意に涙が出そうになる。

 けれど……ここで涙を流した所で、何が変わる訳でもない。

 嘆く事なら、後でも出来る!


 今は、少しでも……本当にちょっとでも良いから、ベストとなる方法を真剣に編み出そう!

 アリンのエナジーはまだ感じている。

 実に荒々しい……生命力の塊染みたエナジーを。


 逆に言うのなら、このエナジーを感じ取る事が可能な内は、まだ娘を助ける事が可能だと言う事だ!


 私は絶対に諦めないぞっ!


 強い情念の様な物を胸に描いた……その時。


 グォワァッ!


 私の眼前にある空間が歪んだ。


 これは……空間転移魔法テレポート


 妙に不自然かつ不気味な情景に、ある道化師ピエロを連想してしまう私がいたが……今回は違うと確信を持っていた。


 これは、間違いない……バアルが行った空間転移魔法だ!


 そうと確信を抱き、ねじ曲がった空間を刮目する事……数十秒。


 私は目を大きく見開いた。


 そこにいたのは、確かにバアルではあった。


 ……そう。


 それだけは間違いなかった。

 

 しかし、それだけではなかったのだ。

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