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精霊魔王・カワ子VS会長・リダ【7】

 完全に精神をスキルに吸い取られた私は、


「はぁはぁ……くそっ!」


 急に息苦しい状況に陥り、額から汗を流すと……そのまま落下寸前の状態にまで陥る。

 鉄砲水の関係で、ずっと空中を浮遊する形でカワ子と戦っていたのだが……現状では、浮遊状態を保つ事すら怪しい。


 そんな私を見たカワ子は、


『ふふ……ふふふ……あっははははははっっっ!』


 再び、狂喜にも似た壊れた高笑いを復活させ、侮蔑の目で私を見据えていた。


『精霊魔王たる、この私に少しでも恐怖を与えてくれた事には驚かされたよ……たかが人間にしては、良くやったと誉めてやろうじゃないか?』 


 言うなり、カワ子はまたもや水で出来た矛を作り出し、右手に握って見せる。

 

『お前は、生かして置くと……確実に私を殺そうとするだろうからねぇ?……ふふふ、もちろん殺して上げるよ? 私がアンタをね! 雑草は早めに刈り取らないと、後が大変だしさ?……あははっっ!』


 そこから、ゆっくりと私の前に近付き……右手の矛で私の首を凪ぎ払おうとした。


 ……ああ、これはダメだ。

 不幸中の幸いと言えば、カワ子に脅威と見なされて、催眠魔法を受ける事なくその場で殺される『だけ』で済むと言う事だろうか?


 少し前までは、私を手駒にしてやろうと躍起やっきになっていた傾向にあった。

 しかし、それを行うと……最悪、私がカワ子の寝首を掻く時がやって来るかも知れない。


 よって、さっさと殺す選択を取ったのだろう。

 その判断は正解だ……クソ精霊。

 ここで殺さなければ、間違いなく次はお前を私が殺していただろうよ?


 こんな事を胸中で考えていた所で……私はふと思った。


 あれ? どうして私はこんな事を呑気に考えていられるだけの時間が存在しているのだろう?……と?


 実際問題、カワ子の動きはかなり遅かった。

 もう、現状の私が抵抗出来るだけの力がないと悟っていたのか? かなり余裕を持って身体を動かしていたからだ。


 しかし、そうであったとしても、これだけの時間を長々と掛けるのかと言えば……やっぱりそんな訳がない。


 首を跳ねられると覚悟し、目を瞑った私であったが……いつまでもやって来ないカワ子の刃に幾ばくかの不自然さを抱き……瞑っていた目を開く。


 ……果たして。


「…………へ?」


 そこには、カワ子の刃を鷲掴みにする愛娘と……ユニクスの姿があった。


 ?????


 私の頭がハテナで埋まった。

 一体……何がどうなっているんだ?


 余りにも予想外だった現況を見て、私は思わずポカーンと口を開けてしまう中、幼いながらも憤怒の感情をこれでもかと言うばかりに見せていたアリンが、剣呑かつ角々しい怒声をカワ子に浴びせた。


『お前は……アリンのか~たまを殺そうとした……いつでもアリンの事を一番に考えてくれるか~たまを殺そうとした! 許せないおぉぉぉぉぉっっ!』


 怒りで自我が崩壊しそうな勢いで、喉の奥から激昂するアリン。

 その表情は、色々な感情がグチャグチャに入り交じってしまい……目から涙を流すわ、鼻水を出すわで酷い状態になっていた。


 だけど、私にとって誇りすら感じる……素晴らしい表情だった。


 親を想う子の気持ちがある様に……子供だって親を慕う気持ちがある。

 アリンが見せた私への気持ちが、とっても良く分かる光景でもあった。


『……な、何が起こって……?』


 他方のカワ子は、完全に当惑しまくっていた。

 無理もない。

 かく言う、私自身も一体何が起こっているのか? 皆目見当も付かない状態になっているのだから。


 そんな中、ユニクスが私の近くまでやって来ると、素早く私を抱え込んでは、地上へと降りて行く。


 ……なにをする気だ?


 ……?


 ……っ! もしかしてっ!?


「お前! 今の私が動けない事を知って、人気ひとけのない山中へ行って、とんでもない事をするつもりだろっ!?」


「ああ、その手も良いですね! それなら、そっちの方向でトライしてみます?」


「すいません、嘘です……嘘だから、おかしな事はしないでくれっ!」


 私なりに立てたトンデモ展開な予測を耳にし……しかし、ツッコミを入れる事なく、むしろ妙案とばかりにニコニコ笑顔で肯定して来たユニクスを見て、私は即行で謝ってみせた。


 謝るぐらいなら言うなよと言われてしまいそうな台詞だが……しかし、私としてもここだけは言わずにいられない。

 

 相手がユニクスなら、絶対にマトモな状況になんか行く訳がない!……と!


 しかし、今回に限って言うのであれば、それは杞憂と表現すべき内容だった。


 ユニクスにお姫様ダッコの要領で抱えられ、向かった先にいたのは、


「……え?」


 私は思わず目を疑った。


 そこに居たのは、山神様をかくまう為にいたのだろう魔狼を、手厚く治療または介護する魔導師組合のスタッフ達であったからだ。

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