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水の精霊達の逆襲【31】

『よう、カワ子? 暫く見ない内に、随分と変わったな?』


 眼前までやって来たカワ子を見て、私は嘯き加減の台詞を口にした。


『そうだろう? 無力な人間? 次からは、ちゃんとカワ子様と呼べ』


 すると、私のブラック仕立てのジョークを、軽く受け流す形で傲慢な笑みをニヤリと浮かべながら返答して来た。


 どうやら、精神的にも優位にあると考えているらしい。

 少なからず、カワ子の表情は言っている『負ける気がしない』と。


 ……だが。


『それじゃあ、カワ子様よ? いい加減、弱いものイジメをするのは止めにしないか?』 


 こうと答えた瞬間、それまで精神的に優位であるが故の余裕さを見せていたカワ子の眉がピクッ! っと跳ねた。


『弱い者イジメ……だと?』


 呟き、彼女は憤怒の形相を露にした。


 そこから再び口早に叫んでみせる。


『これまで、能力的に強いと言うだけの理由で、私達……川の精霊達にやって来た理不尽な行為は弱い者イジメではないと言うのかっ!? 何が山神は山の法だ!? 結局は自分達の都合ばかりを優先し、私達が苦労した所で助ける事はおろか、むしろ助長する様な事ばかりして来た癖にっっ!』


 カワ子は感情的になって、私へと叫んで来た。


 ……カワ子の言っている事は、私にとって不可解と言うか……今一つ分からない部分も点在しているが、何を意図しての言葉であったのかは何となく理解する事が出来た。


 要は、これまで弱者に位置したカワ子達に対し山神様がやって来た事は、まさに弱い者イジメに値する物だろう?……と、こんな感じの台詞を言いたい訳だ。


 こう言ったカワ子の台詞が、何処まで真実であるのかは……私には分からない。


 だが、能力的にも……そして、立場的にも上位に位置した山神が、川の精霊達にとって不都合の生じる理不尽な行為を一度でも行っていたとするのなら、それは悔い改めないと行けない事だろう。

 もっとも……こいつの事だから、単なる逆恨みをしている可能性も無くはないのだが。


 どちらにせよ、公平さに欠ける出来事が起こったとして……立場的に上位である山神に逆らう事が出来なかったと言う側面は、実際にあったのかも知れない。


 だからこそ、カワ子はここまで怒っているのだ。


『お前達には分からないだろう? 無力な精霊が……より強い精霊に逆らえず、泣く泣く相手の言う事を無条件で受け入れなければならないと言う事実を……この悔しさをっ!』


 心の中にあったのだろう激情をあらんかぎり放出する形で叫んで見せたカワ子。


『弱い者イジメを最初にして来たのは、そっちだ!……それなのに、何だ? こっちの方が強くなって形勢が逆転した途端、言って来た台詞が? なんだって? 弱い者イジメはやめろ?……ふふ、ふふふっ! どの口がそう言ってるんだよっ!?』


 ブォワァァァァァッッッ!


 カワ子が叫んだと同時に、彼女の怒りが強烈なエナジーとして放射され、強烈な衝撃波として辺りに撒き散らされた。


 ……なるほど。


 カワ子には、カワ子なりに……山神様を恨む理由があったと言う訳か。

 

 それは、上位側……つまり、支配している側からすれば些末な事。

 特にそこまで怒るべき事ではないレベルの代物。

 だが、それを無条件で受けなければならない弱者からすれば、途方もない屈辱であり……大きなショックでもあったのだろう。


 故に、カワ子は答えた。

 弱い者イジメを先にして来たのは、そっちの方だろう!?……と。


 もしかしたら、この言葉は正しいのかも知れない。

 もしかしたら、この言葉にこそ、和睦のヒントが存在しているのかも知れない。


 ……だが。


『例え、お前が弱い者イジメをされた被害者側の存在であったとしても……お前は少しやり過ぎた』


 私は言う。

 

 ……そう。


 カワ子……お前はやり過ぎた。


 山神様に復讐する為、多くの魔狼を瀕死にさせていた。

 状況を完全に把握してないので、判然とはしていないが……恐らく、魔狼には死者が発生しているだろう。

 水の精霊王を名乗り、元来の精霊王を催眠によって自分の部下にし、操り人形にしてしまった。


 これだけでも、十分にやっては行けないレベルを越えてしまった。


 しかし……ここで止めてやらなければ、もっと大変な事になってしまうのだろう。


 山神様を抹殺するだけにとどまらず、この山を飛び出して……世界を支配してやろうと言う野望すら抱く事になって行く。

 今のカワ子なら、やる気になれば出来る所まで来ているからだ。


 もちろん、私はカワ子の野望を止めなければ行けない!


 精霊同士の世界戦争に端を発した世界大戦になど、させてはならないのだ!


『お前をこのまま放置すれば、いずれこの山はおろか……人間世界を巻き込んだ巨大戦争すら巻き起こるだろう……』


 答え、私はカワ子に構えを取ってみせた。


 この危険精霊は、今の内にどうにかしなければならない。


 山神様達はもちろん……もっと広い視野で考え、全ての精霊と人間の安寧を維持する上で。

 

『お前は、今、この場で……倒すっ!』


 私は強い意思を持って、カワ子へと叫んで見せた。




 ……と言う所で、今回はここまで!

 次回に続く!

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