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水の精霊達の逆襲【30】

 私とバアルにとっては初めての感覚で……尚かつ、ミズホさんにとっては初めてではない強力なエナジー。


 そうなれば……この、異様なまでの存在感を無駄に漂わせているエナジーの根元が何を意味するのか?……なんて、誰彼から聞くまでもない代物だと思う。


 ベルゼブブ印の商品を購入し、一万分の一程度の確率で本当に魔王レベルの能力を手に入れてしまった……実に傍迷惑なイタズラ精霊。


「……つか、単なる魔導器マジックアイテムで、ここまで変わるのかよ……」


 私は誰に言う訳でもなく呟いた。

 強烈なエナジーの存在は、私が感じる限りで未だ数キロは先にいる。

 それだと言うのに、この威圧感。

 もはや桁違いだった。


 これが、元はイタズラ程度の事しか出来なかった、無力にも等しい川の精霊だと言うんだから……バアル達が作り出した魔導器の性能がとてつもないと言う事が分かる。


 分かるんだけど……だ?


「おい、バアル? 元を正せば……お前の所にいる商社の社員が仕出かした事だろ? それなら、その責任は上司たるお前が取るべきではないのか?」


「申し訳ありませんリダ様! その件に関しては確かに自分達の落ち度がございます……ございますが? その理屈で言うのなら、リダ様の傘下である私の組織を上位組織の上司として引責すると言う理屈もまかり通りますよね?」


「……は?」

 

 バアルの屁理屈に、私は思わず口をぽっかり開ける。

 直後、バアルは素早く書類の様な物を私に提示して来た。

 ……本当、コイツの行動は無駄に早いから驚かされる。


 だが、私にとって真の驚きは、その書類に存在していた。


 書面に掲載されていた、社名は株式会社・ベルゼブブなのだが……まぁ、ここは良い。

 正確に言うのなら、株式会社を立ち上げてるのかよっ!? と、ツッコミめいた台詞を口にしたい所もあるにはあるが、ハエ軍団の規模が数万人単位なので……規模だけを見れば総合商社張りの規模になっていても不思議ではない。


 ちゃっかり一部上場してるっぽいけど、ここもツッコミは入れないで置こう。


 ポイントは次だ。

 株式会社・ベルゼブブは、世界冒険者協会に加盟しております。


 …………。


 私は絶句した。

 いつの間に人の組織の傘下に入ってるんだよ、貴様わぁぁぁぁっっっ!?


 私は頭を抱えた。

 そして、バアルの言う意味も理解した。


 ……冒険者協会に加盟している企業となれば、事実上の子会社みたいな物だ。

 そして、事実上の親会社である世界冒険者協会の会長は誰か?


 ……そう、私だ!


「リダ様は、名実共に私が立ち上げた企業の親でもあるので、リダ様が私にとって上役に値します。どうです? その理屈で行くのなら、責任の一端はリダ様にもやって来る事になるのですよ」


「…………」


 ああ、もう嫌だっ!


 してやったりな顔して言うバアルに、私は途方もないフラストレーションをパンパンに膨らませながらも、右手で顔を覆った。

 

 コイツ……最初から、問題を起こしたら私に尻拭いをさせるつもりだったんじゃないのか?

 もしそうであったのなら……とんだ悪魔だ!


 そこまで考えて、私は気づく。

 そうだよ! コイツは最初から悪魔だったじゃないかっ!?


 ガーンッ! って顔になって、心の中で絶叫するとか言う……なんとも間抜けな私がいた時、


「……リダ様、来ますよっ!?」


 バアルの声が甲高く響いた。

  

 刹那、


 シュバァァァァァッッッ!


 周囲に猛烈な旋風が撒き散らされる。

 恐らく、超高速移動によって撒き散らされた、ソニックブームの一種だろう。

 元来、物理的に考えれるのであれば、ここまで派手な事にはならないのかも知れないが、とてつもなく強大な魔力が超速移動を起こした事で科学的な物とは別の力学が発動し、周囲を吹き飛ばす程の衝撃波が、広範囲に渡って広がったんじゃないか?……と、予測される。


 どちらにせよ、強烈な旋風を巻き起こした張本人は、少女程度の小柄な精霊が引き起こした物だった。


 ……ああ、やっぱりお前か……カワ子!


 大きさこそ人間と大差ないサイズになっていたが、その外見は私が初めて見た時とそこまで変わりはない。


 強いて言うのなら、魔王みたいな服装をしていたり、右手に大仰な槍を持っていたりと、色々と異なる部分が点在しているが、根本的な所は同じだった。


 まぁ、飽くまでも外見『だけ』で物を言うのなら……だが。


 外見は、根本的にそこまでの大きな変化はなかったが……その中身は大違いだ。

 まるで別人……いや、そもそも比較する事すら不可能なのではないのか? と、本気で思ってしまうまでに、劇的な変化を遂げていた。

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