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水の精霊達の逆襲【28】

『貴様……何者だ……?』


 明らかに動揺の見られる声音で、私に尋ねて来る水の精霊王。


 この言葉に、私は笑みで答えてやった。


『ただの人間だよ』


『嘘を吐くなっ!!』


 そして、即座に否定されてしまった。


 ……なんでそこまで素早く否定する事が出来るんだろうねぇ?……この精霊様は?


『嘘なんかじゃないさ……強いて言うのなら、私は世界冒険者協会・会長様……って所だ。一応、会長ラスボスだけに、最強の冒険者を自負している』


『うるさい、黙れ! 結局はただの人間である事に代わりはないだろうっ!?』


『そうだな? 否定はしない?……だがな? 我が冒険者協会には人間以外の種族もいる。獣人や亜人、巨人なんてのも居る……まぁ、それらを引っ括めた上で、現時点で最強なのが単なる人間の私なんだがな?』


 やたら遠回しな講釈を垂れる事になってしまったが……極論を言おう。


 人間は、お前が考えている程……弱い生物なんかじゃない……って事だ!


『精霊王さんよ? お前は色々と勘違いしてる。どんな生物であろうと……例えば、基礎的な能力差のある龍とゴブリンであっても、精一杯努力さえすれば龍を倒すゴブリンになる事だって可能なのさ?』


 もちろん、あんたの様な強大な能力を持つエレメントであっても、純粋に強くなろうと努力した人間に負ける事だってある。

 少なくとも……今ある、この世界では可能なんだよ。


『まぁ、御託を並べるのはここまでにしよう……後は、口だけじゃなく……』


 ここまで答えた私は、右手拳をギュッ! っと握り、好戦的な笑みを作りながら再び水の精霊王へと口を開いた。


『拳で私の理論を証明してやるよ?』


『ほざけぇぇっ!!』 


 挑発気味に答えた私に、アッサリ触発された水の精霊王は、即座に両手を私に向ける。


 刹那、


 ドンッッッッ!


 先程から比較すると小さくはあるが……その分、魔力を濃縮させた巨大槍を産み出し、私へと飛ばして見せる。


 さっきのスキル無しだった私であれば、魔導防御を全力で張っても尚、防ぎきれないレベルではあったが、


「わからないヤツだな?」


 右手で一捻り。


 表現的に言うのなら、そんな行動だった。

 軽く右手拳に当てた瞬間に、巨大な水の槍が軌道を強引にねじ曲げられ、大空の彼方へと飛んで行ってしまう。


『…………』 


 水の精霊王は絶句した。

 余りに衝撃的だったのか、思わず視点が虚ろな状態になっており、ガクガクと身体を震わせていた。


 ……その時だ。

  

 ヒュンッッ!


 近くにいたバアルが超高速で動いた。

 残像が出来る勢いで動いたバアルは、ショックで目が虚ろになっていた彼女の顔面を鷲掴みにし、


 催眠状態解除魔法ハプノシス・キャンセル


 予め頭の中で紡いでいた魔法を発動させてみせる。


 ……え?

 てか、なんだこの魔法?


 何気に、魔導式と言うか……そう言った物の組み込みだけを述べるのなら、私にも十分理解可能な魔法だ。

 まぁ……だからと言うのも妙な話だが、今のバアルが魔法を発動させた事で、概ね似た魔法を私も使う事が出来るだろう。


 だが、そうじゃない。


 一見すると、私達が良く使ってる、極々一般的な魔導式を使っている様に見えるのだが……組み込んで来た配列と言うか……式の組み込み方が非常に斬新だ。


 こんな魔導式の組み込み方があったのか……と、無意識に口をポカンとさせてしまった。


 恐らく、これは……大悪魔たるバアルだからこそ可能なのだろう、特殊な魔導式なのではないだろうか?

 結局の所、お手本を見せて貰えれば『ああ、なるほど』と納得出来てしまえるし、それを真似る事はとっても簡単だ。


 しかし、それを編み出すとなれば話は百八十度異なって来る。


 俗に言う『コロンブスの卵』ってヤツだ。

 分かってしまえば、実に造作もない事ではあるが……何のヒントもなしに、ゼロからその手法を編み出せと言われたら、途方もなく難しい。


 それを、バアルは普通にやってのけた。


 私の使っている魔法なんて、苔の生えた古い魔法なんじゃないだろうか?

 この時代の魔導師達からすれば、バアルの使ってる魔法は最先端や近未来を通り越して、超過魔法オーバー・マジックなのかも知れないが……なんにせよ、大悪魔ってのは人智の上を軽く凌駕する、とてつもない魔法を使う存在である事だけは理解した。


 ……果たして。


 バアルの魔法を受けた水の精霊王は、


『……わ、私は……一体?』


 これまでとは大きく変化した声を、口から吐き出して来た。


 それは声だけじゃない。

 彼女の周囲にあった妙に剣呑かつ高圧的なオーラが消え失せ……それに取って代わるかの様に、清々しくも柔らかなオーラがやって来る。


 同時に私は悟った。

 ああ……このオーラが、元来ある水の精霊王のオーラなんだな……と。

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