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水の精霊達の逆襲【20】

「なぁ、セツナさん? この社には何か秘密が隠されているのか?」


 気になった私は、それとなくセツナさんに聞いて見た。


「………………何もないですよ?」


 何かあるな。

 無駄に開いた間が、それを無言で証明している。

 

「それにしては、少し焦ってないか? 目も泳いでいる様にも見えるんだが……?」


「そそそそ、そんな事ありませんよっ!? わ、私は至って平常心ですからっ!」


 私が知る限り、今のセツナさんが見せている姿は、平常心とは無縁の態度を取っている様にしか見えないんだが。


 まぁ……なんと言うか、嘘を吐くのが下手と言うか……素直と言うか。

 私の率直な気持ちで行くと……やっぱり好感を持ってしまう態度でもあった。

 嘘を吐いているのは分かっているんだけど、どうにも憎めなくなってしまう。

 少なからず……ユニクスの様に、演技派女優も真っ青な勢いでしれっと嘘を吐く様なヤツから比べれば、かなり好感が持てるな。


「ふむ。何を隠しているのか知らないけど……私達に話したくないのであれば、無理は聞かないよ」


 セツナさんの意思を尊重した私は、柔和に笑ってから口を動かしてみせる。


「…………」


 セツナさんは幾分か驚いた顔をみせた。

 そこから少し考える様な仕種を取る。


 ……?

 一体、何をそんなに考える必要があったのだろう?


 しばらくして、


「……リダさんは外部の人間であり、この山に住む者ではない事を考慮しておりました。何より……山神様の許可もなく口外すると言う事に関しても、私の口から申し上げる事は出来ない……そう、感じておりました」


 セツナさんは、私に問われるまでもなく、言えない理由を口にして来た。


 これに関して言うのなら、私は頷く事しか出来ない。

 確かに私はよそ者に過ぎないし……精霊ですらない。

 よそからやって来た人間が、勝手に山神の秘密を聞こうとしているのだから、セツナさんとしても易々と秘匿事項を口にする事はしないだろう。


 誰も居ない社を、わざわざ強力な結界を張ってまでして守ろうとしていたんだ。

 口外する事が憚れる秘密が隠されていたとしても、なんらおかしな事ではなかった。


 ……故に、私としてもこの質問は軽率であったかな? と、幾分かの後悔が思考に生まれていた。


 そんな時、セツナさんは笑みで私へと答える。


「だけど……私は思いました。よそ者であろうと……人間であろうと、今の私はあなた方に助けて貰っている……何より、山神様の窮地を前に隠し事があってはならないと」


 そう答えたセツナさんは、自分に言い聞かせる様な表情を取ったあと、意を決する形で再び口を開いた。


「この社には、山神様の半身が封印されているのですよ」


「……は?」


 秘密なのだろうセツナさんの言葉を耳にし、私は唖然となった。

 山神様は、分離する事が可能だと言う事か?


 仮にそうであるとすれば、物凄い魔導技術マジックスキルを所持している存在とも言える。

 

 一応、一部の神様や悪魔の場合は自分の分身を作り出す事が可能らしいのだが……言うなれば、これと同じだ。


「山神様は、己の危機に貧した時の為に、今の本体……魔狼の姿をしている今の身体とは別に、元々の姿をした自分をこの社に封印しました。同時に魂を二分化し……その半分をこの社に吹き込んだのです。よって、今の山神様が滅んだとしても、この社が破壊されない限りは山神様が完全に滅ぶ事はありません……むしろ、魔狼の肉体が滅んだ事で二分化した魂が元の一つとなり……更に、この社へと封印していた元々の肉体へと戻るだけとなります」


「……そう言う事だったのか」


 淡々と話すセツナさんの言葉に、私は深く頷いた。


 何もかもが合点の行く話だった。

 最初から、川の族長精霊がこの社にやって来た目的は、社その物を破壊する事だったのだ。


 だからこそ、境内へとやって来た私達を迎え撃ったのだ。

 私は山神様の半身が、この社に眠っている事など知らなかったが……当然、セツナさんは知っている事だろうし、激しい抵抗をするに決まっている。


 そして、激しい抵抗をする事をも想定とした……折り込み済みの計画でもあったのだろう。


 山神様すらも凌駕した川の族長精霊の能力を加味するのであれば、セツナさんが抵抗しようとも、アッサリと返り討ちにする事が出来ると計算しての事だ。


 ……ま、実際にはセツナさんだけではなく、私達も居たんだがな?

 しかし、それでも尚、私達もろとも社を破壊出来る……と、砂糖水より甘い考えを持った川の族長精霊が、堂々と私達に喧嘩を吹っ掛けて来た訳だ。


 流石はバカ精霊。

 やる事が短絡的過ぎる。

 そして無駄に自信過剰でもあった。


 これら諸々を考えれば……もはや『なるほど』と言う言葉しか出て来ない。

 

 しかし……そうなると、一つ問題が発生するな?

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