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水の精霊達の逆襲【10】

『じゃあ、話して貰おうか?』


 友好的な笑みを向ける私に、族長精霊は反抗的な瞳を見せつつも口を動かしてみせる。


『カワ子が……いや、カワ子様が新しい水の精霊王として御即位なられた。これによって私もカワ子様が持つ偉大なる力の一部を分けて貰う事になったのだ』


『……はぁ?』


 私の口がポッカリと開いた。

 意味不明過ぎて、返答すらどんな物を言えば良いのか困窮してしまう。


 カワ子が水の精霊王に即位だって?

 水の精霊ですらない、川の精霊をしてるカワ子が? 


『勘弁してくれよ族長さん。幾ら与太話にしても、もう少し現実味のある内容にしてくれないと……』


『真実だ。これが虚実だと抜かすのなら、もはや私の口から言える代物など皆無。それに、今の私が持つ水の力がどれ程の物であったのかなど、わざわざ私が言わずとも分かり切っておろう?』


 幾らなんでも無理があると言うばかりに答えた私へ……しかし、族長精霊は真剣な顔で私に言って来た。


 …………ぐむ。


 この族長は、かなり腹黒い内面を持つ、したたかな精霊ではあるんだが……今回に限って言うのなら嘘を言っている様には見えない。


 けれど……それにしても、にわかには信じられない話ではあった。


 水の精霊王は、基本的に力を持った水の精霊が、次世代の精霊王へと即位する。

 川も水に属した精霊ではあるが……言うなれば分派の様な物だ。

 水属性から枝分かれした精霊であり、水系精霊と言うだけの存在であって、決して直系でもある水の精霊とは似て異なる存在だ。


 余談だが、川の精霊には川の精霊王が存在し、序列的な物で言うと水の精霊王に仕える、一つ格下の精霊王だ。


 なので、これでもすこぶる不自然ではあるのだが、川の精霊王になったのであれば、まだ分からなくもない。


 所が、水属性の頂点とも言える水の精霊王になったとなれば……変哲だらけとなる。

 

 抽象的に言うのなら、メダカがシャチになった様な物だ。

 どんな突然変異が起こったと言うのだろう?


 しかし、仮にそうであったとすれば?


『水の精霊王は存命だろう? 勝手に水の精霊王を名乗る様な真似をすれば、元祖が黙っていないんじゃないのか?』


『当然、元・水の精霊王はカワ子様を咎めに参られた……なんと言っても、真の力に目覚めたカワ子様は、即座に元・水の精霊王へと宣戦布告のメッセージを飛ばしたのだからな?』


 えぇぇ……。

 どんだけアホな事をしてるんだよ、あのイタズラ精霊……?


 私からすれば、かなりの自殺行為にしか思えない。

 水の精霊王は……水属性の頂点に君臨している、文字通り精霊の王様だ。

 

 水属性の全てを統率しているので『精霊帝王』と表現しても良いレベルだ。


 そんな、桁違いの精霊王を相手に、どんだけ無謀な喧嘩を吹っ掛けているんだろう?……と、眉をよじらせながら聞いている私がいた所で、族長精霊は不敵な含み笑いを作りながら声を吐き出して来た。


『カワ子様の挑戦状を受けた水の精霊王は、無謀な事にもカワ子様へと反旗をひるがえした……くふふふ……真に愚かな話だ』


 愚かなのはどっちだよ?……そう言いたい話ではあるのだが、族長の精霊の口振りからすると、逆に水の精霊王を返り討ちにしているかの様だ。


『微力な力しか持たぬ、愚かな精霊王は物の数分もせぬ内にカワ子様の力に屈服し……今や、配下として私達の忠実なしもべとして働いておるよ?……くふふふ……馬鹿なヤツだ。己の力に過信し、何の策もなく堂々と単身で乗り込んで来たのだからな?』


 ああ、やっぱりそうなるのか。

 ……しかし、そうなると……今は、水の精霊王もカワ子にコキ使われる立場に成り下がっている事になるのか。


 本当、どうしてこうなった?


『一つだけ、どぉぉぉしても解せない事があるんだが……カワ子はどうしてそこまでの力を手にする事が出来たんだ?』 


 どうにも解せないのが、ここだった。

 私は神妙な表情で族長精霊へと尋ねる。


『詳しい事は私にも分からぬ……が、通信販売で売っていた、ベルゼブブ印の「魔王にナールDX」とか言う薬を買った……と言う話だけは聞いておる。この薬が関係しているんじゃないのか?』


『ベルゼブブ印の薬……ねぇ?』


 族長精霊の説明に、私は眉を捻りながら声を返し……ん? ベルゼブブ印の……だと?


 川の精霊が通信販売で物を買うなよとツッコミを入れてやりたい部分もあるが、それより何より注目すべきは、そのラベルだ。

 ベルゼブブ印のラベルだ!


 いや……まて?

 まさか……それって……?


 直後、私は即座にバアルへと目を向けた。


 果たして。


「さっきは痛かったね~? リダちゃ~ん? 大丈夫! 今度はしっかりと守って上げるよ~? 愛しのリダちゃんは、このバアルさんが絶対に守ってあげるからね~っ!?」


 バアルは、小芝居にも似た状態で鼻を伸ばしながら、私風味の謎人形と会話をしていた。

 今すぐ爆破してやりたいまでに気持ち悪いヤツめぇぇぇぇぇっっ!

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