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水の精霊達の逆襲【7】

「そ、そうですか……」


 私の説明を受けたセツナさんは、何とも微妙な表情になって一応の相づちを打っていたのだが、余談程度にして置こう。


 他方、超炎熱爆破魔法フレインダムドの直撃を喰らった族長精霊は、見事に目を渦巻きにして倒れていた。


 ……うぅむぅ……。


 やっぱり、かなりの能力強化が行われているな。

 さっきのバアルが放った超炎熱爆破魔法の威力は、どう考えても標的を灰塵に帰す勢いがあった。

 完全な直撃を受けたのなら、塵も残らない勢いで吹き飛んでしまう筈なのだが……実際は身体を真っ黒焦げにして目を渦巻きにする程度で済んでいる。


 明らかに能力が上昇していたのは分かっていたが……ここまでの飛躍的な超絶パワーアップは、余りにもおかしい……おかし過ぎる。


「どうやら、本人に色々と聞いてみるしかない模様だな……」


 眉を捻り、少し悩む感じの口調で私が声を吐き出した時……結局は避難する事なく近くにいるだけで終わってしまったフラウもまた、私の言葉に頷きを返していた。


「そうだね。どんな経緯があるのか知らないけど、一方的に仕返しをするって言うのも見ていて気分が悪いし……それなら、どうしてそうなったのかだけでも、その訳を説明して欲しいかもね」


 まぁ、確かにな?

 私が考えていた部分とは別ではあったが、フラウの言い分もごもっともだ。

 あわや根絶やしにされそうな憂き目に遭う寸前だったとはいえ、実際には寸手の所で事なきを得たのだ。

 それならそれで良かった筈だし、これ以上、騒動を大きくした所で双方にメリットがあるとは到底思えない。


 しかし、それでも川の精霊達は断行して来たのだ。

 もしかしたら、そこに何らかの理由が隠されている可能性がある。

 ……まぁ、そんな物がある様には見えないんだけどな?


 単なる逆恨みなんだろう程度のシンプルな路線を、既に心の中で構築していた私にとって、それ以上の理由を見出だす事は出来なかった。


『リダ様、すいません。まさか試験の最中だったとは知らず、そろそろお戻りになられるかと思って、先に馳せ参じました』 

 

 族長精霊が目を回して無力化したのを確認し、一応の事情でも聞いてやろうかと思っていた所で、バアルが私達の前までやって来る。

 どうでも良いが、どうして精霊語?


『バアルがくちょー、こんばんわ。お疲れでありますね』


 直後、フラウが合わせる形で精霊語で返事をしてみせた。

 だから、なんで精霊語? しかも、発音が悪いからエセ外国人みたいな事になっているんだが?


 そもそも、お疲れでありますね……ってなんだよ?


『おや、これは行けない。うっかり精霊語で話をしてたか。しかし、お疲れさまですと言いたいのかも知れないけれど、その発音だとお疲れでありますね……になってしまうので、ただ単に疲れているんですか? と言う問いかけみたいな台詞になってしまうぞ? 精霊語は発音とアクセントを間違えると、違う言葉になってしまう傾向にあるから、今後は発音練習をした方が良いかも知れないな?』


 フラウの言葉を耳にしたバアルは、少し苦笑する形で言って来た。

 きっと、少し窘める程度の気持ちで言ってはいたのかも知れないが、いつまでも精霊語を使う必要はないと思うんだが?


「え? そ、そうなんですねっ!?」


 そして、間違いを指摘されてフラウがガーンッ! って顔になっていた。

 得てして、発音と言う物は自分でも気付かない物だ。

 ……まぁ、人間の世界で生きているのなら、精霊語なんざ出来なくても問題はないので、そこまで気にするレベルの代物ではないのかも知れないのだが。


 ……てか、問題はそこじゃない。

 

「取り敢えず、まずは帰宅の出迎えに来てくれた事はお礼を言う。ありがとう。なんだかんだで空間転移魔法テレポートを使って戻れるのなら、それに越した事はないからな?」


 まずは、一応のお礼を口にする私。

 これにバアルは、はにかみ風味の微笑を浮かべて『いやぁ……リダ様の為なら、この程度の事など些末な事ですよ』的な事を言い、いつの間にか復活していた私っぽい人形を右手で握り締めていた。


 ……つか、その人形……復活するんだな。


 正直、私としてはバアルの右手に握られている謎の人形についても言及したい部分が山の様に存在していたのだが、その話をすると無駄に話が長引きそうだったので、敢えて口にしない事にして置いた。

 だけど、後で問い詰めてやろうとは思っている。


 そこはさて置き。


「実は、今……少しばかりおかしな事になっている。お前の右手に握られている人形ぐらいおかしな事がな?」


「おかしな事ですか? 私の右手に握られている、愛狂わしいリダちゃんと同じ程度のおかしさとは珍妙ですね? このリダちゃんには微塵もおかしな事はないと思うのですが……?」


 私の言葉に、バアルはかなり真剣な眼差しを見せて答えていた。

 コイツの頭には、キノコでも生えているのだろうか?

 胞子が脳内で増殖している位、終わっている台詞を臆面もなく言っている様にしか、私には見えないのだが?

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