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水の精霊達の逆襲【6】

 気持ちは分からなくもない。

 空間転移魔法テレポートは、人間の世界では完全なる禁忌タブーの魔法だ。

 基本的に人間は使う事すら不可能な魔法なのである。


 それをしれっとやって来たのだから、族長精霊からすれば唖然とするしか他にない。


 思わずポカンとなってしまう族長精霊がいる中、


「ああ、あれですか? 試験の敵役をしているスタッフさんですか? これはこれはどうも! 失礼しました」


 バアルはペコリと頭を下げていた。

 完全なる勘違いと言える。


 それでいて、かなり悠長な行為とも言えた。


 特大水グレートウォーター竜巻魔法タイフーン


 ペコリと礼儀正しく頭を下げた返事は、巨大竜巻で返って来た。


「うぉわっ!……っと、すいません! 試験の邪魔でしたよねっ!? 私も、まさかこんな試験をやっているとは知らなかったのでっっ!」


 竜巻がやって来て間もなく、バアルは叫びつつも慌てて避けて見せた。

 そして、ヤツの誤解は解けそうにない。


 バアルからすれば、現在の私達は魔導師組合で行われている上位魔導師の試験を受けている最中である筈なので、勘違いをしても全くおかしくはないんだけど……でも、そろそろおかしいなぁ? 程度は感じても良いのではないだろうか?


 ふと、私が心の中で地味に呆れていた……その時だった。


 巨大な水の竜巻を、ギリギリ避けたバアルであったが……偶然、右手の人形だけ竜巻の攻撃を受けてしまう。


 見た感じだと、純粋に手が掠ってしまった感じだ。

 しかし、水の竜巻が引き起こした威力は凄まじく……彼の右手に握りしめられていた人形は、巨大竜巻の渦に呑み込まれてしまった。


「ああああああっっっ! リダちゃん! 俺のリダちゃんがぁぁぁぁっっ!」


 ……その名前で、『俺の』とか言うんじゃないよ!


 ハッキリ言って気分が悪くなりそうだったので、その詳細を耳にしたいとは思わないのだが……私にも見えなくはない気がする人形が、水の竜巻に呑み込まれてしまった瞬間、バアルは魂の叫びにも近い咆哮を、心の底から吐き出していた。


 目からは、無駄に涙が流れていた。


 ……そして。


「そこの係員スタッフっ! よくも私の命であったリダちゃんを……マイハニーをボロボロにしてくれたなぁっ!」


 いつのまにか憤怒の形相になり……流れていた涙も血の涙に変化していたバアルは、鬼の様な形相を作って族長精霊を睨んで見せた。


『……な、なんだ?……コヤツ? 尋常ではない負のオーラと、殺意に満ち満ちた波動を感じるのだが……?』


 根負け気味になって口を動かす族長精霊の姿があった。

 

 正直言えば、私としても謎だ。

 むしろ、私的に言うのなら族長精霊にありがとうを口にしたい。

 あんな気持ちの悪い物を廃棄してくれたのだから。


『なんだ? 精霊だったのか? なら、こっちの言葉で言ってやろう?……例え、魔導組合のスタッフであろうと……今の所業は万死に値する!』 


 やや腰が引けた状態になっていた族長精霊を前に、怒りが頂点に達していたバアルが右手を向けた。


 超炎熱爆破魔法フレインダムド


 ドォォォォォォォンッッッッ!


 尋常ではない超爆発が起こった。


 つか、お前も使えるのな?

 ……いや、まぁ……魔力的にも魔法を使いこなす技術的にも、バアルの能力なら余裕で使えるレベルの魔法ではあるんだけどさ?


 そして……思った。


 バアルのヤツ……腕を上げて来たな。


 以前……ニイガで初めてバアルと顔を合わせた時……色々な成り行きから私とのタイマン勝負になったのだが、その当時のバアルは私のスーパードラゴン呼吸法ブレイズレベル1で、早くも負けを認めていた。


 簡素に言うのなら、その時点で戦うまでもなく段違いの実力差が存在していたのだ。

 

 だが、どうだろう?

 今のヤツが放った超炎熱爆破魔法は……補助スキルを発動させた私と同等か、それ以上の威力を当たり前の様に見せていた。


 実際に戦ってみないと分からない部分も多いが……現状のバアルは、超龍の呼吸法レベル1状態の私と同じか、少し上回る実力を誇示していた。


 何処でどんな修行を積んで来たのかは知らないけど……どうやら、コイツもコイツなりにしっかりと精進を続けていた模様だ。


「あ、あれは……何です? 人形を持った変な少年にしか見えなかったのですが……? 違いますよね?」


 そうと私に尋ねて来たのはセツナさんだ。

 セツナさんは愕然と呆然を合わせた様な表情で、私へと尋ねて来る。


 この言葉に、私はニッコリと笑顔で答えた。


「違わないよ? あれは人形マニアがこじれた、変態人形マニアの末路だ。元来のマニアは、あそこまで変人にも奇人にもならないけど……きっと、道を履き違えたんだと思うよ?」


 笑みのまま答えた私は、それこそが真実だと疑う事なくセツナさんへと説明した。

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