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水の精霊達の逆襲【3】

「……知ってるの?」


 族長精霊を見て驚く私に、フラウが少しだけ不思議そうな顔になって声を掛けて来る。


「キャンプの時に、アリンやメイちゃんと一緒に川の精霊に頼まれて山の方に行った時があっただろう? その時に少しだけ顔を合わせた事があったんだよ」


「ふぅ~ん。なるほどねぇ……だから、精霊語を話してるのか」


 私の言葉を聞いたフラウは一定の納得を見せて返答をする。

 けれど、まだ解せない部分がある……そんな顔をしていた。


 実際、私としても腑に落ちない部分はある。

 何度も重複する様で申し訳ないが、やっぱり川の精霊達がやっている事はやり過ぎだ。


 実際に全滅させられたのならまだしも、実質の実害はゼロだったのだから、それで引き下がるべきだったのだ。

 むしろ、ここで報復をすると言う事は、何もされていないのに仕返しをすると言う……実に珍妙な行動に出た事と同義語になってしまう。


『なぁ、川の族長さんよ? アンタはどうして山神様を襲ったんだ? 報復なのか? もしそうなら、少しやり過ぎじゃないのか?』 

 

 私は少し抗議する口調で声を吐き出してみせる。

 すると、含み笑いのまま、族長精霊は声を返して来た。


『結果はどうあれ……我々、川の精霊を根絶やしにしようとする意思を持った事だけは事実。相応の罪を求めて何が悪い? 謝罪だけで済むのなら、最初の時点でそうあるべきではなかったのか?』


 ……答え、完全な喧嘩腰で私達へと右手を向ける。

 同時に魔導式を発動し……って、これはマズイ!


「みんな! 私の周囲に集まれ!」


 私の掛け声と同時に、川の精霊が魔法を発動させた。


 特大グレートウォーター竜巻魔法タイフーン


 ゴォォォォォォッッッッ!


 水で出来た強靭な竜巻が発生し、私達を呑み込む勢いで突き進んで来る。


 間髪入れずに私の魔導防壁が完成し、どうにか周囲にいる味方を守り抜く事が出来たのだが……。


 メキメキィ……ガコォォォンンッッ!


 周囲にあった木々は水の竜巻によって根本から抜かれて、派手に倒壊して行く。

 境内の方は、建物自体にも結界を張っていたのか? 然したる損傷を受けてはいない模様だが、これはちょっと頂けないな。


「川の精霊……って、リダに助けて貰った精霊じゃなかったの? どうしてこんな事になってんの……?」


 私の掛け声と同時に、素早く後ろへと待避したフラウが、全く理解出来ないと言うばかりの顔になって声を掛けて来た。

 この問い掛けは、私にするべきではないな。

 私だって事情を聞きたいぐらいなのだから。


 しかし、川の族長精霊の口振りから察するに……単なる逆恨みから来ている様にしか思えない。

 そうなのであれば……私は全面的に山神様を助ける方に回るしかないな!


「詳しい事は、私にも分かっていない……だけど」


 ここまで答えた私は、川の族長精霊へと睨みを向け、


 スーパードラゴン呼吸法ブレイズレベル1!


 補助スキルを発動させると、


「どっちがふざけた事をしているのかって言えば、間違いなくアンタだ……川の族長さんよっ!?」


 答えてから、川の族長精霊に向けて構えを取ってみせた。


 ブォワァァァァッッッ!

 

 刹那、私の身体から溢れ落ちたエナジーが衝撃波として周囲に発生し、


 ゴゴゴゴォォォォッッ!


 もはや、お決まりになりつつある地鳴りが出現する。

 毎度、こんな事ばかりやっていると、街中ならご近所迷惑も甚だしいとは思うが……ここは人里離れた山の中だ。

 ちょっとぐらい多目にやっても大丈夫っ!


「はわわわ……アリンちゃんの時と言い、今と言い……あなた達は歩く天変地異なんですかっ!? 本気で勘弁してくれませんかっ!?」


 直後、近くにいたセツナさんが何か言ってた気がしたけど、聞こえない事にして置いた。


 そんな些末な事より、今は眼前にいる川の族長精霊だ!


『ほうほう? よもや、この私に楯突くつもりであったとは?……やはり人間と言うのは知能と言う物がないらしい……ふふふ、良いぞ? 粗暴な獣には調教が必要だ。丁度遊んでやろうと思っていた所でもある……存分にあらがうが良いわ!』


 直後、族長精霊は再び右手を掲げ、次の魔法を発動させようと魔導式を頭の中で紡ぎ始める。


 ……おかしい。


 私が知る限り……この族長精霊には、こんな力があったとは思えない。


 そもそも、こんな能力が備わっているのであれば、山神様の怒りを買った時点で、即座に対抗して来る筈だ。


 しかし、実際に行ったのは仮設の集落を作り、全員で隠れていた。


 山神様の力に怯えて雲隠れをしていたのだ。

 所が現在の川の族長精霊はどうだろう?


 私の補助スキルを発動させた状態であっても、全く怖じ気づく様子が見られない。


 初めて会った時は、補助スキルはおろか、補助魔法を発動させてすらいなかった私達を見ても、臆病風に吹かれて逃げ出そうとしていたヤツが、だ?

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