上位魔導師になりたくて!・最終試験【18】
但し、現状ではまだ試験開始から精々二~三時間程度。
制限時間と言う訳ではないが、二十四時間のサバイバル生活はまだ始まったばかり。
残り二十時間はあるだろう現状を踏まえれば、まだまだ挽回の予知は大いにあると思っている。
「まだ焦る時間じゃないぞフラウ。チェックポイントも、ここが最初の場所でもあるし、制限時間的な意味でもまだ折り返しにすら到達していないんだからな?
むしろ、開始二時間程度で早くも上限点に到達しているルイン達の方が凄いのだ。
そんなルイン達だって、合格点に到達しているからと言って、それにあぐらを掻いても居られない。
ふとした事から大減点を連続で喰らえば、たちまち不合格圏内まで叩き落とされてしまうのだ。
今後は、なるべく貯金点となる加点を取りに行きつつも、減点対象にならない行為を心掛けなければならない。
これはこれで大変だろうし、精神的にも気が気ではないだろう。
今は合格点でも、いつ何処で不合格点まで叩き落とされるか分からないのだから。
「どちらにせよ、まずは合格点を目指して頑張って地道に頑張って行こうか? それでもダメだったら……オロオロと狼狽える事にしよう。その時は、私も一緒になって焦ってやるから」
「一緒になってオロオロしちゃダメじゃんっ!……だけど、そうだね? まだ焦る時じゃない……まだ、やれる……地道にコツコツやってけば、合格点まで持って行ける! それも間違ってないんだ」
フラウは両手コブシをギュッ! っと握りしめ、自分に言い聞かせる様な仕草をしながらも口を動かして行った。
「そうです、フラウさん。まだ大丈夫! 微力ながら、私もフラウさんの合格をお手伝いさせて貰います。だから、頑張りましょう!」
そこで、近くにやって来たルインが笑みでフラウへと答えた。
間もなくして、隣のメイスも友好的な笑みを作りながら付け加える形で口を開く。
「そうだぜ、フラウちゃん? 一緒のパーティーになったのも何かの縁だ。同じパーティー同士、困った時は助け合いの精神で頑張ろうぜ?」
「二人とも……ありがとう!」
暖かな感情を表情と言霊に乗せて来たルインとメイスの二人を見て、フラウは思わず目頭を熱くさせる。
昨日の敵は今日の友。
先日の戦いでは互いにライバル同士と言う事で戦いこそしたが、心から憎しみ合っての事じゃない。
本当は、今の様に……同じ志を持つ仲間として、互い協力したいと考えていたのだ。
だからこそ、ルインもメイスもナチュラルな笑みをフラウに見せる事が出来るし、心からフラウを助けたいと言う意思を態度で示す事が出来るのだろう。
そんなフラウ達を見て、タマコまで感化されてしまったらしく、少し瞳を潤ませてみせた。
「何て美しい友情なのでしょう? こうして新しい親交が生まれて、互いに仲良しこよしな関係が構築され……その数年後にどちらかが結婚して『あれ? あんたまだ結婚してないの? もう良い年なんだし? いい加減結婚ぐらいして置かないと、一生独身になるよ? 売れ残りを相手にしてくれる男なんてさ? よっぽど女に飢えてるヤツか、気の迷いで結婚しちゃう無計画な男だけだし?』とか、遠回しな嫌味と言う名の助言を貰う事になるのね?……ふふふふ! そうならない事を祈るわ……頑張って! フラウさん!」
「なんで私なんですかぁぁぁぁぁっっ!?」
最終的にはフラウの肩をポンと叩いていたタマコがいた。
そうな? 現状を考えるとルインにはメイスがいるんだから、順当に行けばルインの方が先に結婚して、こんな嫌味ったらしい台詞を高飛車に語る時が来るのかも知れない。
知れないんだけど、大きなお世話な気がする。
「どうでも良いのですが、タマコ試験官? もしかして……さっきの小話に出て来たくだりは、経験談による実話ですか? もしそうであるのなら……叫んですいません」
「ちょっ!? ち、違うからねっ!? 待って? 私がいき遅れで、未だに相手が居ないまま独身してるとか……勘違いよっ!? 私にはちゃんと、三匹の猫が家族として居るんだから!」
やっぱり独身じゃないか。
ふためくタマコがいた所で、周囲の表情にちょっとした同情にも近い空気の様な物が生まれていた。
「だ、だから! そう言うの止めてくれないっ!? わ、私は自分に不釣り合いな男とは、そうそう簡単に付き合うとか結婚とかしたくないと言うか……そう言う事だから! ちゃんと、私に相応しい相手が出来たら、すぐね? こうぅぅ……ぽぉ~んと結婚しちゃうんだからっっ!」
周囲に生まれた、妙に生暖かい視線に晒され……とうとう半べそになっていたタマコが、かなり意固地になって叫び声を上げていた。
謎の大爆発が発生したのは、そこから間もなくの事だった。




