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上位魔導師になりたくて!・最終試験【16】 

 普通にビックリする様な事を平気でやる女だな……。


 想定外としか他に表現出来ない事をやって来たタマコに、つい唖然となってしまう中……オリジナルタマコに殴られた試験精霊はおもむろに吹き飛んでは、


 ガンッッッ!


『ぶべらぁっ!』


 近くにあった大木に顔面をぶつけていた。


 直後、怒り心頭状態だったオリジナルタマコが、大木に顔面を痛打させてズルズルと地面に落ちて行った試験精霊まで足早に近付くと、


「試験精霊・タマコ十二号っ! 貴様は殺処分されいのかっ!? 今のは相手が冒険者協会の会長云々の前に、我が魔導師組合の一員としてあるまじき不当な行為だっ! 恥を知れっ!」


 語気を荒げて喚き散らす。

 私的に言うのなら、そう言うお前も大概な態度を私に結構やってくれたと思うんだが、どうだろう?


 新鮮な鶏卵が食べたい理由で平然と遅刻したり、私に失礼な言動をしれっと言ったりと、中々に草の生える態度を連続でやらかしてくれた記憶が、私の脳裏をグルグル回っている。

 ……だが、ここでその話をするのは無粋だろう。


 少なからず、次に取ったオリジナルタマコの態度は、私に対して一定の敬意を持った接し方であったからだ。


「大変失礼致しました! ここでの加点・減点は、二つのコンビにそれぞれ加点30と言う形にし、このバカが減点した分は無効とさせて頂きます! 試験精霊・タマコ十二号! 貴様も謝れ! 私が爆破される前に! 爆破された事で、貴様を私が消す前に、早く!」


『すいません、すいません! ごめんなさい! 本気で謝るので、許して下さいぃぃぃっ!』


 その後、母親に激怒されて消沈した子供の様に、オリジナルタマコからのゲンコツを喰らった試験精霊は、かなり必死になって私達へと土下座をかます羽目になって行くのだった。




     ○◎●◎○




「結局は、リダの会長的な権力でゴリ押しするんだよね……まぁ、良いんだけどさ」


 数分後、嘆息混じりになって呆れ眼を私に向けるフラウがいた。

 

「仕方ないだろ? あんな糞みたいな性根を持つ精霊……根性を叩き直してやらんと気が済まないしな!」


 呆れ眼で見て来るフラウに、私は猛然と抗議する形で反論すると、苦笑混じりのルインが私をフォローする形で口を開いて来た。


「確かに、さっきの精霊はやり過ぎでしたね? 私もあの精霊にどんな呪いを掛けるべきかで模索してましたし……」


 でも、何処か根暗で殺伐とした台詞だった。

 私の言葉に賛同している台詞だと言う事は承知出来るのだが……どうにも相づちを打ちにくい台詞ではあった。


 他方、その頃。


「この度は、本当に申し訳ありませんでした……私の作り出した試験精霊には、きつぅぅぅぅく叱って置きました! もちろん、今後はこの様な不躾ぶしつけな対応をさせない様、他の試験精霊にはしっかりと言い聞かせ置きます……置きますので、超炎熱爆破魔法を私に発動させるのは許して下さい!」


 タマコが深々と頭を下げて、私に許しを求めて来た。


 私は彼女に緩やかな微笑みを向けた。


「大丈夫だ、安心しとけよ……タマコ? 私だって子供じゃないんだ? 今回の一件はお前の顔に免じて不問にしてやろうじゃないか。超炎熱爆破魔法は、この試験が終了してからお礼参りとして一発かますだけだ。今のお前に出来る事は、死なない事を祈れ」


「そうですか……それを聞いて安心…………出来ませんからぁっ! 結局、一発は食らうんじゃないですかっ!? あの超魔法は死にますからっ!? 一発で即死とか余裕ですからっ! 本気で勘弁して下さいよぉぉっ!」


 タマコは瞳から物凄い勢いで涙を流して叫んでいた。


 残念だが……ここだけは私も譲れない。

 私達のコンビ名を『胸無し』と命名した罪は重いんだよ。


「それよか、タマコ? 一つ気になる事があるんだが?」


「はいはいはぁ~い! 何でも言って下さいねぇ~っ!? あ、でも試験の水増しとか不正行為はダメですからね?」


 やたら愛嬌のある……つか、不気味にすり寄って来るタマコ。

 

「その態度はよしてくれないか? 気持ち悪い」


「はわっ! こ、こんなに綺麗なのにっ!? 組合では美人のタマコで通っているのにっ!」


 知らんよ、そんな話。

 無駄にガビーンッ! って顔してるタマコがいたけど、私は気にせず口を動かした。


「私達の持ち点と言うか、現在の得点を知りたいんだが……出来るか?」


「え? 現在の得点ですか? その程度の事なら、皆様の頭上にいる採点精霊のタマちゃんが教えてくれますよ? 試験前にその様な説明とかはありませんでしたか?」


「なかった」


「……そうですか。これは後で他の試験精霊達にも注意をしないと行けないですね。しっかりと折檻……もとい、注意してあげないと…………あ、失礼しました。それで、現在の得点でしたよね? そちらは私の方から説明します」


 タマコは朗らかな笑みを緩やかに浮かべて答えた。

 途中……情緒不安定なサイコパスめいた表情を少しだけ見せていた様にも見えたけど……見なかった事にして置いた。

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