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上位魔導師になりたくて!・最終試験【15】 

 ドォォォォォォンッッ!


 試験精霊の号令と同時に、マンティコレは爆発した。


 今度は試験なのだから、問題はないだろう?


『………………え?』


 開幕一秒……あるかないかで、爆破されてしまったマンティコレを見て、試験精霊の目がテンになってしまった。


 そこから、金魚の亡霊が憑依して来た様にパクパクと口を動かす。


 他方、あれこれ説明して来たマンティコレだったが、前振りの内容以上のアッサリ具合で爆破されてしまい、現在は早くも虫の息状態であった。


 持ち前の強靭な生命力もあり、どうにか一命を取り留めてはいるが……この時点でまともに四肢を動かせる状態ではないだろう。

 勝敗は、もう既に確定していると見て良い。


「採点は幾つだ? 基本の加点10の他にちゃんと『魔法で』始末してやったぞ? しかも一発な上に秒殺だ。これは加点を期待しても良いんじゃないのか?」


 ひたすら金魚の真似事をしていた試験精霊へと、私はニヤリと微笑んでみせる。


『……そ、そそそ……そうですね! こ、今回は特別加点として30を追加しましょう! 胸無しには加点30。モノクロコンビには加点10を進呈します』 


 ルイン達には加点10しかくれないのかよ。

 地味にケチなヤツだ。

 しかしながら、倒したのは確かに私達、胸無しコンビ……いや、間違ってないけど、このコンビ名はそろそろ本気で勘弁してくれないだろうかっ!?


 ともかく、声が裏返った状態で、完全にビビった態度を露骨に見せていた試験精霊。

 

「ところで、試験精霊タマコ? お前は何号だ? 是非ともお前のオリジナルにお礼したい。超炎熱爆破魔法と言う、とびっきりのお礼をな?」


『え?……あ、いやぁ……その? 冗談ですよね?』


「冗談? あはは! こりゃ傑作だなぁ? 私の目が冗談だと思うか? この試験とか関係なく、ここまで私をコケにしてくれたんだからな? 大事な事だから二度言うが? 試験とは関係なく、相応のお礼をするのは当然だろう?」


『はわわわっ!……や、やめなさい! 減点しますよっ!?』 


「そう言えば、私が素直に謝ると思ったのか?……すいません、謝ります」


 必死になって叫ぶ試験精霊が、伝家の宝刀とも言える『減点しますよ!』を叫んだ直後、私は知った事かと爆破してやろうと思ったが……間もなく、他のメンバーが見せた白い目を見て、すぐに頭を下げてみせた。


 この癇癪が原因で不合格になるのだけは勘弁して貰いたいのだろう。

 ……そ、そうな。

 そこは……うん、私もちょっと感情的になり過ぎた。


 素直に頭を下げた私がいた所で、試験精霊は少し面食らいつつ、


『はは……あはは! 最初からそう言う、従順な態度をすれば良いのです! 良いですか? 権力に楯突く試験者ほど、愚かな行為はないんです。今後は悔い改めなさい?』


 次の瞬間には、高慢知己な態度を復活させていた。


 ……やっぱり、こいつの性根は腐り撒くってるな!


「権力を口にするか? それを普通に言って良いと思っているなら、こっちにも考えがあるんだが?」


『は? 強がりを言うにしても、もっとマシな寝言を言いなさいな? あんたらは私の試験を受ける試験者。この試験の合否を決める権威を持つ私にどの口を利いていると言うのか?……全く、礼儀知らずの無礼者と会話をしていると疲れて仕方ないですねぇ~?』


 更に余裕が出て来たのか? 嘆息混じりに笑みまで作って来た試験精霊がいた所で、私が自分の冒険者カードを見せた。


『それがどうしたって言う……の?』


 そこで試験精霊は固まる。


 冒険者協会・会長の証しとも言える冒険者カードの複製を見て。


「権力を翳す愚か者は、権力によって痛い目を見る。お前の傲慢さは目に余るんだよ? 今後、同じ様な態度を取り、試験官である権利を乱用するかのような理不尽さを一度でも見せてみろ? お前らの組合に遺憾の意を伝えて、相応の処分をさせてやるからな? 覚悟しとけよ?」


『そ、それだけはっ!……わ、分かりました! 分かりましたから……処分関連だけは、どうかお止め下さい、バ会長!』


 ワタワタとふためいた試験精霊は、すかさず頭をペコペコと下げて来ては私を必死で宥める様な台詞を口早に吐き出して来た。


 うむ! 分かれば良い!


 本当はこんな事をしたくなかったが、コイツが職権乱用して来たのには業を煮やした!

 泣きつく真似をする羽目になったのは、身から出た錆だと思い知れ!

 どうかお止め下さい、バ会長なんて言うに至るまでの態度が問題……ん? なに? バ会長だとっ!?

 

 よぉぉぉし! 良く言った!


「今のはしっかりと言質げんちを取ったからな? 魔導師組合が冒険者協会の会長を罵倒した事を、後で後悔するんじゃ……」


 ないぞ!


 ……と、言おうとした直後、


「こぉぉんの、ボンクラ精霊がぁぁぁぁっっ!」


 物凄い勢いで空から飛んで来た一人の魔導師が、試験精霊を尋常ではない勢いで殴っていた。


 ……てか、もしかして魔導師組合の宿舎から飛んで来たのだろうか?

 そんな事を思わず胸中で考えてしまう様な人物……オリジナルのタマコが、上空から音速にも匹敵する勢いで飛んで来ては、勢いそのままに試験精霊をぶん殴っていた。

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