【6】
私の予測が間違ってないのなら、ユニクスはきっと……多くを知りすぎた。
簡素に言うのなら、ぼちぼち口を封じないと面倒な存在になる。
その口封じの時期が……もうすぐやって来る。
もう悠長に事を構えてる場合じゃない。
「悪いけど、今回はマジでやらせて貰うぞ?」
顔を引き締めた。
「………」
ユニクスは絶句する。
もしかしたら、もう戦意を喪失していたかも知れない。
上位スキルに補助魔法の重ね掛けまでされたのだから、圧倒的な実力差があるのは、もう口にするまでもない。
しかし、だ?
フラウの事もある。
あいつをあんな目に遭わせた報いは受けないといけない!
あんな……なぶる様な真似なんかしなくても良かった筈だと言うに、あいつはもう抵抗出来なくなっていたフラウを何回も何回も殴ってた。
それも、よりによって顔面ばかりを執拗に……だ!
許せない……当然、その代償は高く付くからな?
そして、何より……私はお前を絶対泣かすと決めていた!
「いくぞぉぉっ!」
私はユニクスの眼前まで来た瞬間、二人になる。
正確には残像なんだがな。
二人が四人、四人が八人……まるで分身したかの様に私の残像が増えて、
ドガガガガガァッ!
その残像の全員がユニクスに連脚を浴びせる。
残像連脚!
三百六十度、全ての角度から連脚が飛んで来る、私オリジナルの必殺技……と、言った所だ。
元々は、高速で移動しながら超速連脚をやっていたら、いつのまにか残像に変わっていた。
全ての角度で逃げ道を与える事なく文字通り八方からの攻撃。
それが、残像連脚と言う事になる。
この攻撃を喰らって、今まで立っていた人間はいない。
いや、全くのゼロではないか。
みかんとか、イリとか、その位かな?
けど、あいつらは歩く反則みたいな物だし、数にいれなくても良い気がする。
当然、ユニクス程度の実力では、私の必殺技を喰らって立っていられる術もなく、悲鳴を上げる事すら出来ないまま、床に倒れる事しか出来なかった。
「あ、あうぅぅ………」
ピクピクと痙攣させ、床に倒れ込んでいたユニクスは、口から泡を吐いて呻き声を上げていた。
辛うじて気を失ってなかったか。
それはそれで称賛に値するぞ。
「勝者・リダ」
完全に立ち上がれない事が確認され、救護班が急いで治療魔法を掛けた所で、私の勝利は確定したのだった。
●○◎○●
一時間後、剣聖杯の閉会式が始まる。
それにしても、ここの治療スタッフは本当に優秀だな。
ちゃんと戦えるかどうかは分からないが、一応ユニクスも閉会式に出席していた。
余談だが、決勝戦が終了した直後にフラウとルミの三位決定戦が行われた。
奇しくも学年予選と全く同じ二人がそのまま本戦でも同じ三位決定戦で戦う事になった。
結果は、ギリギリながらフラウが勝利。
これで、前回との対戦結果を合わせると一勝一敗と言う事になるのかな?
そう考えると、この二人はいい好敵手と言う事になる。
うん、いい感じなのかも知れないな。
閉会式が始まり、優勝者及び入賞者に記念トロフィーやメダル、賞状等が授与され、周囲からの拍手を受けながらも、聖剣杯は幕を閉じて行くのだ。
しかしこれは、単に大会が終わっただけに過ぎない。
私にとっての本題はむしろこれからと言うべきだ。
閉会式が終わった十分後、私は事前に呼び出していたシズを含め、ルミ、フラウ、パラスの四人とユニクスを合わせた五名と一緒に、大会の選手控え室にいた。
シズを呼んだのは他でもない。
この選手控え室に強力な防御結界を張って欲しいからだ。
基本剣士のシズだが、実は一部の補助魔法と超強力な結界を張る事が出来たりもする。
その能力は凄まじく、結界を一度展開すれば全ての物をシャットアウトする事が可能になる。
例えば、街を一瞬で破壊してしまうような魔法とか攻撃方法があったとしても、シズの結界はビクともしない。
ただ、一見すると完璧な防御壁にも見えるが、欠点もある。
この結界を張っている間、本人の行動が大幅に制限されてしまうと言う事だ。
一応、動く事は可能なのだが、戦闘が可能な激しい動きは不可能と言っても良い。
簡素に言うのなら、このバリアをシズが張ってる間は、シズは戦闘に参加する事は出来ず、完全な防御役になってしまうと言う事だった。
だが、しかし。
防御力と言う一点だけで言うのなら、私の張る見えない壁など、比較にならない位に強力だ。
そこで、今回はユニクスの安全を確保する目的の為にシズを呼んだ。




