上位魔導師になりたくて!・最終試験【8】
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私とフラウのコンビと、今回はお互いに協力する事になったルインとメイスのコンビは、ファイナルタマコの号令と同時に魔導師組合の敷地から外に出る。
そこから直ぐに、各自が持っている地図とにらめっこしながら歩を進めていた。
一見すると……特段、当てもなく歩いている様にも見えるが、当然ながらそう言う訳ではない。
まずは、地図に印されているチェックポイント巡りをする所から始める様になったからだ。
魔導師組合が作成した地図らしく、チェックポイントの印しは、仄かに魔法によって生成された光が使われている。
初級の光魔法なのだろうそれは、ご丁寧な事にも現在地……つまり私達の位置までしっかり印されていた。
まぁ、これはこれで助かる話だな?
ただ、同時に監視されていると言う事になるので、私的にはあんまり気分の良い代物ではなかった。
正確に言うと、今後の採点をする為に加点・減点対象となる物を逐一監視しているエレメントの様な物が存在していた。
これは、特に隠している訳ではなく、私達試験者の目にもちゃんと分かる様に出来ている。
さっきから、人数分だけ各自の頭上あたりをフヨフヨと浮遊している謎の玉みたいなのがそれだ。
この玉が私達の情報を魔導師組合へとリアルタイムで転送し、情報を共有している。
現在ある地図の現在地表示も、魔導師組合と情報を共有する事で可能にしているのではないかと思われる。
二度言う様で恐縮だが……逐一、監視されていると言うのは余り気分の良い物ではない物の、地図の現在地を表示してくれるなどの利点も存在しているので、取り敢えずはヨシと言う事にして置いた。
そんな事よりも、今の私達が考えなければ行けない事は、チェックポイントへのルートだ。
見る限り、最短ルートを通れば一時間も必要としない内に、最初のチェックポイントへと向かう事が出来るみたいなんだが……。
「このルートは……何となく、嫌な予感がするんですよね……」
そう答えたのはルインだった。
答えたルインは、私達がこれから進もうとしている最短ルートの位置を、自分用に用意されていた地図で示しつつ、表情をやや曇らせながら口を動かしていた。
すると、隣にいたメイスも少し眉を寄せてから頷いた。
「……なら、素直に回避して置いた方が無難だな」
やたら無条件にルインの言葉を信じてる気がするんだが?
私的には、どうしてルインの言葉を、そこまで鵜呑みに出来るのかで不思議な気持ちになってしまった。
何となく、嫌な予感がする……とか言う、大雑把過ぎる理由で簡単にルート変更をしていたら、行くルートが無くなってしまう気がするんだが?
何とも珍妙な会話をする二人を前に、フラウが苦笑混じりになって答えた。
「……嫌な予感って、どんな風な物?」
そうなるよな?
まさに、私も同じ事を考えていた所だ。
思った私は、間もなくフラウの言葉に賛同した。
「そこは私も同意見だ。別にルインの言っている事を不審がっている訳ではないんだが……せめて、もっと具体的な理由を提示しては貰えないだろうか?」
「えっと……その……はい、すいません……でも、私もぼんやりとしか分からないんです。普段はもっとクッキリと、明確に分かるんですが……」
私の質問に、ルインは答えてからペコペコと何回も頭を下げて来た。
本当に低姿勢過ぎて、普通に会話をするだけでも気が引けるヤツだな……。
「頭は下げなくて良い。ともかく、ぼんやりと危機がある事だけは分かるから、やめて置いた方が良いって事か?」
「そ、その…………そうです、はい……」
二度尋ねた私の問いに、ルインは消え入りそうな声音で返答する。
元から覇気とは無縁の語気だったのだが、更に尻窄みに声量が落ちて行ったので、後半など蚊の鳴く音より低くて、良く聞き取る事が出来なかったぐらいだ。
私と戦闘してた時の、妙に堂々としていた時のルインは何処に行ってしまったと言うのだろう?
もしかしたら、ルインと言う女は本当に二重人格者なんじゃないだろうか?……と、妙に勘繰る私がいた頃、苦笑いのまま『抑えて抑えて』と言う感じのジェスチャーを見せるメイスが私達へと声を出して来た。
「ルインの臆病さは……まぁ、見ての通りでね? 本当、些細な事にも卒倒するんじゃないかって勢いで驚く腰抜けっぷりでさ?……あだぁっっ!」
ルインの説明をしていたメイスは、そこでいつの間にか手にしていた杖で、ルインに後頭部を殴られていた。
ビクビクした態度を取っている割りには、随分と大胆な事をして来る物だと、少し私とフラウの二人が呆気に取られていた。




