上位魔導師になりたくて!・最終試験【4】
だが、私は言いたい。
「そんな事は、今更聞かなくても知ってるぞ?」
「そうだねぇ……それに、私達って初日はそこでキャンプしていた位だし」
私の言葉にフラウもコクリと頷いては、一昨日の話しを口にしていた。
『……は? おたくら、バカなんですか? あの山の中でキャンプ? 正気の沙汰ではないと思うのですが……私の考えの方が間違っていたりします?』
ファイナルタマコはドン引きしてた。
悔しいが……その通り過ぎて言い返せない。
実際、これだけ立派な建物があると言うのに、わざわざ凶悪なモンスターがいるのを知ってもいたのに……しかし、呑気な事にもテントを張ってキャンプをしていたのだ。
つまり、バカと言われても文句の言えない事をしていた。
「そうな? うん……私もバカだと思う。そこは否定しないし、否定する奴は本気で正気の沙汰ではない。そこも認める……認めるんだが、それでも言いたい。世の中には、世間では狂人のやる事だと説明をしても……それでもキャンプがしたいと子供の様な駄々を捏ねる輩が、現実として存在しているんだ。実に不本意かつ遺憾な事にも……だ?」
私は苦い顔になってファイナルタマコに自分の説を口にした。
かなり遠回しな言い方ではあるが、これで分かってはくれるだろう。
私はちゃんと説明はした!……と!
そして、言いたい!
私を、そのバカ達と一緒にしないでくれ!……と!
『ほうほう、なるほど……なるほど? つまり、要約すると「私はバカじゃない。私の周りにいた人間がバカなんだと?」そう言う事を言いたいバカで、当たってます?』
「惜しい! 最後だけ違う! そこだけ大きく違う!」
『そうですか? 私からすれば、何だかんだでキャンプをやった事実がある以上、単なるバカとしか思えないのですが……?』
ヤバイ……こいつ、しばいてやろうか?
かなり真剣な顔をしつつ、小首を傾げては頭の上にハテナマークを乗せていたファイナルタマコを前にして、私は右手をフルフルと震わせてしまった。
「お、落ち着いてリダ! と、ともかくさ? この試験は私達にとっては楽勝だと思うし! ある意味で、幸運だったと思った方が良いんじゃないかなぁ……って、思うんだよっ!」
直後、怒りに任せて超炎熱爆破魔法をかまそうとしていた私がいた所で、フラウがかなり必死になって止める様に割って入って来た。
まぁ、フラウとしてもこの試験をパスすれば、晴れて上位魔導師を名乗る事が出来る様になるんだから、多少の雑言だって我慢する事が出来るのかも知れないし、私を必死で止めたくもなるだろう。
上位魔導師になれる直前の所で、私の怒りが爆発してしまったが故に、全てが水泡の泡になってしまったのなら……私は一生フラウに恨まれてしまうかも知れない。
思った私は、己のイライラをどうにか押さえ込んで見せる。
「そ、そうだな……確かにフラウの言う事に一理あると思うよ……うん。私達がこの山でサバイバルする程度の事なら一日と言わず、三日でも四日でも出来ると思うしさ?」
私はフラウの台詞に頷きを返し……アイコンタクトで『大丈夫、お前の試験をちゃんと優先してやるから』的な感じのリアクションを見せた。
「だよね! これは私にとってラッキーな試験! 魔導師組合も幸運は一つのステータスと認めてる事だし、やっぱり幸運って大切だよね!」
私のアイコンタクトを見て、何処かホッとした顔になっていたフラウは、更にこれは自分達には都合の良い試験で、とってもラッキーだった! と、己の幸運をさりげなくアピールしていた。
前々から述べているかも知れないが、魔導師組合ってのは幸運を重視すると言うか、それも実力の内とする珍しい組合だ。
しかも、運と言う要素は努力だけではどうにもならない、天錻の才能でもあるので、天運的な捉え方をして来る。
だからだろう。
『なるほど……それは良かったです。私達にとって幸運の魔導師は貴重な存在でもあります。その幸運を今後も維持出来る事を祈ります』
ファイナルタマコは、にっこり微笑んでからフラウに答えていた。
「ありがとうございます! 今後も精進します!」
フラウは間もなくペコリと頭を下げた。
言ってる事はそこはかとなくまともな様にも聞こえる内容だが、努力して幸運になると言ってる訳だから……私としてはツッコミを入れてやりたい気持ちで一杯だ。
コイツはどうやって幸運値を上げるつもりなのだろう?
近所の神社でお守りでも買うのだろうか?
なんとも素朴で不毛な事を考えていた私がいた時だった。
「すいません! 遅くなりましたっ!」
パタパタと急ぎ足でやって来る、ボーイッシュな女の子……ルインの姿が、私の視界に転がって来た。




