上位魔導師になりたくて!・最終試験【3】
「か~たまが普通だお?……じゃあね? じゃあねっ!? アリン、思うんだけど……その、そのね? ルミちゃんも大きい方なんだお? あ、あとはメイちゃんとか!」
アリンは真剣な顔で聞いて来た。
相手が三歳児じゃなかったのなら、即座に爆破してやりたい様な台詞だった。
だが、私は大人だ。
三歳児を相手に目くじらを立てる様な……そんな、大人気ない事はもちろんしない!
「そうだぞ? アリンは偶然胸が大きい女子に囲まれているからそう見えるだけなんだ。良いかい? 普通は……あんな、胸にメロンを二つ付けた様な奴は、世の中に早々居ないんだ?」
ちょっと脚色をするだけだ。
「そ、そうだったのかぁ……知らなかったお~」
私の言葉にアリンは素直に頷いた。
多少の差異はあるかも知れないが、これは事実だと思う。
だって、メイちゃんにしても……中々に立派な物を持っている訳で。
ユニクスは言うに及ばず、お姫様のプロポーションもモデルレベルだ。
んじゃ、こんなのが世の中の平均なのかと言えば、もちろん違うと私は言いたいね!
むしろ、私程度の人間が一般的で、他が平均値をぶっちぎる勢いでグラマラスな体型をしていると言いたい!
あ、フラウはもちろん、世間的に見ても貧乳だけどな!
どちらにしても、だ?
「……ねぇ、リダ? 娘に嘘を教えたら駄目だと思うよ?」
……とかなんとか、ロイヤルスマイルでしれっと言うお姫様や、
「マム……これはきっと、遺伝的に見て未来のアリンちゃんがショックを受けない様にする為、敢えて子供の内から『貧乳が一般的』と思い込ませる先入観を与えているのかも知れない。遺伝的に述べるのなら私の場合は安泰なので、対岸の火事として見る事が出来るのですが、アリンちゃんの場合は……失礼、これ以上は不憫なのでコメントを控える事にして置きます」
冷静に分析なんぞして来る下世話な姫様その2が、余計な気遣いまで見せてルミに助言していた。
私は耳を両手で塞いで、明後日の方に向かって走って行った。
「お? か~たま! 何処に行くんだお~っっっ!?」
いきなり走り出した私を見て、アリンが驚いた顔になって叫んで来た。
行き先かい?
そんな事は、風にでも聞いてくれ。
何処か、私がグラマーな体系に見える様な……そんな、夢の様な楽園を目指して旅立とうとしているのさ。
別名、現実逃避とも言う。
その後……私は、明日ではなく明後日の方向へとひた走り……夕方まで魔導師組合の敷地に帰って来る事はなかった。
●◎○◎●
最終試験の試験内容は、翌朝に発表された。
同時に、試験もそのまま開始と言う形になったりもする。
それと言うのも? 最終試験は昔から同じ内容であり、かつまた組合側の準備が一切必要のない代物でもあったからだ。
前者の方は、昔から同じ事をしているから予め用意出来る代物なので即座に開始出来ると言う事なのかな?……と、考える事が可能だったが、後者の余計な言葉がやって来たせいで『やっぱりお前らは手抜きしかしないじゃないかっ!』と、非難めいた感情が、私の胸の中で一杯になってしまった。
本当に、どうしてここまで面倒臭がりなんだよ……魔導師組合ってのはっ!?
結局の所、魔導師組合と言う所は……大昔から最終試験を手間の掛からない方法を使っていると言う事を、しれっと普通に言ってただけの話で終わっていた。
こんなんで良いのか? 魔導師組合さんよ!
そんな……行き着くところはなるべく面倒じゃない物で落ち着いてしまう、物臭な組合が最終試験として私とフラウの二人へと言い渡した物……それは、
『本日、ただいまの時間から二十四時間、この山で生き延びて下さい』
とか、なんとか……試験精霊・ファイナルタマコが言った言葉が全てを語っていた。
私的に言うのなら『確かにそれなら魔導師組合にとって何の準備をする必要がなくて楽だな』と、遠回しな嫌味を入れたり『ファイナルタマコってなんだよ? お前で最後なのかよ? 末っ子タマコなのは分かるけど、別に通し番号で良かっただろ?』と、ツッコミ半分の台詞を吐いたり、色々と言ってやりたい事があったけど、敢えてそこらは口にしなかった。
何故か?
「……え? そんなに楽な試験で良いのですか?」
程なくして、キョトンとした顔になったフラウがいた様に……私的に言うのなら、拍子抜けレベルの楽な試験でもあったからだ。
『甘い……甘いですよ? そんな油断してると五分でリタイアする羽目になるかもですよ? フラウさん? この山にはですね? それはそれはもうぅ……凶悪なモンスターがわんさか生息しているんです!』
すると、ファイナルタマコが神妙な顔になって私達へと説明して来た。




