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上位魔導師になりたくて!・最終試験【2】 

「実際にお見せしましょうっ!」


 直後、いつの間にか真っ黒焦げ状態から復活していたユニクスが、言ってもいないのに揚々と大きな旗を手にしては、


「……ほら、メイ! やるぞ!」


「分かりました、ユニクス先輩!」


 近くにいたメイへと声を掛ける。

 同時にメイもハキハキとした元気な声で頷きを返していた。


 どうして、こんな所で妙なコンビネーションを取って来るんだろうな……この二人は……?


 微妙にげんなりする私がいた時、ユニクスとメイちゃんの二人が一斉に大きな旗を振る。


 旗には、頑張れ胸無しと言う文字が、デカデカと描かれていた。

 そんな恥ずかしい旗を、まるで何らかの大きな意義があるかの様に、誇り高い顔を見せて雄々しく振って見せる。


 私には、身体を張ったボケをかましている様にしか見えなかった。


 しかも……本当に、これは何度か練習していたんじゃないかって位の絶妙さで、綺麗にシンクロしていた。


 何なの? いや、マジで何なのっ!?


 コイツら、どうしてここまで盛大に私とフラウに嫌がらせしたいのっ!?


 無駄に元気に……かつ、巧みなコンビネーションを見せて大きな『胸無し』と書かれた旗を降りまくるメイちゃんとユニクスを前に、私の眉間が物凄い勢いで捩れた。


 普通に一芸レベルなんだよ!

 本当に、ビックリするぐらい鮮やかな上に、アグレッシブで豪快さがありつつも、緻密と述べて良いまでに呼吸がぴったりで、軽いフットワークを見せていると言うのに、寸分の狂いすら見せる事のない旗の演舞の様な物を展開している。


 ……コイツ等、絶対どっかで練習しまくってたろ!?


 私的に言うのなら、仮に猛練習をしてくれたのなら、とっても嬉しい話ではある。

 私とフラウを応援してくれている訳だからな?


 だが! しかし! だ・け・ど! だっ!?


 これを街中の広場でやったら、おひねりが飛んで来そうな事をやっていたとしても、どぉぉぉぉして『胸無し』を念頭に置くんだよ! 貴様らわっ!!


 そして、華麗な演舞を終わらせたラスト。


 ユニクスとメイちゃんの二人が互いに旗を左右に持った状態で、超爽やかな笑みを満面に浮かべ、爽快感すら感じる勢いで腹の底から叫んで見せる。


 何もかもが、きらびやかだった。


 二人の笑顔も。

 二人から吹き出る汗も。

 二人の見せる雰囲気の全てが、キラキラしていた。


 ……果たして。 


『胸はなくても心は広い! 貧しいのは胸だけの貧乳コンビ! ゴーゴーッ! 胸無し!』


 ドォォォォォンッッッ!


 二人は爆発した。


 一通りどんな応援をしたのか、これで全部分かったからな!


 応援と言う名の演舞いやがらせを終わらせ、やり切った顔を互いに見せていたユニクスとメイちゃんの二人は、


「はぶわぁっ! リダお姉ちゃん! 私は無実なんだよぉぉっっ!」

  

 悲鳴とも言い訳とも付かない叫びを上げてから、真っ黒焦げになって気絶した。


 どの様な理由があったのかは知らないが、こんな恥ずかしい事をしれっとやらかしている時点で同罪だっ!


 他方のユニクスは、


「何故だぁぁっっっ!?」


 心の底から意味不明だと言うばかりの顔をして、真っ黒焦げになっていた。


 このふざけた応援(?)で、どうして爆破されないのか? そっちの方が私的には謎だと思うんだ!


「……まぁ、こうなるよね……」


 一通りユニクスとメイちゃんが行っていたのだろう応援を見た直後に、私の爆発魔法を喰らっていた状況を見て、フラウが苦笑混じりに頷いていた。


 フラウとしても不本意だったのだろう。


 そりゃ、そうだ。

 貧乳に貧乳と言うのは、相手に対して最低の罵倒でしかない。

 

 それが如何に真実であったとしても……だ?


 例えば、バカにバカと言っても、それはやっぱり真実だろうと、言っては行けない事だと思う。

 つまり、そう言う事だ。


「私は貧乳じゃないから、そこまで怒らないけど……図星だったリダなら本気で怒るに決まっているに決まっているのねぇ……」


 いや、違うし!

 貧乳はお前だけだしっ!


「私は違います的な言い振りだが……フラウ? これはお前と私のコンビ名だからな? 私だけにあてがわれた名前じゃないからなっ!? その部分をちゃんと……って、耳を塞ぐな! 目を反らすな! 現実をちゃんと直視しろっっ!」


 憤然とがなり立てる私を前に、フラウは見ざる聞かざる状態になって私からそっぽを向いて見せた。

 まるで現実逃避のお手本みたいな態度を見せたフラウは、そのまま私の言葉に耳を傾ける事なく、爆破されたメイちゃんとユニクスへと向かった。


 もう、私の話を強引に聞かないつもりなのだろう。

 中々に良い根性をしていた。


「か~たま? 胸無しコンビは嫌だったお?」


 そこで、私の胸元に収まっていたアリンが不思議そうな顔で、小首を傾げながらも聞いて来た。


 とっても純真無垢な瞳から飛び出た、純朴な愚問だった。


 ……うん、そうな?

 アリンは本気で分かっていないんだ。

 

 だから、許せる……うん、許そう。


 だけど、この程度の質問なら周囲に居る連中が幾らでも教える事が出来たろうにっ!


 私は、アリンではなく周囲に居る連中達にイライラの矛先を飛ばしながらも、比較的穏和な笑みでアリンに言った。


「か~たまは胸があるから、この名前はおかしいと思うんだ」


「お? か~たま……アリンは子供だから分からないけど……ユニクスみたいな人が、胸がある人だと思ってたお~」


「あれは、世間的には大きい方だからね! か~たまは普通なんだよ! 普通っ!」


 私は目尻に涙を溜め込みながらも、切実な声をアリンに叫んでみせた。

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