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上位魔導師になりたくて!・二次試験【21】 

「……ま、まさか……こ、こんな事が…………っ!?」


 私が、更なる高みを目指そうと精進しようと思っていた頃、ルインがガタガタと震え初めていた。

 ついでに乳までガタガタ揺れていた。

 何だか、珍妙な敗北感が、私の脳裏を過ったが……気付かなかった事にした。


「言っただろう? 魔力をあげるつもりなら、お前を上回る事だって出来る……ってな? その気になれば、もう一段階上がるぞ?」


「…………はぁっ!? ねぇ? そ、それ? 何処まで盛ってるの?」


 少しは盛ってる。

 そこは否定しない。


 何故なら、今の私では、レベル3を維持するだけの能力がまだ完全ではないからだ。

 アリンがレベル3を発動させた事に触発された私は、先日の夜……つまりテントでみんなと一泊した時、睡眠学スキルでレベル3を発動させてみたのだ。


 一応、発動は可能だった。


 ……発動は。


 けれど、維持と言う意味で言うのなら……一分程度が限界だった。

 死ぬ気になる程の根性を出せば、二~三分は頑張れる自信があるけど……それ以上やったら、絶対に精神がぶっこわれて再起不能になるね!


 アリンは化け物だと言う事を、再認識した気分で一杯だったよ……全く。

 あれだけ生気エナジーを吸われている状態で、平然としていられるんだから。

 

「盛ってる……か? なら、見せてやっても構わないんだが?」


「…………すいません……良いです」


 ルインは、まるで巨乳ではなかった頃の性質に戻ってしまったかの様に大人しくなり、しおらしい態度で謝って来た。


 ……ちょっとホッとした。


 睡眠学スキルで眠っている時だと、仮に精神崩壊級の状態に陥った時は、勝手に夢から覚める様になっていて……リミットみたいなのが発動するのだが、現実にはそんな物はない。


 何より、ハチャメチャに疲れるんだよ! あれっ!


「そうか……それならそれで良い。あれは……私も疲れるからな」


 私は、自分なりの本音を口にしてみせた。

 正直……本当に、この一言に尽きるからだ。


「……で? 技も早さも……そして、ご自慢の魔力でさえも私が上回っていると言う、絶望的な状態でも尚、お前は私に戦いを挑むと言うのか?」


「…………」


 私の言葉にルインは答えない。

 ただ、目線を下に落としたまま、押し黙っていた。


 暫くすると、地面に一滴の涙が落ちる。


 一滴だけの涙は、やがて二滴、三滴と流れ落ち……地面を濡らし始めた。


 ルインの感情が詰まった……悔し涙だった。


 上位魔導師の門は狭い。

 この実地・二次試験まで到達するには、いばらの道とも言える様々な難関を突破している。


 この二次を突破すれば、もう残すは最終試験だけとなり……長く苦しい上位魔導師の試験も終焉を迎える。


 ……だが。


 ここで敗北を喫してしまった場合、二次試験で不合格となってしまう可能性が高くなってしまう。


 私的には、技能点があるから、勝利点を気にしなくても大丈夫だと思うんだがな?

 正直、この勝敗に関係なく、極めて能力の高い試験者にはちゃんと上限点を加点すると言うシステムがどうして出来たのか分かった気がした位だ。


「安心しとけ……仮に負けたとしても、お前の評価点……技能点は間違いなく50点の加点になるだろう。勝とうが負けようが上限の50点は……」


 貰えると思うぞ?


 ……そう言おうとした私がいた時だった。


「違うっ!」


 ルインは激昂した。


 同時に顔をあげて私へと目線を合わせる。

 ……ああ、酷い顔だな。

 取り敢えず、涙を拭けよ。


 思った私はポケットにあったハンカチを手渡そうとする。


 ……ああ、でもあれかな?

 今は、感情が高ぶってるし、曲がりなりにも私は敵だし、こんな事をされても腹が立つだけかも。


「……あ、ありがとう」


 普通に受け取って来た。

 

 …………うむ。


 どうやら、杞憂だった模様だ。

 まぁ、ハンカチ渡すだけだしな。

 感情のまま『余計な事しないで!』とか叫んで、バシッ! ってやるヤツの方が非常識なのかも知れないが。


 私からハンカチを受け取ったルインは、そのまま素直にハンカチで涙を拭って見せると、


「初めてだったんだ……」


 ルインはボソリと呟いた。


「……そうか」


 ルインの言葉に私は短く呟いた。


 何が初めてだったのか?


 その詳細を、ルインの口から直接聞いた訳ではないけど……多分、色々あったんだろう。


 ……そう。


 それは色々だ。


 きっと、自分よりも魔力の高い相手と戦ったのも初めてだろうし、自分よりも色々な魔法を、より実践的にかつ巧みに使いこなした相手も、私が初めてだったのかも知れない。


 全てに置いて総合的に負けた。

 

 そして、それが……今まで一度だって経験した事がなかった。


 実際、それはあってもおかしくない話だな。

 それだけの実力を持っていた事は事実なのだから。

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