上位魔導師になりたくて!・二次試験【20】
だが、この対魔導魔法も、現在あるルインと私との魔力差を考えれば、完璧には消滅させる事は出来ない。
消滅しきれない魔法は、当然ながら発動されて行き……状況次第によっては、相殺しきれなかった魔力が私を襲い、やっぱり木っ端微塵になってしまった可能性がある。
……つまり、魔導壁と対魔導魔法の両方を全く同じタイミングで同時に発動させないと、私は完全に木っ端微塵になってしまう訳だ。
爆発なので、本当に一瞬なのだ。
どっちか片方だけ優先しても殺られる状態と述べても良い。
……よって、両方同時に、全く同じタイミングで一緒に発動させる。
この防御方法を、私はルインに見せたかった。
何故かって? つまり、本当に魔力だけだからさ。
スピードが足りないってのは前に言っているが、これに加えて技術が足りない。
せっかく、これだけの膨大かつ強力な魔力を身に付けたと言うのに……それ以外は、人外な魔力のレベルと比較すると、カラッキシと述べて良いまでに成熟されていない。
「これで分かったか? 魔力だけ強くても、他が未熟であったのなら、単なる宝の持ち腐れになってしまうと言う事だな」
「…………」
ルインは無言だ。
自分の想像を絶する相手を前に、思わず唖然となってしまったかの様な?……そんな顔だった。
しかし、私の声を耳にした事でハッとなるルインは、
「私の魔法をちょっと防いだだけで、もう勝った気になってるのかい? アンタがやってる事は全部防御だ! 確かにアンタの防御能力は凄いよ! 本気で放った私の魔法を、直撃で喰らったのにピンピンしているんだからな!……けど、攻撃を全然して来ないじゃないか? 実は……出来ないんじゃないのかい?」
更に高慢ちき極まる台詞を私に言って来た。
自分でも無意識の内に余裕が無くなって来ているのだろう。
さっきまであった、何処と無くふてぶてしいまでの雰囲気が、ルインの表情から消えていた。
「……はぁ」
私は嘆息する。
そこから答えた。
それはそれは、もう! わざとらしいまでに余裕のある笑みを満面に作って!
「まだ分からないのか? 私は攻撃出来なかったんじゃない『しなかった』んだ? この意味は分かるだろう……?」
「……うくっ!」
私の言葉に、ルインが初めてたじろぎを見せた。
巨乳になって、性格までいい気になった姿では、初めて見せた弱気な態度だ。
しかし、そんな表情もほんの一瞬にとどまり、
「……なら、次はやって見たらどうだい? 私に攻撃をさ?」
「言われなくてもそうしてやる……ああ、それと、もう一つ」
「……? ま、まだ……何かあるのかい?」
思い付いた様に答えた私の言葉を前に、ルインは口元を引きつらせる。
大分マシな顔をする様になったな。
ちゃんと、私の実力と言う物を、心身共に知ったと言う顔をしているよ……今のお前は。
そこはともかく。
「さっき言ったが、お前の魔力を上回る事だって可能だと言う点。ここも『嘘じゃない』って所も見せてやる。お前に足りない物をしっかりと見せる為に『わざとお前より弱い魔力で』防御してやったが、もうその必要もないだろうからな?」
「…………へっ!?」
ルインは、ポカンとした口になっていた。
開いていた口は、当分閉まりそうにもない。
「次にお前へと見せてやりたいのは『世の中には、上には上が居る』だ。よぉぉぉぉく見とけ!」
超龍の呼吸法レベル2!
ドンッッッッッ!
その瞬間、私の周囲に更なる強大なエナジーが、急激に膨れ上がる。
それと同時に、
ボコォォッッッッ!
地面からマグマの様な物が噴射された。
……そう言えば、アリンのヤツが超龍の呼吸法レベル3を使った時も、マグマが噴射していたなぁ……。
もしかしたら、ここら一帯には大きな火山地帯が埋まっているのかも知れない。
そして、思った。
やばい……私、アリンに負けてるし!
いや……まぁ。
アリンが発動させた補助スキルとは、文字通りレベルが違うと言うか……私が発動させているのはレベル2で、アリンのは3だったんだから、アリンの方がエナジー的な物も強力ではあるんだけど、だ?
こうぅぅ……私のエナジーに呼応する形で地面から吐き出されたマグマの吹き出し方からして違う!
アリンの時は、マグマのタワーみたいなのが、ドドーンッ! と出ていたが、私の場合は噴水を大きくした程度だ。
レベルに差があるとは言え……こう違うと、少しだけショックだ!
「……くそ……か~たまは、絶対にアリンの好敵手であり続けるんだからな……」
私はボソッ……と独り言を口にする。
フラウじゃないが、地道なりにもしっかりとトレーニングを積んで、アリンに負けない自分になる事を、心密かに誓った。
……ルインには関係のない話だったけどな!




