上位魔導師になりたくて!・二次試験【18】
性質とかも、私的には面白い。
ルインとメイスの二人からすれば、フラウさえ何とかすれば、それで勝利条件を満たす事が出来ると言う事を知っていると言うのに……それでも、私との一騎打ち勝負にしっかりと対応して来たからな。
こう言うヤツって好きだよ。
バカではあると思うが……こう言うバカは、私の大好物だ!
「それじゃ……まぁ、仕切り直しだ」
「ああ、そうだね? 第二ラウンドと行こうか!」
私の言葉に呼応する形で、ルインが右手を私に向ける。
上位陽炎魔法!
瞬間、私の周囲にフラウを襲った太陽の炎が召喚された。
……なるほど。
さっきとは段違いの魔力とスピードだ!
同じ魔法ではあったが、まるで違う魔法であるか様だ。
魔導式に込められた魔力……簡素に言うとエナジーの様な物が、フラウに向けた時の魔法とは大きく異なる。
そして、上位陽炎魔法を頭の中で紡ぐのに掛かった時間も格段早い!
同じ魔法を、別の人間が発動させたんじゃないのか? と、眼前で同一人物が同じ魔法を使っていると言うのに、それでもこんな嘯きを口にしたくなってしまうレベルだ。
……だけど、さ?
「これは、少し甘いだろう? ルインさんよ?」
召喚された太陽の渦……その中心にいた私は、ニヒルな笑みを作りながらも右手を構え、魔法を発動させた。
氷魔の吹雪!
……刹那。
周囲にあった炎が凍った。
まぁ、物理的に考えたらおかしな話だ。
炎が消える事があっても、炎がその形を維持したまま凍る事なんかない。
所が、魔法的に言うと存外そう言う奇妙な現象がたまに起きる。
上位陽炎魔法は、太陽の炎を召喚する事で成立する魔法なのだが……召喚させた太陽の炎を意図的に操る魔法でもある。
簡素に言うのなら、炎に術者の魔力を与える事で、標的へと攻撃を命じる事が出来る魔法でもあるのだ。
そして、この魔力自体は、密かに凍るのだ。
もちろん、これだけ巨大なエネルギーとも言える魔力を凍らすとなれば、こちら側にも尋常ではない魔力を必要とするのだが……逆に言うのなら、それだけの冷凍力を持つ魔力を放てば、相手の魔力を凍らせる事が可能なのだ。
「へぇ……? 結構、立派な魔力を持っているんだな? ちょっと驚いたぞ?」
私は、凍った炎を軽く見回しながら答えた。
さっきも言ったが、凍ったのは炎ではなく、炎を動かしていた魔力だ。
炎を動かすに当たって、炎の形状になっていた魔力を凍らせた結果……炎が凍った様に見えるだけなのだ。
その上で言うと、見事なばかりに強力かつ強大だった事が伺える。
高品質の魔導石みたいな、高密度の魔力が凝縮されている、実に立派な氷が私の周囲を覆っていたからだ。
「やっぱり、一度手の内を見せているって言うのは、一種のハンデみたいな物だったかねぇ?……こうもアッサリと、上位陽炎魔法を封じて来るなんてさ……?」
悠々と凍った炎を見回す私がいた所で、ルインは肩を竦めて答えた。
表情には、まだまだ余裕がある事が見受けられた。
「一つ言おう。ルイン? 私を少し見くびり過ぎていないか? この程度の魔法であれば、初見であっても結果は同じだった。二回目の発動と言うのは、偶然の産物だな? それと……ハンデが欲しいなら言え。正直、これが全力だと言うのなら……私の見立て違いだったと言わざる得ないな?」
「あはははっ! 言ってくれるねぇ?……じゃあ、見せてやろうじゃないの? 行く行くは世界最強の上位魔導師として、数多の名声を得る……この私の本気をっ!」
答えたルインは、右手を大きく掲げる。
すると、天に掲げた右手に、大きな宝石の様な物を嵌め込んだ、巨大な魔導師の杖が握られる。
……なるほど。
こんな奥の手を隠していたのかよ。
右手に握りしめた魔導師の杖に、どの様な効果があるのかまでは、厳密には分からない。
だが、確実に言える事がある。
あの杖を手にした瞬間……ルインの魔力が爆発的に上昇した!
元々、魔導師の杖ってのは、術者の魔力を上昇させる魔導武器。
杖によっては相手の傷を癒す治癒的な杖もあり……今は所持していないが、フラウ愛用の杖『世界樹の杖』なんかは、対象者を回復させたりもする。
……そう言えば、こいつはどうしてあの杖を持っていないのだろう?
この試験では、武器を装備してはいけない……なんてルールはなかったと思うんだが?
…………。
まぁ、そこはヨシとして。
ズゴゴゴゴォォォッッッ!
爆発的に上昇したルインの魔力が、マクロ化する形で渦を巻き……ちょっとした魔力の竜巻の様な物を発生させていた。
通常の魔力ってのは微細粉塵の様なミクロン単位の粒子みたいな物なので、これが見えるなんて事はまずあり得ない。
……だが、圧縮に継ぐ圧縮によって魔力が高密度に結集させた事により……あたかも具現化したかの様な勢いで渦を巻いていた。
魔力だけなら、現状の私をも上回っているな……これは。




