上位魔導師になりたくて!・二次試験【15】
今回の相手は、性格だってそこまで悪く無さそうだし……ライバルとしても十分だと思う!
「よぉし、こっちはまださっきの補助魔法が有効だから、このまま行くぞ? フラウは補助スキルだけ掛け直しておけ」
「うん、そっちは大丈夫!……だけど、リダは補助スキルを掛けないの?」
不思議そうなフラウがいる中、私はニヤリと笑みを作ってから声を返した。
「ああ、私は要らない。なんてか、コイツ等とはもっと『戦ってみたくなった』んだよ」
「……そう」
私の言葉を耳にしたフラウは、少しだけ眉を寄せていた。
きっと、フラウからすれば、ただ面倒なだけなのかも知れない。
きっと、フラウからすれば、単純に私が手を抜いてるだけにしか見えないのかも知れない。
けれど、私は言いたい。
この二人には、未来がある……と。
間違いない……この二人、ルインとメイスの二人は確実に強くなる!
そして、この二人の力が早々遠くない未来に、沢山の人類を救う事になるんじゃないか……って、思えたんだ。
この世界は、そこまで遠くない未来に……乱世を迎える事になってしまうだろう。
あの、宇宙から生まれた傍迷惑な道化師の暇潰しによって……再び、荒れる時代へと突入してしまう可能性は十分ある。
私としては、そうならない様に努力をしたいと思っている……いるけど、それでも努力の甲斐なく、乱世となってしまった時は……きっと、いや! 絶対にルインとメイスの力も必要になる時がやって来る!
だから、思った。
「明るい未来を作る事が出来る若者の姿を、生で体験させてくれる切っ掛けをくれたフラウに感謝するよ」
「よしてよ……そんな言い方されたら、リダがおばちゃんに見えるじゃない」
誰がおばちゃんだよっ!?
……まぁ、だけど……だ?
実際の所は、フラウからすれば私は単なるおばちゃんなのかも知れないな。
…………。
いや、まだ三十行ってないしっ!
ともかく、私にとって有意義な時間になりそうな予感がしたのだ。
よって、ルインのリクエストに多少は応えてやろうじゃないか。
爆雷魔法!
カッ!……ドォォォンッッ!
ぼちぼち戦闘をしてやろうか……と思った所で、私とフラウの間程度に強烈な落雷が落ちて来る。
これは、雷と爆発を複合させた魔法だな。
雷魔法と爆破魔法を混ぜて、複合させる事で発動させる魔法だ。
但し、これはどちらも下位魔法でしかない。
スピードと言うか、魔法のキレもイマイチだな。
発動を見てから余裕でした的な避け方をしても、十分に対応出来る。
実際、私はもちろんフラウもしっかりとダメージを受ける圏外まで回避していた。
……だか。
その時、メイスはニヤリと口元を緩ませていた。
……っ!?
何をする気だっ!?
今の魔法は、単なる誘導だ!
すると、次に仕掛けて来る魔法が、やつにとっての本命になるのだろう。
思った私は、メイスが次の魔法を発動させるよりも先に、牽制も兼ねて攻撃魔法を発動させる。
断罪爆雷魔法!
「……なっ! う、うそだろ……っ!?」
私の発動と同時に、メイスは素早く回避行動を取ろうとしていたが……気付くのが一瞬だけ遅かったな!
カカッッッ!
ドォォォォォォンッッッ!
先程放ったメイスの爆雷魔法の数倍規模に値する巨大な落雷がメイスを襲い、同時に大爆発して見せる。
完全にメイスを捉えた巨大な落雷により、大打撃を受けると思っていたのだが、
「……ったく! やっぱり予備知識ってのは、必要だよなっ!」
爆雷によって瞬時に発生した砂煙から出て来たメイスは、多少のダメージを受けた程度で済んでいた。
……へぇ。
「悪いな、メイス。お前は少し見くびっていたみたいだ」
私は少しだけ謝る感じの声を吐き出す。
「そうだな? お陰で、俺達にも『勝機』が訪れたと思ってた所だ」
すると、メイスはニッ! と、揚々とした声音を吐き出していた。
ヤツの言っている『勝機』の答えは、この直後にすぐやって来る。
上位陽炎魔法!
……は?
私は思わずポカンとなる。
メイスの影に隠れる形で魔導式を紡いでいたルインが、ここぞとばかりに魔法を発動させて来たのだ!
しかも、発動先は……フラウだ!
「……っ!?」
しまった!
こっちもかなり油断していた!
ルインがフラウを狙ったのは他でもない。
フラウがこの試験の試験者であるからだ。
そして……この『試験者がフラウ』と言う部分が大きなポイントだ。
なんて事はない。
この戦闘は、試験者が戦闘不能になった時点で勝敗が決まってしまうからだ!
将棋やチェスで、王様だけを狙い撃ちした様なやり方だ!
多少姑息ではあるかも知れないが……しかし、互いの戦力差を考えれば、とっても有効な戦略でもあった。




