上位魔導師になりたくて!・二次試験【12】
「コイツ……ルインは、女だぞ?」
そうだろう? ああ、やっぱり言うよね~?
ガチホモとかは、このタイミングで絶対に言い訳を………………なに、女っ!?
メイスの言葉を耳にして、私は思わず目をパチクリとさせてしまった。
言われると……なるほど、確かに何処か中性的だ。
平均的な男性よりも少し背が低い青年じゃなくて、平均的な女性よりも幾分か背の高い女の子だったかっ!?
髪の毛も男性染みた短さで切り揃えていたし、背も微妙に高くて……挙げ句、声もハスキーだったので声質の高い男だと思ってしまった。
実は、声質の低い女の子だった訳で。
うぁ……なんて紛らわしいっっ!
「そう言う事は始めから言ってくれよ……ちょっと勘違いしちゃったじゃないか」
「ご、ごめんなさいっ!……その、僕……一応、男装のつもりと言うか、僕の所属している組合は本当は女人禁制で……男っぽい格好と言うか、男として生活しないと行けない決まりになってまして……」
呆れ眼で答えた私に、ルインは頭を抱えてから身体を震わせ、何度も私に謝って見せた。
なるほど。
気弱な男子ではなく、気弱な女子だったのか。
そう言う観点で見ると、結構絵になる二人なのか。
つまり、気弱な女子を全力で守る男子の構図が生まれる。
この構図が出来上がると……ああ、そうな? と、腑に落ちてしまうのだから不思議だ。
周囲に他人が一杯いるのに、いきなり抱き合う等の様なイチャイチャ行為は、単なるバカップルとしか言えないが。
ともかく、これで合点が行った。
「良かったな、フラウ? どうやらお前の言う『不合理な愛』とやらにはなっていない模様だぞ?」
「…………」
ニコニコと穏和な声音で、肩をポンッと叩きながら答えた私に、フラウは無言だった。
完全に絶句状態だったフラウは、今にも口からエクトプラズムを吐き出しそうな勢いになっていた。
その上で言う。
「燃え尽きたぜ……真っ白によぉ……」
いやいやいやっ!
待て、フラウ! まだ白くなるな!
私は、12ラウンドを戦い抜いた末に完全燃焼してしまったボクサーの様なフラウを見て、徐にふためいて見せた。
「しっかりしろフラウ! 傷はまだ浅い!……と言うか、戦ってない! 大丈夫だ! お前には明日がある! きっと出会いがある! つか、愛しのパラス様は何処に行ったんだっ!」
「……はっ!? そ、そうだよ! そうそう! 私にはパラス様がいたじゃないのっ!」
「そうだ! 思い出せ! 私的には脈があるとは到底思えないが、卒業までなら片想いも許されるんじゃないかな? 的なパラスがいたじゃないか!」
「待って! ねぇ? 待とう? もし、それが事実だったとしても、なに? リダは何がしたいの? 私を慰めてくれるんじゃなかったのっ!? 私の心を抉って楽しいのっ!?」
「寝惚けた言うんじゃないっ!? お前の胸をこれ以上抉ったら、クレーターが出来てしまうじゃないかっ!」
「うわぁぁぁぁぁんっ! リダがいじめるぅっ!」
フラウは全力で泣き出していた。
……ぐぅむ。
私は正論を言っただけなのだが……そうだな、確かに言い過ぎた。
「すまないフラウ……私が悪かった。ともかく、今回の件は諦めよう……大体、向こうだって悪いんだよ? 男装してさ? 声も低いし? 背もちょっと低めの男みたいだし? 胸だって女とは思えない感じだし……」
そうと答えた辺りで私はルインの胸元を軽く横目で見た。
フラウを上回るまでの平野部が、ルインの胸元に存在していた。
フラウだって、貧乳と言うけど、一応の山はある。
高尾山程度だけど、ある事はある。
しかし、ルインの場合は違う。
あれは山じゃない……平野だ!
だから思うのだ。
ここは、フラウの機嫌を回復させるのに、一役買ってほしいと。
「ほら、見ろフラウ! ルインの胸元を! お前を上回る、常識を逸した地平線が見えそうな姿をっ!? これなら……お前の方がプロポーションで優位に立てる唯一無二の存在になるんじゃないのかっ!?」
「お、落ち着いてリダ! 確かに私が男と見間違えたのは、やっぱり……そう言う部分もあるけど、そう言うデリカシーに欠ける事を、さっき会ったばかりの女子に言うのって、すごぉぉぉぉく失礼だと思うのっ!」
ここに来て、まさかの正論っ!?
確かにその通り過ぎて、私は思わずズガーンッ! っと、珍妙な衝撃を受けてしまった。
……その時だった。
「また、何か大きく勘違いしている見たいだが……ルインの胸は、普通に凄いぞ? 特殊な魔法が掛けられている、強力なサラシを巻いてるだけだからな?」
な……んだ……と……?
微妙な顔を作ったまま答えたメイスの言葉に、私は更なる衝撃を受けて行くのだった。




