上位魔導師になりたくて!・二次試験【11】
「メイス……もう止めよう? あんな……魔王だって驚く様な魔法を簡単にポンッ! っと出してる様な魔導師なんて……僕、上位魔導師でだって見た事がないし? ここで謝れば許して貰えるかも知れないだろ?」
お前は私に何か謝る様な事をしたと言うのか?
いきなり言って来た弱気発言……と言うか、事実上の降伏宣言をするルインに、私は微妙な顔になっていた。
それとなく隣を見れば、フラウもポカンとなっている。
まぁ、そうな?
どう考えても弱腰過ぎるだろう。
フラウだって、流石にヘタレたルインとか言う男の態度には呆れを……
「ねぇ、リダ? 気弱なイケメンって……なんか、こうぅ……そそられるよねっ!?」
……抱いてはいなかった。
むしろ私が呆れたよっ!?
何なの? マジでいつも思うけど、お前は顔が綺麗な男なら誰にでも盛れるのか?
「ああ……どうしよう……これって、新しい恋の始まりなんじゃないかな?」
「新しい色ボケの始まりなのは事実だと思う」
「そうだね……そう! これは運命! 善良かつ真面目に生き続けて来た私に対して、神様がくれたご褒美!」
「……いや、私の言葉はスルーか?」
恍惚な笑みをポ~っと浮かべ、無駄に上気して火照った頬を右手で触り……何処か悩ましげな視線を見せていたフラウに、私は嘆息混じりのツッコミを入れた。
全く……コイツの悪い病気がまた始まった。
お前のアイデンティティーは貧乳だけで十分なインパクトを持っているんだから、その鉄鍋染みた惚れっぽさは、ちょっと何処かのゴミ箱にでも捨ててくれないかな?
「おい……ルイン。なんか、あの子……おかしくないか?」
周囲にハートをフワフワさせて、不毛に情熱的な視線を向けて来たフラウを見て、メイスが眉をしかめた顔をして口を開く。
「そ、そうだね……なんと言うか、草食獣を狙う肉食獣みたいな目をしているよね……?」
メイスに言われたルインは、元からちょっとオドオドしていたのだが、更に臆病風に吹かれた様な態度を取って、ブルブルと震え始めていた。
もはや、その姿は小動物染みている様な気がするのだが、
「安心しろよ、ルイン。お前は俺がちゃんと守ってやるからよ?」
直後、そうと答えたメイスはニッと快活な笑みを作ってからルインを…………いや、まて?
お前等、いきなり何を……?
思わず見てるこっちが唖然となってしまう行為が展開されていた。
いきなりメイスのヤツが、ルインを優しく抱き締めていたのだ。
…………えぇと?
つまり……その……なんだ?
コイツ等……って、そーゆー関係なの?
「魔導師組合には、まともなヤツがいないのかよ……」
私は口々にぼやきを入れた。
試験管は性悪な卵マニアだし。
ライバルのデブ供は心身共に大概な連中だし。
やっと、色々な意味でまともそうなヤツと出会ったな……と、思ったら、今度はボーイズ・ラブ的なお二人ですか?
いらないんだよ! そんな展開わっ!?
「ど、どうしよう……リダ……もしかして、ルインさんって彼女がいるとか言う以前に、彼がいるタイプの人なのかな……?」
フラウは困惑した顔になって私に聞いて来た。
知るかよと言いたい!
「別に奴等の関係がどうであろうと、私達には関係ないだろう? 友達でも恋人でも、好きにすれば良いじゃないか」
「そ……そんなの……良くないと思うのっ! 確かに、自由恋愛は良いよ? 私が最も人生をエンジョイする上で大切な事の一つに、自由恋愛があると思っているから!」
その結果、鉄鍋みたいな勢いで、美男子を見るとホイホイ着いてく癖は、絶対に改善しないと行けないと思うがな?
「だけど……違う……違うよね? やっぱり、同性じゃ……愛があっても子供は生まれない……こんな非合理な愛なんて、あっては行けない事だと思うんだよ……」
「そんなのは当人の気持ちだろう? 好きなら相手が同性でも良いじゃないか。子供が埋めないからと言って、建設的な判断が出来ないとも限らないだろう?」
「だめだめ! ダメなの! やっぱり燃える様な恋は! 真の愛は、異性同士だからこそ可能にしている、愛の神秘なんだよ! リダにも分かるでしょう? 私が持つ……この熱い気持ちを!」
鉄鍋女の心理なんぞ、分かってたまるか。
やたら情熱的に熱弁するフラウがいた時、メイスが不思議そうな顔になって私達へと声を掛けて来た。
「なぁ、君達……えぇと、リダさんとフラウさんだったか? ともかく、二人は何か勘違いをしている気がするんだが?」
すこぶる不本意だと言うばかりの声音でメイスは言って来た。
一体、何を勘違いしていると言うのだろう?
今でも抱き合っているお前達の光景を見て『これは単なる友情だ』と吐かしても、ホモの言い訳にしか聞こえないからな?




