上位魔導師になりたくて!・二次試験【9】
ただし、私の超魔法をモロに喰らって、五体満足であろう筈もなく……デブコンビは優に百メートルは吹き飛ばされて、その場で卒倒していた。
百メートルも向こうまで吹き飛んでいたので、実際にどんな気絶の仕方をしていたのかまでは分からないが、後で起こしに行った試験の係員が言うには、股間を中心に黄色い水溜まりを作り……その上で泡を吹いて倒れていたらしい。
『勝負あり! 胸無しコンビの勝ち!』
超炎熱爆破魔法によって吹き飛ばされた情景を確認して間もなく、試験精霊のタマコ十号が、拡声魔法を使って周囲に聞こえる声を吐き出していた。
……どうでも良いけど、ちょっとコンビ名を変えて欲しいんだが?
「おおおおぉぉっ! 勝った! 勝ったおぉぉっ! やっぱりか~たま! つおいんだお~!」
拡声魔法を使ったタマコ十号の声を耳にし、即座に大きな声で喜びの声を上げる愛娘。
純然たる喜びが、こっちにまで分かり易く伝わる様な喜び方をし、近くにいたルミに抱き付いていた。
……隣にいたユニクスが、その光景を見て『どうして私に抱きつかないんだ?』と、指を加えて見ていた。
「そうだね! これで胸無しコンビは二次通過に王手だね!」
ぴょんぴょん跳び跳ねた後、嬉しさの感情そのままに抱き付かれていたルミも、満面の笑顔でアリンと喜びを分かち合っていた。
でも、コンビ名を使わないでくれたら、もっと嬉しかったんだけどなぁ……私としては。
「私は胸無しが勝利する事は分かっておりましたから、そこまで驚く程の事ではないと存じておりますが、胸無しの実力をしっかりとこの目で見る事が出来たのは幸いでした。次の胸無し達にも頑張って欲しい所ですね」
そこからルゥが爽やかな微笑みをゆったりと浮かべながら言っていた。
きっと、私達を評価してくれての台詞なんだろうが、取り敢えず私は……暖かい声援をくれたみんなに声を大にして言いたい。
「胸無し言うなぁぁぁぁぁっっ!」
こうして、私達の初戦は超魔法の一発で勝利を納めたのであった。
◎○●○◎
一戦目による、私達コンビが得た得点は50。
これは上限値に到達した為による結果だ。
実際には90加点されていたらしい。
まぁ、これだと……もう試験をする必要もないと言うか、二次試験を突破する為に必要な得点である80を越えてしまう。
それに、最初から一回の戦闘での加点は50までと上限を決められていたから、それより上にはならないと、私やフラウも分かっていた。
だからと言うのも変な話だが、大方の予測通りの加点がされたな……と、私は考えていたりもする。
因みに加点の内訳は以下の通り。
勝利加点40。
技術加点50。
超補助魔法による加点30。
超魔法による攻撃での加点20。
対するデブコンビの加点は5。
超補助魔法を一回発動させているのだが、この魔法による技術点として5点の点数が付いた模様だ。
一応、加点と言うか……得点は得たのだが、次の戦いで75得点の加点をしないと合格出来ない為、不合格が確定していた。
一回の戦闘で得られる加点は最大で50なので、後一試合しか残っていない重戦車コンビは、逆立ちしても合格圏内には届かない事が確定してしまったからだ。
一応、試験の都合もあるから、もう一回は戦闘をしなければ行けないかも知れないが、もうモチベーションは皆無になっているだろう。
私的にはざまぁみろ! と言いたい!
やっぱり人間ってのは、誠実さと言う物は大切だと思う。
その上で行くと、あのデブ供は最低最悪だった。
体系的な物は仕方ない部分が間々あるが、性質とか礼儀と言う物は、心掛け次第で幾らでもすぐに改善出来る。
性格の良いデブであれば、私はきっと友好的な気持ちで気分良く戦う事が出来ただろう。
だが、性悪なデブはダメだ。
もはや、私には良い所を見つける事が出来ない……草しか見えない。
次の相手は、ちゃんとした相手であってくれれば良いんだけどな。
そんな事を考えていた私は、試験会場でもあるグラウンドの様な場所で、引き続き待機していた。
理由は簡素な物だ。
デブ供が完全なKOをしてしまった事で連戦する事が事実上不可能になってしまった為……消去法で私と、もう一つのコンビが二戦目を行う結果になってしまったからだ。
今回に限って言うのなら、ルーレット抽選も無し。
私とフラウの二人は、完全なる連戦を余儀なくされてしまった。
……いや、まぁ……良いんだけどさ?
前回の戦闘では、バフを掛けて超炎熱爆破魔法を一発出しただけで終わっていたから……疲れるも何もない状態ではあったしさ?




