上位魔導師になりたくて!・一次試験【24】
シュバァァァァッッッ!
勢いがあり過ぎて消滅するんじゃないのか?……と、思わず相手を心配してしまいたくなるまでの一撃で、豊満フラウが吹き飛んで行く。
……うむ。
「あの魔法を喰らっても、まだ原型を留めていられるのか……人の事をゴキブリ並みの生命体とかほざいていたが……お前も、中々に大概な頑丈さを持ってるぞ?」
そうと答えた私の言葉通り、消滅するかと思った豊満フラウであったが、それでも弾き飛ばされただけで終わり、最終的にポテンと地面に落ちて来て、
『勝率が1%未満にまで下がりました……鬼ですね、あなた』
地味に鬼畜扱いされた状態で、白旗を上げていた。
やっぱり魔導師組合では白旗が標準装備なのかも知れない。
何処に持っていたのか知らないが、何処からとなく白旗を取り出しては、それを左右に振っていた。
そんな豊満フラウを前に、平たいフラウは不本意極まる顔になって叫んでいた。
「鬼じゃないし! 学園じゃ、魔王のリダ・天使のフラウで通ってるんだからっ!」
誰だよ! そんなホラを言うヤツはっ!?
「いや、平たいフラウ……事実は事実だ。現実ってヤツをもっと見た方が良い……私が魔王なら、お前は鬼だ。鬼畜女だ! 良いじゃないか鬼の乙女とか。格好良いし」
「格好良くないからっ!」
だから、良いじゃん。
だって、面白いし。
己の分身的な複製体(一部を除く)に鬼扱いされ、酷く不満気にがなり立てるフラウがいた所で、試験精霊・タマコ九号と試験官だったタマコがやって来る。
「どうやら、これで合格点に到達しましたね? おめでとうございます! 最後は、鬼よりも鬼のような情け容赦ない『あんたの血は何色だ?』と、言いたくなる様な一撃でしたね! 今日からあなたには上位魔導師でもある私……タマコが『冷血なる鬼畜乙女』の称号を与えましょう!」
「慎んでお断り申し上げますっっっっ!」
ニコニコ笑顔で答えたタマコに、フラウがスペシャル大声で叫んでみせた。
てか、タマコって上位魔導師だったんだな。
私的には、そっちに少し驚いたぞ。
まぁ、今回の試験官を担当するに当たって、採点を担当するだけではなく、試験の準備等もタマコがやって来たのだろうから……ある意味で、上位魔導師らしい技術力を誇示してはいるんだろうが。
『私の創造主でもあるタマコ本人が言っているので、もうご存じだと思いますが、レベル9はクリアになります。加点20になるので、これで一次試験の合格が確定しました! 冷血なる鬼畜乙女のフラウさん、おめでとうございます!』
「だからぁっ! そのおかしな称号で呼ばないでよっ! 可憐で優しくて、慈愛の象徴みたいなフラウさんが、心から傷付くでしょうっ!? たわわに熟した、豊満な胸が張り裂けちゃうでしょうっ!?」
張り裂けたとしても、薄っぺらい胸だと思うんだが?
「そもそも、これ称号なのっ!? むしろレッテルだよね! おかしいとは思わないっ!? この名前の何処に名誉があるの? 称号って名誉な物なんじゃないのっ!?」
『名誉じゃないですか? さっきの胸だけオリジナルと異なるフラウさんの能力は、魔導師組合の基準で算出するとSSランク相当の能力がありましたからね? それだけの実力者に鬼と呼ばれるなんて……大変名誉な事だと思いますよ?』
「そんな名誉! そこらのゴミ箱に捨てて頂戴っ!」
割りと本気で言っていた試験精霊・タマコ九号の言葉に、フラウは半べそになって怒鳴り声を放っていた。
不本意なのは分かるけど……止めるつもりはない。
普段から、学園で不本意な魔王扱いされている私からすれば、自分の気持ちを分かって貰う良い機会だと思ったからだ。
「ねぇ? リダからも何か言ってよ! 私達、パートナーでしょう?」
「こう言う時だけ、相棒ってフレーズをごり押しして来るんだな……」
直後、苛立ちが膨れ上がって、だだっ子の幼稚園児みたいな泣きべそを見せていたフラウが、私へと助けを求める形で声を掛けて来た。
私の目は、酷く白けていた。
「じゃあ、フラウ。相棒として発言してやろう」
答えた私は、ここで超真剣な顔になり……再び、フラウに口を開く。
「これで、私の苦労が少しは分かったか? 学園魔王とか言われて、イライラとフラストレーションとの戦いを日々強いられる私の苦労が、だ?」
「なるほど! 分からん!」
「よぉぉぉし! 良く言った! 鬼畜乙女っっ! お前はしばらく冷血女で頑張り通せ! 私は知らない!」
「すいません! ごめんなさい! 今のはジョーク! 冗談だから! ちゃんと私の擁護もしてよぉぉぉぉっ!」
合格した筈なのに、何故か泣き叫ぶフラウの悲痛な叫びは、昼下がりの大空へと無駄に谺して行くのだった。
……と言う所で、今回はここまで!
次回に続く!




